2024年10月
◇◆タイ経済 2024年上半期レポート◆◇
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
タイのGDPに占める製造業の割合は3割を超えていて、その中でも自動車産業は基幹産業となっています。輸出分を含めた自動車の製造台数とタイ国内の販売台数は景気をはかる上で一つの指標となっていますが、昨年から今年にかけて前年割れが続くなど大きな衝撃が走っています。今回は2024年上半期のタイ経済についてレポートします。
自動車業界の概況
下の表はタイ月次自動車生産台数(タイ工業連盟発表)及び月次国内販売台数(タイトヨタ自動車発表)です。
自動車生産台数と市場シェアトップ(約4割)を誇るトヨタのタイ国内の販売台数共に、コロナ前の2019年と昨年2023年を比べてもほぼ全ての月でマイナスとなっており、昨年の段階でもコロナからの回復途中の段階にありましたが、今年2024年はいずれの月も前年比10%以上の減とさらに厳しい状況となっています。
生産台数の減少については、中国からのEV輸入の増加、タイ国内市場及び世界市場の低迷による要素が大きいと考えられ、タイ国内市場が低迷している原因としては、家計債務の増加及び金利高によりローン審査が厳格化されていることが挙げられます。
タイ商工会議所大学の調査によると、タイの家計債務は世帯平均で60万6,378バーツと前年比で8.4%増加しており、家計債務の国内総生産(GDP)比率は90%以上と、東南アジアの他国と比べても非常に高い水準となっていることが、金融機関が自動車ローン実行に慎重姿勢をとる大きな要因であると考えられます。また、海外の主な輸出先では中東情勢の悪化を受けて支出に慎重な消費者が増え、車販売が縮小していると報じられています。タイ工業連盟(FTI)自動車部会のスラポン広報担当(自動車部会長相談役)は10月24日、来月に2024年の自動車生産台数目標の下方修正を発表すると明らかにし、下げ幅は数万台、最大10万台以上と見込まれています。
現地日系企業の動向
盤谷日本人商工会議所(JCC)が6月25日に発表した日系企業の景気動向調査によると、2024年上半期(見通し)の業況感指数(DI)の見通しはマイナス11、2024下半期(見通し)はプラス9でした。※DIは前期に比べて業況が「上向く(上向いた)」との回答比率から、「悪化する(悪化した)」との回答比率を引いた値。業況が改善した企業が多いとプラスになる。
昨年下半期(実績)のDIはマイナス17 、今年上半期(見通し)のDIはインバウンドの回復による好影響が一部でみられましたが、国内の耐久消費財の不振、低調な輸出需要などの要因から、引き続きマイナスとなりました。今年下半期(見通し)のDIは、インバウンドの回復の継続、政府の景気対策の効果および輸出需要の回復への期待などから、上半期から上向く見込みとなっています。
日本からタイへの食品関連の輸出は好調で、農林水産省のまとめによると日本からタイへの農林水産物・食品輸出額は2023 年、511 億円で世界8位でしたが、2024年1~8月累計ではシンガポールを抜き、7位に上昇しました。金額は前年同期比15.9%増となる403億円で、東南アジアではベトナムに次いで2番目となっています。ジェトロバンコクの黒田所長は24年通年では前年を越える日本産食品のタイへの輸出を目指し、「引き続き世界7位以上を達成したい」と目標を語っています。
大手日系企業の動向
大手日系企業の動向としては、独自展開ではなく現地のローカル企業との協業を進める傾向がみられます。主な事例を以下に挙げます。
・トヨタ x CPグループ(タイ財閥大手)…タイにおけるカーボンニュートラルの実現に向けた協業に向け基本合意書を締結
・花王 x CPグループ…タイにおけるサスティナブルな未来に向けた協業を進めるための基本合意書を締結
・東急 x サハグループ(タイ財閥大手)…タイ王国・バンコク都の再開発計画地“キングスクエア”におけるサービスアパートメント事業「デュシットスイーツキングスクエアバンコク」に参画
・東急 x SkyDrive x サハグループ…空飛ぶクルマ「SKYDRIVE(SD-05)」を活用したタイでの事業検討に関する覚書を締結
・東洋エンジニアリング x SCGケミカルズ(タイ王室系財閥)…混合廃プラ油化技術の共同開発に関する契約書 (JDA)を締結
・丸紅 x Green Rubber Energy Co., Ltd.…廃タイヤの熱分解リサイクル事業を展開するタイローカル企業グリーン・ラバー・エナジーに出資参画
今後の見通し
アユタヤ銀行の調査部門クルンシィ・リサーチは9月26日、タイの自動車市場が2025年から26年にかけて回復に向かうとの見通しを示しました。クルンシィ・リサーチは24~26年のタイの自動車生産台数が年平均で2.5~3.5%減少するとみていますが、これは今年の国内販売が前年比3.5~4.5%減少することによるもので、25~26年には
・観光業の成長と投資増
・ラニーニャ現象による農産物の収穫量増
・電気自動車(EV)の値下げ競争激化とEVに対抗するガソリン車の新モデル投入
・EV普及支援策「EV3.5」に基づくEV販売の増加と性能向上
などにより販売が上向くと見込んでいます。
また、世界銀行は7月に「タイ経済モニター」を発表し、2024年のタイ経済は持続的な個人消費と観光および下半期からの商品輸出の回復に支えられてGDP成長率は2.4%と予測し、2023年の1.9%から上昇が見込まれるとしています。このGDP成長率予測のベースシナリオには、タイ政府が2024年第4四半期に開始を予定している消費刺激策『デジタルウォレット政策(低所得者と障害者向けに1人当たり1万バーツ(約4万5,000円、1バーツ=約4.5円)を支給)』の効果は組み込んでおらず、実施された場合はさらに成長率を押し上げると見込んでいます。
2025年については、引き続き個人消費と観光が牽引役となると見込んでおり、成長のペースは鈍化するものの、観光業は2025年半ばには新型コロナウイルス流行前の水準まで回復すると予測しています。
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