二十四節気の1つ春分を過ぎ、春の便りが聞こえるようになりました。鳥取県中部地区ではヒバリやウグイスのさえずりが聞こえ、イワツバメの姿も見かけます。春を告げる野鳥の声や姿から春が来たことを実感します。
さて、今回は三徳山のミツマタを紹介します。3月中旬に三徳山を訪れると、ミツマタの木に黄色い花が咲き始めていました。

三徳山で見かけたミツマタの木

ミツマタの花
ミツマタは、中国・ヒマラヤ地方原産のジンチョウゲ科の落葉低木です。枝が3本に分かれることからこの名前になったそうです。

ミツマタ(枝の先端が3本に分かれる)
日本では、16世紀後半の慶長年間以降栽培されていて、樹皮の繊維は長くて強いため、和紙や紙幣の原料として利用されてきました。
三朝町のミツマタの歴史を文献でひもとくと、ミツマタは三朝町内で広く栽培されていたようです。明治時代になり紙の需要が増すと栽培が増え、明治43年に森地区にできた旭抄紙会社の工場では、三徳地区からもミツマタを購入しました。この工場では、半紙、障子紙、半切(巻紙)、美濃紙の紙製品を作り、鳥取の紙問屋に出荷していました。その後、昭和24年以降は原料生産のみとなり、昭和58年1月には、大谷地区と吉原地区での生産者は20戸となり、平成18年に長い歴史に幕を閉じたということです。
このようにミツマタは三徳地区の人々の生活を支える植物でした。栽培されていたものが今では野生化していますが、歴史の名残としてこれからも地域に根付いていくことでしょう。
主な参考文献
・三徳山の植生永遠に 森本満喜夫/著 三朝町教育委員会 2010年
・花の三朝路 森本満喜夫/著 三朝町教育委員会 昭和58年
・三朝町誌 山崎勉/編 三朝町役場 昭和40年
・新修 三朝町史 三朝町史編さん委員会/編 三朝町 平成21年
・原色日本植物図鑑・木本編 北村四郎、村田源/著 保育社 昭和46年
・お札の館探検隊 なぜなぜ質問箱(配布版) 国立印刷局 平成24年