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タイ王国及び東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

~ベトナムで高まる環境意識と見直されるエコ商品~

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの柴田です。

 使い捨てプラスチックが引き起こす多くの環境問題を契機として、「セブンイレブン」は2019年から紙ストローと生分解性バイオポリマーのストローを導入し、「スターバックス」でも2021年9月から全ての商品で紙ストローの導入を決めるなど、日本国内では「脱プラスチックストローの波」が広がりましたが、それは発展途上国のベトナムでも同様です。
 ベトナム国内に55店舗を構える大手カフェチェーンの「Cong Caphe(コン・カフェ)」もその一つであり、2019年からプラスチックストローを廃止し、全て紙ストローへと変わりました。「ストローだけ変えてもどうなの?」といった声が聞こえてきそうですが、身近な物が変わることにより使い捨てプラスチックの大量廃棄を減らせる環境意識を持つことはとても大事なことだと思います。変化を遂げている最中のカフェ大国ベトナムにおいて、紙ストロー以外にも面白い素材を使ったユニークでエコなストローが次々と生まれ、ベトナム国内のカフェの他、海外へと輸出されています。

 今回の報告書では、そのような紙以外の新素材のストローについて紹介していきます。


【目次】
  1. 島での植栽もできる「竹ストロー」
  2. ベトナム環境ファンドからの資金調達を果たした「草ストロー」
  3. 世界第5位の生産量を誇る米から製造された「米ストロー」
  4. 最後に

紙ストローへ変わった大手カフェチェーン
紙ストローへ変わった大手カフェチェーン


島での植栽もできる「竹ストロー」

 海外からも多くの観光客が訪れるベトナム南部のリゾートエリア・フーコック島では、面白い取組が行われています。
 国際ホテルチェーンの「ラディソン・ブル・リゾート・フーコック」では、2019年からホテルの敷地内に竹を植栽し、近い将来、ホテル内で採れた竹を加工した「竹ストロー」を利用客に提供しようとしています。
 また、ベトナム国内で最も有名な「竹ストロー」を製造している会社と言えば、ハノイにある「MAO MEO(マオ・メオ社)」です。
 2019年に発売が開始された同社の「竹ストロー」は、ベトナム国内はもとより、ドイツの食品安全基準を満たした仕様となっており、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、ハンガリー、スウェーデンなどヨーロッパの様々な国に輸出され、多くの飲食店やホテルで利用されるベトナムを代表する「竹ストロー」になりました。


ホテル「ラディソン・ブル・リゾート・フーコック」の敷地内に竹を植栽する支配人のジャンセン氏 マオ・メオ社の「竹ストロー」
[左]ホテル「ラディソン・ブル・リゾート・フーコック」の敷地内に竹を植栽する支配人のジャンセン氏、[右]マオ・メオ社の「竹ストロー」


ベトナム環境ファンドからの資金調達を果たした「草ストロー」

 南部のメコンデルタ地方ロンアン省で栽培されるカヤツリグサ科の多年草「アンペラ」から「草ストロー」を製造する「Green Joy(グリーンジョイ社)」は、ベトナムの環境ファンド「グリーンベトナムファンド」から40億VND(約1,870万円)の資金調達を行いました。
 同社の「草ストロー」は、生産開始から8か月間でベトナム国内のレストランやホテルなど計100か所余りに供給されており、この期間の売上高は8億3,000万VND(約390万円)に達しました。現在では、米国やヨーロッパにも大量に輸出され、昨年の売上高は約1,500億VND(約7億円)を超える人気商品となっています。


グリーン・ジョイ社の「草ストロー」
グリーン・ジョイ社の「草ストロー」


世界第5位の生産量を誇る米から製造された「米ストロー」

 国連の調査によると、ベトナムでは年間4,345万トンもの米が生産されています。ベトナムでは米粉を使った食べ物が多く、日本人にも知られている米粉の切り麺「Pho(フォー)」以外にも、同じく米粉の押し出し麺「Bun(ブン)」や米粉を蒸して作る「Banh Cuon(バイン クン)」と呼ばれる米粉料理が存在することから、古くから米の生産に重点が置かれてきた地域性をうかがい知ることができます。
 そのようなお米を使ったストローもいくつか製品化されています。ホーチミンから南西部のカンボジアとの国境に面しているドンタップ省に工場のある「Hung Hau food(フン・ハウ・食品社)」では、「米粉ストロー」を製造しています。常温で約1年半保管することができ、常温の水や冷水であれば2時間ほど浸しても形状変化はありません。色は、お米本来の白以外に、野菜から抽出した天然着色料を加えた黒、オレンジ、緑、紫などがあり、そのまま安全に食べることができるほか、ゴミとして捨てた場合でも3か月以内に自然分解されます。
 また、米粉以外にもじゃがいも、バナナ、キャッサバなどの天然野菜のでん粉から製造されたストローもあります。野菜でん粉ストローは油で揚げたらスナック菓子のようにになり、お湯を注げばインスタントヌードルとして食べる事ができるエコ商品となっています。


フン・ハウ・食品社の「米粉ストロー」
フン・ハウ・食品社の「米粉ストロー」


最後に

 プラチック製ストローは安価で丈夫、容易に調達できるという特徴で普及し、特にカフェ、レストラン、ホテルなどでは不可欠なものだとされてきました。しかし、何百年経っても自然分解される事はありません。さらに、プラスチック製ストローの製造や廃棄の過程では、石油や天然ガスなど燃料起源で発生する二酸化炭素を排出するため、気候変動への影響を与え続けています。
 これまで、ベトナムにおいてもプラチック製ストローはほとんどリサイクルされず、燃やされたり、そのまま海へ流されていました。近年、世界中でこの問題への関心が高まっており、解決するためにプラスチック製ストローの廃止やプラスチック製ストローの代用品などが登場しています。
 ここで取り上げた各社のストローはごく一部であり、こういったエコ商品はこれから益々増えていくことが予想されます。自然素材が多く、コストも比較的安価で製造できるベトナム市場においては、世界へ輸出できるチャンスでもあると感じます。


ストローング社の「米粉ストロー」 ハッピータートルストロー社の「米粉ストロー」
[左]ストローング社の「米粉ストロー」、[右]ハッピータートルストロー社の「米粉ストロー」


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