~タイのソーシャルコマース事情~
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローのタイ人スタッフ、ニンです。
インターネットやスマートフォンの普及により、インターネット上での電子商取引(Eコマース)は今や日常生活の一部となっています。特に近年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、買い物も含めた様々な活動をオンライン上で行うことができるようになりました。
業界最大手「Amazon(アマゾン)」をはじめ、東南アジア地域で高いシェアを誇る「Shopee(ショッピー)」や「Lazada(ラザダ)」等、様々なECプラットフォームを通じて商取引が可能なEコマース市場は、タイのみならず、世界全体で持続的な成長を続けています。
また、近年、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)は、人々の交流の場だけに留まらず、「ソーシャルコマース」と呼ばれる新たな販売チャネルとして発展しています。
今回の報告書では、この「ソーシャルコマース」に焦点を当て、タイにおけるソーシャルコマース市場や関連企業についてご紹介します。
【目次】
- 「ソーシャルコマース」と「Eコマース」との違い
- タイにおけるソーシャルコマースの市場規模
- ソーシャルコマースにはどんな企業が参入しているのか
- タイのソーシャルコマースの今後
- 最後に
「ソーシャルコマース」と「Eコマース」との違い
「ソーシャルコマース」とは、簡単に言えばFacebookやInstagram、Lineなど、様々なSNSを通じて買い手と売り手が直接商品やサービスを取引できる、オンライン販売チャネルです。
「ソーシャルコマース」と「Eコマース」は、どちらもオンライン上の販売チャネルですが、異なる特徴があります。
それは、「Eコマース」は、Eマーケットプレイスというプラットフォームに売り手を集め、このプラットフォームを介して商品・サービスを提供する、いわばオンライン上のショッピングモールのような場であり、一方「ソーシャルコマース」は、売り手が自社のSNSを通じて消費者と直接商品やサービスを取引する単一店舗のような場であるという点です。
近年、SNSの技術的な発達により、情報発信や情報収集等、人々の交流の場だけに留まらず、商品のマーケティングから販売まで行うことも可能となっています。そのため、より安易に運営できる「ソーシャルコマース」に参入する企業が増加しています。
タイにおけるソーシャルコマースの市場規模
タイ政府系機関の電子取引開発機構(ETDA)は、「2020年に、タイのインターネット利用者がオンラインサービスの利用等のために費やした一日当たりの平均時間は11時間25分であった」と発表しました。また、タイでは、インターネット利用者の95.3%がSNSを利用していることから、多くのインターネット利用者が一日の長い時間をSNSの利用に費やしているといえます。
アユタヤ銀行のリサーチ部門(Krungsri Research)によると、2021年1月時点でFacebookのタイ人アカウント数は約5,100万と世界8位、Instagramのアカウント数は約1,600万で世界15位に位置しています。
また、ETDAが、「2019年のタイにおけるEコマースの市場規模は4兆バーツ(13.6兆円)以上※に達した」と発表しており、また、「このうちEコマース市場におけるソーシャルコマースのシェアは約38%を占める」としています。(※この数値には、Eマーケットプレイスだけでなく、ソーシャルコマース経由の取引も含みます。なお、「1バーツ=3.4円」として試算。)
さらに、Krungsri Researchが2021年にオンライン上で実施をした「ソーシャルコマースにおける商品購入の消費者行動に関するアンケート調査」では、全回答者522人のうち、91%が過去6ヶ月間にソーシャルコマース経由で買い物をしたと回答しており、商品購入時に最も利用するソーシャルメディアは、「Facebook」が86%、次いで「Line」が68%、「Instagram」が35%の順となりました。
商品購入時に最も利用するソーシャルメディア
「ソーシャルコマースにおいてよく購入する商品は何か?」という質問に対しては、「洋服」が64%、次いで「食品・スナック・飲料品」が50%、「化粧品・香水・美容品」30%という順となりました。
また、一回当たりの平均購入金額は、「501~1,000バーツ(約1,700~約3,400円)※」が39%、次いで「100~500バーツ(約340円~約1,700)※」が38%という順になりました。(※「1バーツ=3.4円」として試算)
[左]1回当たりの平均購入金額、[右]購入商品の種類
ソーシャルコマースにはどんな企業が参入しているのか
Krungsri Researchによると、タイのEコマース市場でソーシャルコマースに参入している企業は、99.9%が中小企業であり、残り0.1%が大企業であるとされています。
中小企業がソーシャルコマースを利用する理由としては、SNSがすでに広く普及していること、操作性が良いこと、SNSによる顧客からの問い合わせにも直接対応できること、中小企業にとって参入ハードルが低いこと等があるようです。
一方で、Eマーケットプレイスは、出店料等のコストがかかるほか、競争も激しいため参入をためらう企業も多いようです。
各販売プラットファームにおける参入事業者の企業規模
タイのソーシャルコマースの今後
タイでソーシャルコマース市場が大きく成長している背景には、タイのSNS人気の高さあります。
ビジネス・ウェブマガジンであるPositioningのデータによると、オンライン上で買い物するタイ人の40%は、商品の問い合わせや購入にFacebookを利用しています。販売業者とオンラインで直接やり取りできるなど利便性も高く、今後も継続的な利用がされると予想されます。このような理由から、タイでのソーシャルコマースは、将来的に更なる成長が見込まれています。
Facebook タイランドの予測によると、今後3~5年の間に、中小企業の市場シェアを獲得するために、現在ソーシャルコマースを利用していない大企業など新たなプレーヤーの参入が見込まれています。
最後に
普段からSNSをよく使う方にとっては、ソーシャルコマースを通じての商品・サービスの取引は、今までのEコマースよりも便利で使い勝手が良いです。
例えば、従来はSNSで興味のある商品を見つけた場合、その商品をウェブで検索してEコマースサイトで購入。あるいは実店舗へ出向いて購入するのが常でした。しかし、ソーシャルコマースの登場により、SNSで見つけた商品を別の販売チャネルに移ることなく、同じSNS上から直接購入が可能になりました。この点も、SNSが好きなタイ人にしっかりマッチしたサービスだと言えます。
ソーシャルコマースは、タイ人の性格に合った様々なメリットがありますが、その一方で安全性や、信頼性、商品の支払い等、特に取引の安全性の面で問題点もあります。将来的な一層の成長のためにも、この問題についての早期改善が期待されます。
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鳥取県東南アジアビューローの運営法人(鳥取県が業務委託)
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