P.2~3 鳥取県の『宝蔵』としての新たなスタート
鳥取県立博物館は、令和7 年3 月30 日に鳥取県立美術館が開館することに伴い、自然史、歴史、民俗、美術工芸の総合博物館として新たなスタートを切ります【表1 参照】。これまで当館は、昭和47 年(1972 年)に鳥取城跡内に開館して以来、自然、歴史・民俗、美術の3 分野の博物館として活動してきましたが、美術分野は県立美術館として独立します。そこで、これまで果たしてきた役割や機能を再確認しつつ、時代に即した新たな視点も加え、理念と使命を策定しました【概念図参照】。
理念は、「鳥取県の『宝蔵』:鳥取県の過去を知り、ともに未来を考えていく博物館」です。『宝蔵』は、19世紀半ばの鳥取城内に実在していた「御宝蔵」という建物にちなみました。この蔵には、現在県外の機関が所蔵する国重要文化財や、県立博物館に引き継がれている初代藩主池田光仲直筆の和歌などが収められており、「御宝蔵」は県立博物館の前身とも言えます。この「御宝蔵」を理念の根幹にすえることで、県民の財産である資料をいつまでも保存し続けることを表明しました。『宝蔵』は単に資料を納めておくだけの蔵ではなく、収集した資料を適切に保存・管理し、誰もがいつでも利活用できる新しいしくみを持った蔵としていきます。このことで、鳥取県の過去を知り、ともに未来を考えていけたらと思っています。
この理念のもと、具体的に実現していくべき使命を5つ定めました【表2】。これを実現することにより、県民が楽しく学び、感動を覚えるような「魅力ある県立博物館」となり、まちづくりなどの地域の多様な分野にも貢献していきます。

新しい展示活動について
館内における展示活動では、いつでも誰でも主体的に学びを深められるように、対話や交流が生まれていくしくみを作っていきます。部屋は3 つあり、一ノ蔵『とっとりの自然史』、二ノ蔵『とっとりの歴史と民俗』、三ノ蔵『とっとりの藩と城』です。これらの部屋では、鳥取県の自然と人の歴史や暮らしなどを常時、多くの資料とともに紹介しますが、一ノ蔵『とっとりの自然史』では協力団体の方々をはじめとする県民の皆さまと様々な活動も行っていきます。
三ノ蔵『とっとりの藩と城』の部屋では、鳥取城跡内にある博物館として、鳥取県の歴史・自然を象徴する「鳥取城跡」とその城山である「久松山」を核とした歴史・自然史・美術工芸の総合的な展示を行います。鳥取県の発展の礎となった鳥取藩や鳥取城の歴史や文化、またその背景について、国内屈指の大名家文書である“ 鳥取藩政資料”や旧藩主池田家ゆかりの大名道具、絵画、やきものなど多彩な美術工芸品を用いてわかりやすく紹介するとともに、久松山の地質や生物相を事例に、鳥取県の豊かな自然環境について紹介します。
なお、三ノ蔵『とっとりの藩と城』は年間数回の展示替えを行いながら紹介していく予定ですが、第一期である令和7年5月1日(木)から6 月29日(日)は、当館の再スタートを記念して企画展として実施します。(学芸課 川上 靖)
シンボルカラーについて

鳥取県の「宝蔵」として資料を守り続けることを表すために、魔除けや不老長寿を象徴する日本の伝統色の「赤」をシンボルカラーとしています。「赤」の種類は古くから珍重された「猩々緋(しょうじょうひ)」としました。
沿革 ~鳥取県立博物館の歩み~
鳥取県立博物館の前身は、昭和22(1947)年に鳥取県立公民館内に設置された「科学研究館」です。その後、昭和24(1949)年に鳥取城跡内の「仁風閣」に移転し、「鳥取県立科学館」となりました。昭和29(1954)年には「鳥取県立科学博物館」に改称され、博物館法に基づく登録博物館となり、昭和39(1964)年には生物・地学・考古・民俗の4 部門を扱うようになりました。
昭和47(1972)年10月に、鳥取県立図書館が保管していた鳥取藩池田家資料を受け入れ、新たに美術部門を加え、現在の場所に「鳥取県立博物館」として新築・開館しました。開館時の部門は学芸係(地学・生物・考古・民俗)、美術係、史料係でした。
令和7年(2025)年3月に美術部門が分離独立し、倉吉市に鳥取県立美術館として開館することに伴い、鳥取県立博物館は自然史・歴史・民俗・美術工芸の総合博物館として新たな歩みをはじめました。
P.4~6 学芸員のイチオシ!これ注目 展示活動室の所蔵品紹介



P.7 企画展「とことん!昆虫展」
令和7年7月12日(土)~9月15日(月・祝)

P.8 企画展「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション(仮)」
令和7年10月19日(日)~12月7日(日)

↓PDFデータでもご覧いただけます
鳥取県博物館 ニュースレター宝蔵No.1 (pdf:2846KB)