2021年4月 タイ王国及び東南アジア諸国の動向

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タイ王国及び東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

~シンガポールの日系企業進出状況~

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューロースタッフの柴田です。

 シンガポールは、自国の国土と人材が限られている中、国として積極的に海外の企業や人材を誘致し、著しい経済成長を遂げてきました。起業のしやすさや資金調達、国外との貿易などの10の判断基準を基に、世界銀行が毎年発表している「ビジネスがしやすい国ランキング(Ease of doing business)」の2020年版では、ニュージーランドに次いで2位を獲得しており、外国企業にとって、進出のための土壌が最も整った国の一つであると言えます。

 今回はそんなシンガポールにおける日系企業の進出状況についてご紹介します。


【目次】
  1. なぜシンガポール?
  2. 日系企業の進出状況
  3. 人材獲得方針の変化

シンガポールの基本情報(出典:外務省)

1 なぜシンガポール?

 冒頭で述べた通り、国内マーケットの小さいシンガポールは、マレーシアからの独立後、優遇措置により外資企業を積極的に国内に取り込むことで、産業の工業化による経済成長を遂げてきました。外国企業を積極的に誘致するその姿勢は変わっておらず、法人税率はアジア最低レベルであり、スタートアップ企業への免税制度、シンガポールに地域あるいは国際統括本部を置く企業への優遇を行っています。他にも、メディアや金融業等の一部の業種を除き外資規制がなく、外国資本による全額出資が可能など、ビジネスをしやすい環境が整っています。

 それ以外にも政治や社会の安定性や英語が公用語であること、アジアの中心に位置する立地における優位性等の多くの要因があり、シンガポールは多くの外資企業の誘致に成功。現在の国際社会における地位を確立したのです。

シンガポールの街の様子1


2 日系企業の進出状況

 現在、世界中から約7,000の企業がシンガポールに進出しているとされており、日系企業も800社以上が同国に拠点を置いています。業種別にみると、2019年のデータでは、観光・流通・サービスが最も多く全体の29%を占めており、その後、製造業の電気・電子(15%)、化学(14%)、運輸通信(10%)、金融・保険(8%)と続きます。

シンガポール日本商工会議所 登録企業数の推移


 近年では、アジアの市場としての重要性が増すのに伴い、アジアで展開する事業の再編・強化を目的に、地域拠点をシンガポールに設置する日系企業が多くみられました。しかし、進出にかかるコストの上昇に伴い、2016年をピークに一転、撤退や拠点を他国へ移転する企業が出てきています。しかしながら、中国を除くアジア域内最大の地域統括拠点としてのシンガポールの立場は揺らぐことなく、JETROが行った、2019年度在シンガポール日系企業地域統括機能調査によると、地域統括機能のシンガポールから第3国へと全面的、部分的な移管を検討しているのは、全体の6.5%のみという結果となっています。

 加えて、世界各国の多国籍企業が、アジア向けの製品、サービスの開発、研究のために研究開発(R&D)施設やイノベーションセンターを設置する動きが加速しています。国の知的所有権(IP)の法整備が整い、人材が比較的獲得しやすく、研究インフラが整備されているためです。また、国としてもR&D施設の研究開発費や設備費、人件費への助成による支援制度を設ける等、拠点の設置を後押ししています。

 実際に、日本の住友化学や富士通、資生堂の他、アメリカのIBMやドイツのDHL、イギリスのダイソンや中国の華為技術(ファーウェイ)等、世界各国の名だたる国際企業が、シンガポールにR&D施設やラボを設立しています。


3 人材獲得方針の変化

 これまで、外国企業や海外からの人材を積極的に誘致することで、経済成長を図ってきたシンガポールですが、近年その傾向にも変化が起きています。直近では、2020年8月下旬に、シンガポール人材省より、外国人に対する最低給与額の引き上げによる就労ビザの発給基準を厳格化する旨が発表されました。また、同年9月に行われた国会演説で、リー・シェンロン首相は「外国人の雇用が1つの国籍に偏っている企業には特に警告する」と、進出企業へ多様性の確保を呼びかけました。雇用の偏りにより、シンガポール人や他国籍の社員が適用しづらく、将来のキャリアの見通しも不透明となることを理由としています。

 この一連の流れの背景には、外国人によって雇用機会が奪われていると感じた国民から不満の声が上がり、これに対応する形で、シンガポール人の雇用を優先させる施策の強化を進めていることがあるとみられています。既にシンガポールへ進出している多くの日系企業が、現地人材の採用を強化しているものの、非シンガポール人の幹部や社員の多くは派遣された日本人という企業が多く、多様性に欠けるのが現状です。

 今回のリー首相の企業の多様性に関する発言を受け、日本人社員の現地派遣の減少と優秀な現地人材の確保や育成等、人事戦略の見直しが迫られる企業が増えることが予想されます。

シンガポールの街の様子2


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