日系企業との取引に関心のあるタイ企業インタビュー
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
タイは南北に約1,860kmと縦長の国土ですが、南部の主要産業として有名なのがゴムの生産です。タイは長年、生産地・輸出国として常に上位を誇り、2010年ごろには生産量で世界1位になりました。今回はタイのゴム・プラスチック成業界で日系を含む海外との取引に積極的なタイ企業「S.K.ポリマー株式会社」の大金賢介 International Salesのインタビューをお届けします。
会社概要についてお聞かせください。
SK Polymerは1991年に設立された100%タイ資本の企業になります。
事業としては、ゴムおよびプラスチック部品の成形です。従業員は合計で600名程おります。タイ国内に、グループ会社を含めて、医療工場、家電工場、オートモーティブ工場をメインに、ブランディングと呼ばれるB TO C製品の製造工場と金型工場、ゴム材料の練り工場の計6つ工場を所有しています。部品の成形機の数は、4箇所のプラントにある全てを合計して119台あり、うち4台のみがプラスチックですので、ゴムの成形をメインでやっている会社でございます。
我々はワールドクラスの企業として、ポリマー製品を通じて革新的なものを世に提供し、人々の生活をより良くする、というポリシーを掲げて活動しています。
大金様の所属部署や担う役割などを含め自己紹介をいただけますでしょうか。
私自身は、2017年後半にSK Polymerに入社をしました。弊社のお客様の半分以上が日系企業様になりますので、日本および世界中の日系企業に対して拡販をするために、海外営業部に所属をし、そこで責任者をしております。
2008年に大学を卒業後、タイのセキュリティサービス関係、自動車部品製造業の会社での勤務を経て、商社を起業しました。その活動時に、大学時代のタイの友人から、経営者がとても素晴らしいから一度会いに行った方が良いと紹介を受けたのがSK Polymerでした。実際に弊社会長、副社長とお会いし話をしたところ意気投合し、当時経営をしていた商社の事業のお客様をSK Polymerの子会社の商社に事業を移して、私自身はSK Polymerの海外営業部で仕事をしないか、というオファーを受け、当時の私の会社のお客様へ説明の上、入社というのが経緯になります。
いずれは弊社も日本の支社を作る予定ですので、そこもまた1つ、私がSK Polymerで仕事をしたいと強く思ったきっかけです。
お客様は日系企業が多いとのことですが、大金様以外に日本人スタッフの方はいらっしゃるのでしょうか?
現在、日本人は私1名で活動しております。既存のお客様は日系企業が多く、日系企業の市場のポテンシャルが大きいので、日本人の採用活動はしています。ですが、コロナ禍の影響もあって人の流れが少なく、人材募集はしているのですが、思うように話が進んでいないのが現状です。
実務の部分では、在タイ日系企業のお客様の窓口はほぼタイ人が対応しています。なので、正直なところタイ国内の営業に関してはタイ人がメインで動いています。日系企業の日本人の幹部の方とお話をするきっかけがあれば、私がお伺いして営業というかたちをとっています。ですが、私のメインのミッションは、日本および世界中の日本企業への輸出をより伸ばす事とはっきりとオーナーと話しておりますのでそこに注力をしております。
大金様の所属する海外営業部にはスタッフは何名ほどいらっしゃるのでしょうか?
海外営業部の社員の数は4人と少数精鋭のため、工夫を凝らして活動をしております。営業として一番、会社に対して売上というインパクトを与えられるのは、ポテンシャルの大きい海外の新規のお客様から、新規の部品を受注することと考えています。そこに海外営業部の4人が注力をして、既存の海外のお客様については、各事業部に営業がいますので、基本的に彼らが担当として日々の業務対応をしています。世界中に支社を持つような大手企業様でも、タイの担当営業がメインパーソンとして、タイ国内は当然のこと、海外の案件に関しても調整であるとか、様々な業務を行っています。我々海外営業部は、既存のお客様との対応は基本的には言語的な問題のサポート、もしくはイレギュラーな案件での対応、と少しその辺が特殊かもしれないですけれど、やってみると非常に合理的だな、と感じます。もちろん新規のお客様も既存のお客様も大切に、誠心誠意、対応させて頂くのが大前提です。
事業内容及び主要製品について教えてください。
現在、弊社は「OEM」、「OBM」、「ODM」の3本の事業体で営業をしています。
「OEM」は、お客様から図面や仕様をいただき、そのとおりにものづくりをさせていただきます。
「ODM」は、お客様からコンセプトをいただき、コンセプトに合わせて製品のご提案、開発段階からお手伝いをいたします。例えばプリンター用のインクは日々進化しています。インクの詳細についてはプリンターメーカー様のノウハウのため開示はされませんが、進化を続けるインクにマッチしたゴムでないといけない、ということで何種類もゴムの種類を作って、開発段階から提案をしたりもしています。
最後に「OBM」ですね。SK Polymerのブランドとしてものを作っております。こちらは、B TO Cなどで多い形態となっております。
自社ブランドの製品で、今営業として非常に力を入れているのが、トラフィックコントロールシステムと我々は呼んでいますが、道路交通や鉄道関係で使われるゴム製品です。天然ゴムはタイが大きな原産国になっておりますので、これを材料に用いた製品を世界中に輸出しようと考えております。
ラバースピードバンプと呼ばれる、駐車場によく置かれるスピードを落とさせるものですが、オンラインで日本での末端価格を見ると2~3万円程なのですが、弊社の製品は大変安い価格でご提供できますので、まだまだ世界中でチャンスがある製品かと思っています。
その他ですと、電車のプラットフォームのギャップフィラーですね。こちらはバンコク市内とスワンナプーム国際空港をつなぐエアポートリンクの各駅に設置しております。エアポートリンクの駅では落下事故が非常に多いということで、我々からエアポートリンク様にご提案させていただき、ゼロから設計して設置まで協力して、させていただいたものになります。
現在のお客様はどういった産業や国の企業様が多いでしょうか。
売上で見ると、2020年の結果としては1,736万ドル、日本円にして20億円弱の売上でございました。この内、日本に対する直輸出が5~6%で1億円強ですね。ただ、他にも我々のお客様はタイ国内の日系企業様が多く、お客様がタイ国内で組立てた製品を日本やその他の国へ輸出を多くされておりますので、最終的に我々の部品の半分くらいはおそらく日本を含む海外に行っているのではないかと思います。
産業別で見ると、2020年はコロナ禍でしたので、家電が非常に好調でした。全体の売上で見ても家電が70%、続いて自動車が17%ですね。自動車も蓋を開けてみると2020年は非常に調子が良くて、2021年も同じレベルで推移すると思います。ただ一方で、自動車はハーネスと半導体の流通の関係で若干スローダウンしているという現状もございます。逆に医療向けは、2020年の数字は思っていたよりも伸びなかった印象です。コロナの影響で、世界中で病院に通院する方が減少しましたので、コロナの治療に関わる医療パーツは売れているようですが、それ以外の手術用の備品や治療用具などは非常に苦戦をしているのが正直なところです。その他、ブランディングが5%程度になります。ブランディングはもともと売上の範囲は狭いのですが、これから伸びていくであろうと計画を立てております。
世界中のお客様については日本を中心に直輸出しているお客様も多く居らっしゃいます。他の国だと、アメリカが非常に伸びており、アメリカ企業からも非常に多くのゴム製品をご購入いただいています。あと伸びているのは中国ですね。2020年の輸出に関しては、中国とアメリカが非常に伸びたという結果が出ております。他にも、最近ではブラジルや南アフリカなど地球の反対側からのオーダーも増えてきていますので、今後の海外営業部の活動としては、そういったところにも実際に行って、展示会にブースを構えることも考えております。
産業、製品によって世界中のお客様からのご要望にお答えしてものづくりをさせていただいておりますので、日本企業とのビジネスのみでなく世界中のお客様と取引が可能です。
2018年の医療工場のオープンを皮切りに、2024年までに更に3つの工場の新設を予定しているかと存じます。こちらも踏まえて、事業ビジョンをご教示いただけますでしょうか。
現在の弊社の工場はバンコク周辺の様々な場所にあるため、今後工場を一箇所に建設、量産移管をする予定です。建設予定の土地は購入済みで、現在工場の建設待ちの状態です。弊社では、来年再来年中に上場する予定でして、現在その申請等の手続きに追われています。上場を機に、複数の工場を新設する予定です。
当初の計画から遅れはでているものの、プランとしては進行中でございまして、画像左から金型と材料の練の工場を今後一緒にして、大規模な工場にしようと計画しています。その次が自動車とブランディングの工場を一緒にしようということで、元々2つの工場を1つにしようと計画しています。家電工場は元々扱っている量が多いので独立させて一箇所に集積する予定です。一番右にあるのが事務所で、営業部や開発部などをこちらに集約する計画でおります。
新たに建設する施設の中には研究所もアイデアとして入っております。お客様に言われた通りのものを作るだけでなく、プラスアルファで我々も開発のお手伝いをできるような体制にしていこうという考えでおります。
今回は、2018年に完成された医療工場にお邪魔しておりますが、今後、特に医療分野に力を入れていこう、といったご意向はありますか?
そうですね。全体の売上の割合として医療部品を上げていきたいという意向があります。
既に自動車と家電はレッドオーシャンで、価格に関して非常に競争が激しい分野です。付加価値をつけるには、より厳しい品質の求められる製品レベルの医療部品を増やす、もしくは自社独自の開発品を増やしていかないと、会社として大きな成長を見込むのは難しいのではないかと考えております。
また、根底にある弊社会長の特徴的な考え方として、ポートフォリオと同じで、お客様が100いて、全てタイの日系企業、タイ企業に偏ると、何か災害など起きた時に一気にゼロになってしまうので、できるだけポートフォリオを細かく分けるべきだ、と。家電、自動車、医療、ブランディングといった業界を分けた上で、更に国もアジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアやアフリカなど色々なところに分散させて、できるだけ色んな方向でリスクヘッジをしていく事を強く方針として持っています。
近年、環境問題やSDGsへの関心が高まっておりますが、こちらに関連して現在、取り組まれている活動等あればご教示ください。
環境への取り組みとして、弊社のオリジナルブランドでシリコンストロー『ReServe』の製造販売をしております。タイでは大量に海に投棄されているストローが問題視されております。ゴムメーカーとして、どうやったら環境保護に協力できるか、ということで、使い捨てではないシリコン製のストローを作りました。強度的に300回程は利用いただけます。これは弊社として、環境保護の観点から開発、生産、販売までしている商品になります。現在アメリカでも法人登記をして、Amazon アメリカでも販売を開始しています。現在のラインナップは2種類ございまして、普通の飲み物用のストローと、直径の大きいタピオカドリンクやスムージー用のものがございます。
まだまだ、色々と市場から要望はいただきますので、今後改善を重ねながらやっていくものになります。
その他にもSDGsは、来年以降会社としても重要なテーマとして、いろんな視点から問題解決には取り組んでいきます。その辺りはこれからアップデートがあると思います。
新型コロナ収束後の製造業の方向性やビジネスチャンスについてご意見をお聞かせください。
現在、Peerutを責任者に抗菌ゴムを新規で開発しています。その材料を使えば、製品の表面にコロナウイルスが付着せず、菌が手に移ることがないため、感染予防になるということで現在材料を開発しています。
使われ方としては、おそらく医療ではなく、自動車とか家電、例えば自動車のハンドルなどは、日本の方はあまりやられないですけど、タイの方は都度ハンドルまで消毒をする方も多いようですので、そういったところの需要に合わせたものと想定しております。国によっては感染予防や対策方法については感覚が異なりますので、その点でこの材料が完成すれば色々とチャンスが有るのではないかと考え開発を進めています。
そういった製品や材料の開発といったR&D機能は自社で持っております。複数の事業部に配合設計をする人間がおり、彼らが定期的にZOOM会議などで話し合いをしながら開発を行っております。
貴社の強み及び製品のセールスポイントをご教示ください。
日本基準のものをタイの企業価格で購入できるというのは1つ大きなメリットだと思います。弊社は、永続的な改善活動を行い製造コスト低減に努めています、また外国人社員は私のみですので、そのようなところでコストへの差は日系企業様とは明らかに出てくると思います。
また、弊社の特徴としまして、ゴムの練りの工程から対応しております。ゴムは実際の原料だけですと、イメージされるような伸びて縮む作用はしません。加硫と呼ばれる工程の中で、加硫剤と呼ばれる、ゴムとゴムの分子を連結させるものを混ぜないといけません。ケーキのレシピに似ているのですが、その作業の分量や温度、焼き時間などが非常にデリケートといいますか、細かい作用が出てくるものでして、そういった練りを自社でやることによって、ノウハウを蓄積してきた会社でございます。
グループ企業にはThai Rubb Tech(タイラブテック)という金型メーカーや、Polymate(ポリメイト)という国内の運送およびIT企業として活動している会社があります。Polymateは、工場内で使われる工場管理関係のアプリケーションを自社で開発して試用し、将来的には販売する計画で現在活動しております。そういった意味では、グループ企業と併せて、ゴム関係はワンストップで完結するようになっていますので、幅広いお客様からの要求に答えられる体制が整っております。
「TQM」という言葉があり、総合的品質管理という経営手法の1つなのですが、もともと弊社会長が会社作りをする際に、このTQMの考え方を非常に多く取り入れております。このTQMについては日本の教授様にご教授をいただいたため、非常に日本の企業に近い、日本企業とビジネスのしやすい体制になっているのではないかと思います。
その他、特にお客様にお話させていただいているのは、IOS13485というものです。医療関係の量産部品のISOでして、弊社ではこれを2020年に取得いたしました。これによって受注ができる医療関係の製品の幅が広がるため、世界中にアピールをしており、これに対してお問い合わせをいただいている状況です。
タイ企業との商談に臨む日本企業が事前に用意すべき資料や、注意点などアドバイスはございますか。
日本企業との商談会に参加していて思うのは、商談をご希望される製品の図面や仕様がその場で用意されていると話がスムーズです。また、数量や価格が、これくらいがご希望と提示いただけると具体的に話が見えるのでよろしいかと思います。
あとは、定期的にコミュニケーションを取ることが大切かと思います。タイ企業も慎重なところがあるので、国を越えてお仕事をするには、長い場合には、年単位で対話をしていかないと、中々実現していかないのかな、という印象はあります。
最後に、取引を希望されている産業など希望されているお取引の詳細についてご教示ください。
弊社では現在、特に医療分野のお客様を探しております。家電と自動車に関しては、材料や製品デザインの開発からのお手伝いをさせて頂き、付加価値をお客様と一緒に考えていけるような製品を増やしていこう、ということで体制を整えております。
様々な産業、会社でゴムが使われておりまして、また現在日本国内、世界中で調達に対して原材料含めて問題が起きているところが多いので、時期的には変化の中チャンスと捉えて活動を続けて参ります。
【企業概要】
企業名:S.K. Polymer Co., Ltd.
住所: 166 Soi Thiantalay 20, Bangkhunthian-Chytalay Rd., Samaedum, Bangkhunthian, Bangkok 10150
Tel : (+66) 2-892-1092
Email : ogane@skthai.com
URL (英語) :https://skthai.com
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タイを中心に、ベトナム・インドネシア・インド・メキシコにて主に日系中堅・中小企業様の海外進出や進出後の会計税務法務を中心とした運営支援業務を行っております。
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