教育委員リレーコラム

  

中小企業経営者の役割

鳥取県教育委員会委員長職務代行者  堀田 收 堀田委員の写真


1.はじめに

 私は、教育委員に就任して3年あまりになりますが、その活動の中で、子どもたちの学校教育や家庭教育の重要性を改めて認識するとともに、学校卒業後の社会での教育、特に職場での人材育成の大切さを痛感しています。
 そこで、このコラムでは、中小企業の経営者でもある私の立場から、企業における人材育成について書きたいと思います。
 私は、昨年11月に境港商工会議所の会頭に就任しました。現在、全国で516商工会議所がそれぞれの地域で活躍しています。東京商工会議所の創立者でもあり、日本の資本主義の生みの親でもある渋沢栄一翁は、経営哲学に道徳経済合一説すなわち仁義道徳と生産殖利とは元来ともに進むべきものと提唱されました。

2.企業の社会的責任(CSR)

 近頃は、企業を取り巻く経営環境が大きく変わり、企業行動に対する社会評価が厳しくなりました。そして常に社会から企業の社会的責任(CSR)が問われています。この社会情勢の変化に対応して、企業活動を継続発展させるには、利益の追求、効率化を図るだけではいられなくなっています。顧客や、関係取引先ばかりではなく地域社会から信用、信頼されることが大切になりました
 それに対して企業経営環境はどうかと言えば、企業は経済のグローバル化に伴って国内外の厳しい企業間競争にさらされ、本来の企業理念が置き去りになってしまい、食品偽装を始めとして、様々な企業不祥事が横行してしまいました。

3.中小企業の状況

 先日(平成20年4月)、平成19年度の中小企業白書が公表されました。平成19年度の動向は以下のようでした。
 「原油・原材料価格の高騰、改正建築基本法施行後の建築着工件数の減少が発生し、これらの影響を背景として、中小企業の業績が悪化している状況を示す。
 しかし、現在の6年を超える景気回復局面において、中小企業の多くは回復の実感に乏しく、業種間・地域間で回復にばらつきがある背景には、原油価格の高騰等の突発的、循環的な要因だけでなく、中小企業が大企業に比べて民間消費により大きく依存しており、近年の雇用・所得環境の変化に伴って民間消費が伸び悩んでいること等の構造的な要因が存在する点を指摘。」
 なかなか読み辛いのですが、どうも中小企業にとってあまり良くないようです。また、都会と地方、大企業と中小企業間の格差も広がってしまったようです。地方の中小企業は、情報を集めながら、もっと知恵を働かせ、創意工夫しなければいけないようです。
 

4.中小企業経営者と企業業績

 私は中小企業の経営者(堀田石油 株式会社)ですので、中小企業経営者と経営の成果である企業業績を決めるのは何なのか考えてみました。
※中小企業経営者と企業業績
(1)中小企業の業績は経営者で決まる。
(2)経営者が変われば、社員が変わる。(経営の改善は経営者からスタート)
(3)幹部や社員は経営者の鏡である。
(4)中小企業においては経営が重要である。
(5)中小企業経営者としての役割を学び、中小企業経営者としての能力開発をしていくことが会社業績の根本である。
(6)中小企業経営者の社会的意義
  1.新しい顧客・新しいサービスを創造する革新を起こす。
  2.社員の生産性を上げさせ社員の能力開発を促す。
  3.会社の業績を発展させ社員を豊かにする。

 私には実行するのはとても大変ですが、中小企業をどうにか継続させるにはやっていかなくてはなりません。この経営者の役割は、会社の各部門や学校にも当てはまるかもしれません。

 

5.中小企業の人材育成

 中小企業の人材育成は企業が存続することが前提です。企業が生み出す利益から社員の生活、生涯設計が成り立ち、企業の発展と共に社員の幸福もあるのです。他方、学校教育は、人材育成それ自体が目的であり、絶対にいつでも子どもたちが主役です。おのずと人材育成の基本的な考え方も変わりますが、人の成長に関わることは同じです。
※中小企業の人材育成の基本的な考え方
(1)人材育成の最重要ポイントは社員にいかにヤル気を持たせるか?
(2)経営者にとって人材育成とは現場の社員との戦いである。
(3)人材育成は永遠のテーマであって終わりはない。また完成もない。いつも未完である。
(4)社員教育に決定打はない。とにかくまず何かを始めて、やりながら考えるのが中小企業の人材育成の方法。
(5)人は、学んだことでも、時間がたつと忘れることが多くなる。だから繰り返し社員への教育が必要である。
(6)たまたまとれた1名の社員をどう戦力化するかが中小企業の人材育成。
(7)社員を育成しても辞めるから無駄とは考えない。転職した会社で役に立っていると思い切る。
(8)人が成長するためには会社が成長していなければならない。それには社長が成長していなければならない。
(9)会社の変化・成長についてこれる人が人材である。どんなに能力があっても会社のために使わなければ何にもならない。
(10)社員一人一人個別の人材育成がもっとも重要である。一人が全部門の能力を持たなくても良い。補い合って全体が最も力を発揮できれば良い。

6.おわりに

 子どもたちは学校を卒業すれば、多くは職業を持つかと思います。就職すれば自分が思い描いていた仕事と現実の仕事にギャップがあるかもしれません。また人間関係でつまずくこともあるでしょう。子どもたちには社会で自立して生きる力をつけて、一度や二度つまずいてもチャレンジし続けてもらいたいと思います。また、これからの地域社会と企業環境が、子どもたちが失敗しても見守って支えてあげたり、もう一回チャレンジさせてあげられる余裕がありたいと思います。子どもたちの可能性は無限なのですから。

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