平成26年度会議録・活動報告

平成26年9月11日~12日・所管事項に係る県外調査

 

1.日時

 平成26年9月11日(木)~12日(金)

 

2.調査箇所及び調査事項

○平成26年9月11日(木)

 (1)JR九州本社(福岡市)

    ・九州新幹線の開業効果等について

 

○平成26年9月12日(金)

 (2)鹿児島商工会議所(鹿児島市)

    ・新幹線開通までの鹿児島商工会議所の取組みについて

    ・新幹線開通がもたらす経済効果について

 

3.調査議員(10名)

   小谷委員長、内田(隆)副委員長、斉木委員、伊藤(保)委員、前田委員、長谷川委員

   澤委員、広谷委員、砂場委員、福田委員

 

4.随行者

   鳥取県議会事務局 調査課 田中課長補佐

                梅林係長

 


5.調査内容

(1)JR九州本社

○調査事項

  九州新幹線の開業効果等について

 

○対応者

 ・九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 新幹線部長        福永 嘉之

 ・      同   上       新幹線部 企画課長    原 禎之

 ・      同   上       営業部 営業課担当課長  宮田 匡

 ・   同   上   広 報 部  広報室担当課長      福元 晶子

 

○調査内容

(小谷委員長)

 JR九州では、鹿児島まで新幹線を整備された。本県では山陰新幹線の話がある。県の議論を高めるため本委員会が設立された。観光客の誘致も踏まえ、忌憚のないお話をお聞きしたい。

 

宮田課長)

 (別添資料に基づき説明)

・新幹線と都市間特急を介した地域振興についてお話する

・開業効果として、時短が一番大きい。平成16年、九州の南半分が先に開業した。九州内におけるお客様の滞在時間が倍増した。熊本、鹿児島に効果が表れた。

・一方、鹿児島におけるビジネス客の宿泊が少なくなった。また、民間企業において、鹿児島出張所の撤退が多くなった。

・大阪からの客は増えた。ビジネス利用は減ったが、観光は余りある程の増となった。

・新幹線車両の魅力増を図った。2列×2列の列車。木材を使用した列車。新800系はJR九州のみで運行。地元の素材を使用した地産地消の車両。ゆったり使用できる。まだ車両の数は多くない。

・特徴のある列車でお客さんを呼ぶ。利用客数は、現在でも10%の伸びが続いている。

・N700系は、JR西日本との共同で製造。

・新幹線の定期券も設定し、新幹線が生活の足にもなっている。

・大阪、広島、東京から多くのお客さんが来た。航空機からJRへのシフトが起こった。一見客を減らして、リピーターを増やすことを考えている。

・バス保有日本一の西鉄と競合関係にあった。

・九州の人口だけで商売しても営業できない。

・デザインと地域に根ざしたストーリーのある列車(D&S列車)を走らすことで、新幹線に乗車する仕組みを作った。D&S列車と地域が連動して走っている。新幹線に乗るための理由づけ、新幹線の効果を面的に出すのがD&S列車の役目。

・子どもが楽しい列車は、大人も楽しい(例:SL人吉号に設置した「子ども用の椅子」)沿線住民が手を振る運動は、地域との一体感を醸成。

・「A列車」号の「A」は、「アダルト」と「天草」を意味している。「A列車」号に連絡するため、地元の人が船を出した(シークルーズ)。その船との接続をJRで考慮した。周遊バス(県と自治体で運行)を使用すれば、線路がなくても鉄道効果は出る。

・「指宿のたまて箱」号は、地元にある「浦島太郎伝説(地域に伝わるストーリー)」を活用した列車。

・地元の高校生によるお茶の提供(おもてなしを実施)。おもてなしに参加したい高校生が多く、抽選になる位の人気。高校生主体の取組であり、地域が列車を愛している好例。

宮崎には新幹線がないが、「飫肥(おび)杉」を使用した車両(「海幸山幸」号)を運行。飫肥の挨拶の取組は、観光客等に好印象を与える。

・JRが走っていないところに「海幸山幸」号を走らせ、連絡バスを走らせている。

・「あそぼーい」号内においては、客室乗務員が乗客の子どもに読み聞かせを行う。

・客室乗務員による観光案内(「ゆふいんの森」号)

・地元を巻き込んだCMを制作。

・JRは線的に、バス、タクシー、レンタカーで面的にカバー。両者で連携して地域をカバー。

・ウォーキングイベントを実施している。地域におけるお土産品の購買に繋がる。山ガールの参加も見受けられる。地域の駅員が道案内を行っている。

・新しいお祭りを創作しても人は来る(例:長崎のランタンフェア)。また、お客さんが、新幹線(新しいもの)を使って地域の歴史・伝統(古いもの)を見に来る。都会には古いものがないので、都会の人に人気がある。

・新幹線を使った企画案を募り、幾つかを実施した結果、新幹線のPRに繋がり、開業2年目の利用者増に繋がった。(例:新幹線車内で、結婚式、銀婚式、学校の先生の送別会を実施)

・新幹線開業前から、南九州観光調査委員会を発足させ、おもてなしの実践例を表彰(東京:赤坂で実施)する等し、PRに励んだ。

・九州観光推進機構(九州地方知事会、九州経済連合会、九州商工会議所連合会、九州経済同友会及び九州経営者協会から成る九州地域戦略会議で策定された「九州観光戦略」の実行組織として平成17年4月に設立)も設立。観光振興には、観光素材、地元のおもてなし、アクセスが必要。

 

(福田委員)

D&S列車の客層はどうか。地元の「若桜鉄道」の参考にしたい。

(宮田課長)

3割が地元、6割が他県・海外。最初は鉄道ファン多い。今は、女性グループ(30~40代)、シニア層が多い。列車に乗ることが楽しみの人が多い。「片道は列車、片道はレンタカー」という方も多い。ビジネスは無い、ほとんど観光。

 「あそぼーい」号は、ファミリー層。

 「ゆふいんの森」号は、若い女性。

 「A列車」号は、おしゃれな若い女性、いずれも平日は、ほとんど外国人。

  シニア、女性、外国人が中心。乗ることを目的にした列車を作った方がいと思う。

(福田委員)

「海幸山幸」号と連携運行しているバスも水戸岡氏のデザインか。

(宮田課長)

そう。天草の船も。「海幸山幸」号と連携しているバスは、JRにおいても商品化している。

(前田委員)

特色ある列車は、何時頃から製造しているか。なぜJR西日本は、JR九州の成功事例を参考にしないのだろうか。

(福永部長)

JR九州となってから改修、製造を行った。各地域の考え方で行っているのだと思う。JR九州は、水戸岡氏と一緒となったことで成功した。

(前田委員)

新幹線開業後、在来線は3セクになったのか。3セクに対して援助はしているか。

(原課長)

一部は3セクになった。整備新幹線の運行主体はJRとされ、その際、在来線の運営まではできないと表明した。

(福永部長)

人的支援、メンテナンス支援は、職員を出向させて対応。列車の直通運行もしている。

(宮田課長)

「肥薩おれんじ鉄道」は、JRが作成する観光地図にも入れ、一緒にPRに取り組んでいる。

(前田議員)

利用人数を増やし、鉄道ネットワークを使って、鉄道を活性化していると感じた。

(福永部長)

九州新幹線は、東海道、山陽新幹線とは違う。東京~大阪という二大都市を結ぶ路線、都市間新幹線ではない。ビジネス利用は期待できない。観光、地元との協力は必要。ローカル新幹線と考えている。

(前田議員)

山陰新幹線は、必要と考えるか。

(福永部長)

九州は大きな都市(20、30、50、100万人程度)が並んでおり、鉄道の高速化大量輸送に向いている。その様な需要が山陰にあれば、山陰新幹線は可能。その様な状況がなければ、作り出すことが必要。

(斉木議員)

D&S列車の発想は、新幹線導入の前か後か。

(宮田課長)

九州新幹線ありきのD&S列車である。

(福永部長)

雰囲気を盛り上げるため、開業前から地域との相談はしていた。

(斉木委員)

新幹線が停車する様なメインの駅とその他の駅は格差があるか。宮崎などは、新幹線がないがどうか。

(福永部長)

社内でも宮崎にD&S列車を走らせることについて異論があった。JRバスを使うネットワークが出来る。

(斉木委員)

JR西日本は「新幹線を山陰に回すと赤字となる。JR西日本は、山陽側で儲けている。山陰側の開発は、株主に説明できない。」と言っている。その様な状況が、JR九州でもあるか。

(福永部長)

『九州は一つ』の発想で取り組んでいるので問題は無い。JR九州は、株式上場していない。

 

(宮田課長)

D&S列車、各列車で収支はトントン。

(福永部長)

地域の方の協力が相乗効果となる。

(広谷委員)

新幹線を作ると在来線の営業は。

(福永部長)

3セクとなる点もある。特急が無くなったりしている。各駅停車の列車も残している。

 

○所感

 県内の鉄道高速化に関しては、「山陰新幹線」、「フリーゲージトレインの導入とそれに伴う諸問題(伯備線の線形改良等)」、「因美線の電化」等、幾つかの選択肢が考えられる。それぞれ、大きな経費を伴う事業であり、財政面を踏まえた将来設計の上で、検討を進めるべき問題である。

 しかし、現在、我々は、「費用対効果はどうか」、「いずれの路線、工法(方法)が良いか」というような、ハード面の優劣に目を奪われ過ぎているように感じる。

 高速鉄道の導入によって、「本県は何を期待するのか、何を目指すのか」というような高速化の目的をはっきりさせ、そのためには「どの形態・どの方法が最適なのか。」という視点を議会内部はもとより、執行部及び県民とも共有することも必要であると感じた。

(2)鹿児島商工会議所

○調査事項

 ・新幹線開通までの鹿児島商工会議所の取組みについて

 ・新幹線開通がもたらす経済効果について

 

○対応者

 ・鹿児島商工会議所 会頭          岩崎 芳太郎

 ・  同  上   専務理事        山下 春洋

 ・  同  上   事務局長        三宅 正敏

 ・  同  上   企画産業課 課長代理  久保 武之

 

○調査内容

(岩崎会頭)

  新幹線を頑張って通してよかったと思っている。地元のシンクタンク等が経済効果を出しているが、経済効果というよりも、新幹線を通していなかったら、地元経済はボロボロだったと思う。

  九州内では、鹿児島は、そこそこ、独り勝ちと言われる程、新幹線の恩恵を享受している。

  新幹線は政治力だと思っている。みなさんも新幹線を勝ち取って欲しい。

(小谷委員長)

  鹿児島には何回か訪問している。和牛のことでお邪魔している。鳥取県は高速交通が発達していない。山陰新幹線の話が知事から出たことを受けて、本委員会を立ち上げた。本日はよろしくお願いしたい。

 

(岩崎会頭)

 新幹線導入は、中央と地方の戦いの象徴である。「国の借金が増える。」とする財務省・マスコミとどうやって戦うか。戦いのシンボルである。

(以下、別添資料を用いて説明)

 ・S57年に新幹線整備計画が凍結になった。東北新幹線は三塚氏、上越新幹線は田中氏の影響力で出来た。S43年に本会議所主導で運動が始まった。

 ・二階堂氏が鹿児島選出。

 ・着工順は、東北、北陸(2線)に抜かれて実質ビリになった。八代以南の難工事(トンネル工事)に事前着手した。細川知事は新幹線に反対であった。

 ・福岡とバーター取引をした。国立博物館建設と九州新幹線(鹿児島ルート)を取引した。

 ・北陸新幹線には森氏がいた。九州には有力な議員が居なかった。安倍(晋太郎)氏の後援会関係者に九電の会長がいたので、そのルートを使って動いた。

 ・ミニ新幹線は新幹線ではない。鹿児島には狭軌導入の話もあったが、広軌に拘った。狭軌では時短にならない。高い望み(広軌導入)を持って正解だった。

 ・経済人も政治の力がないと駄目。

 ・新幹線開業に関して、鹿児島における失敗が三つある。

1、東海道・山陽新幹線は16両。九州新幹線は8両。博多駅までは、JR西日本が運行。新幹線開通で、もっと修学旅行生が増えると思ったがそうでもなかった。8両編成なので輸送量が少ない。JR西日本は修学旅行生増について積極的ではない。16両は商売になるが、8両では商売にならない。JR西日本は、九州への誘客キャンペーンをしてくれない。

  2、鹿児島は駅の整備をしたが、よくなかった。バスの乗り場が10台分程しかなく、乗降客の捌きが悪い。

  3、JR九州は、当初新幹線に対してやる気がなかったので、新幹線開業を推進するために在来線廃止問題については、JRの言いなりになった。例えば、肥薩おれんじ鉄道(川内~熊本間)、大赤字である。鹿児島県、熊本県が経費負担している。

    日豊線はどうなるのか。活用されていない。フリーゲージトレインを持ってくる話もあった。宮崎県は熱心ではなかった。日豊線は、線路改良に100億円が見込まれ、国、JR、地元が3分の1ずつ経費負担をするルールがあるので、JRは経費負担が過大なため話にのってこない。そのため、宮崎は道路整備の方向に向かっていった。

(久保課長代理)

  (別添資料に基づき説明)

  西鹿児島駅を鹿児島中央駅に変更した。所要経費(6,600億円)は商工会議所、経済同友会等が中心になって寄付を募り1億1,300万円を集めた。

  「九州新幹線全線開業経済効果最大化プロジェクト」を実施している。

  「オールかごしまWelcomeキャンペーン」を実施している。

 

(砂場委員)

 広軌を導入すると街づくりに影響を与えると思うが、経済効果はあったか。

(岩崎会頭)

 広軌導入で、公共事業の規模は下がらなかった。そのため、鹿児島の構造改革が遅れた。鹿児島市が駅前周辺の改修に際して、JRに意見を言わなかったので、会議所としては、駅の使い勝手が悪くて困っている。

(前田議員)

  九州新幹線(長崎ルート)におけるフリーゲージトレイン、フル規格導入の経緯についてご存じであれば、教えていただきたい。

(岩崎会頭)

  よくわからない。推測だが、佐賀の人は新幹線が通るメリットがないと思い、加え、お金の負担があることを嫌ったためフリーゲージトレインの導入になったと思う。

(斉木議員)

  在来線の取り扱いが問題と考える。

(岩崎会頭)

  新幹線の駅をどこに造るか。各駅停車の新幹線・ノンストップの新幹線をどのように走らせるかが問題。各自治体として、どこに新幹線の駅をつくるかで違ってくる(新駅を作ることで、新幹線を活用できる様になり、在来線の代替が可能となる。)。通勤、通学に関することが問題となると思う。観光面では見れば、止まり過ぎると時短効果がでない。

  熊本からは、熊本発の「みずほ」号を増やして欲しいとの意見もある。

(小谷委員長)

 商工会、議会、どちらがリーダーシップを取ったのか。

 

(岩崎会頭)

 商工会がリーダーシップを取った。知事、会頭、県庁所在地の市長の三位一体体制で進めた。新幹線導入は総合力である。

(山下専務理事)

  要望、決起大会を頻繁に行った。

(砂場委員)

  一般に経済効果はどうか。企業誘致、支店等の撤退など。

(岩崎会頭)

  鹿児島から民間会社の支店がなくなるから(新幹線開業)反対、(新幹線開業で時短となり)日帰りの出張が増えて宿泊者数が減るから(新幹線開業)反対の声はあった。

  福岡に買い物客を吸い取られる空洞化も懸念された。確かに減った面もあるかもしれないが、鹿児島で事業をやりた人は鹿児島に来た。日帰り出張は増え、出張客が10倍に増えた。支店も福岡に統合されたが、福岡から年に数回の出張だった人が、毎月来るようになった。

(山下専務理事)

  流出も心配されたし、ストロー効果もあるが、目立たない。新幹線は料金が高いため買い物程度では利用されない。出張の回数が増えた。広島からの出張もある。当会議所の会議では2次会を設定し、宿泊して貰うようにしている。

 

○所感

 鹿児島商工会議所をはじめとする地元の新幹線導入に対する並々ならぬ熱意を感じた。議会や行政からのお仕着せではない、県民自ら沸き上がって来た取組には、逆境にも怯まない力強さがあった。これは、本県もお手本する点が多いと感じた。

 本県では、高速鉄道導入に関する動きは、緒についたばかりである。そのため、議会としての意思統一もなされていないが、高速鉄道導入には、執行部との連携はもとより、県民との連携も必要不可欠であると感じた。

 本県はどの様な形態で高速化を成し遂げるか未定であるが、我々議会も執行部任せではなく、広く県民の声を汲み取る仕組みを工夫しなければならないと感じた。


 

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