スタッフが綴る日々の出来事

作成日:2024年06月06日
火と人間

 湯梨浜(ゆりはま)町にある古墳時代前期の集落跡、長瀬高浜(ながせたかはま)遺跡の竪穴住居跡から、「囲炉裏(いろり)」と考えられる珍しい遺構が見つかりました(写真1)。妻木晩田(むきばんだ)遺跡で確認された「炉」と、古墳時代後期以降に発達する「竃(かまど)」の間を埋める、貴重な調理施設の発見と評価できそうです。これらはいずれも、「火」を使う生活と結びついていますね。
 人類は約70万年前の旧石器時代に、落雷や火山の噴火などから、火の存在を偶然知ったと考えられます。我々の遠い祖先は、「調理」・「灯り」・「暖房」、そして猛獣からの「防御」にと、まさに生き抜くために火を使いこなし、生活の幅を広げていきました。妻木晩田遺跡でも、炉や火を受けた床の痕跡が数多く発見されています。しかし時に、火は一瞬にして全てを無にする恐ろしい存在でもありました。必ずしも失火が原因とはいえませんが、妻木晩田遺跡からも焼失住居が約20棟見つかっています(写真2)。

 そんな様々な顔を持つ「火」、実は最も大切な役割は、安らぎや一体感をもたらす精神的なものではなかったかと感じています。そう考えるに至った理由は、ソロキャンプの夕食後に、2時間以上、ただ焚火を眺めてしまった体験からです。おそらく、目の前の炎しか視界に入らない究極のリラックス状態(ゾーン)に陥ったのでしょう。このように、火は心(精神)を落ち着けてくれる働きもありますよね。言語をまだ持っていなかった旧石器時代の人々の間でも、火を囲むリラックスした空間の中で、「家族」や「味方」といった仲間意識が芽生えていった・・・と想像豊かにすれば、火は、人類の進化にかかせない存在とも言えないでしょうか。蛇足ですが、今でもキャンプファイヤーで同様な感覚を味わうことが出来ますよね。
 むきばんだ史跡公園で人気のある弥生体験に、「火起こし」があります。家族や学校の友達と協力して火ダネを作ったあと、突如として真っ赤な炎が生まれる瞬間は、何とも言いがたい高揚感と一体感を覚えます。むきばんだ史跡公園では、全国各地の史跡公園や博物館等で通常行っている「舞ぎり」だけではなく、「紐ぎり」という弥生時代の着火方法に近い火起こしもできるようになりました。火起こしを通じて、皆で一緒に弥生人の気持ちに近づいてみませんか? 

長瀬高浜遺跡の竪穴建物跡から見つかった囲炉裏跡(鳥取県教育文化財団調査室提供)

写真1 長瀬高浜遺跡の竪穴建物跡から見つかった囲炉裏跡(鳥取県教育文化財団調査室提供)

妻木晩田遺跡の焼失住居

写真2 妻木晩田遺跡の焼失住居

 

【休園日】

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    7月22日(月)
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    12月29日~1月3日

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