令和5年度の当初予算編成等に当たっての留意事項

令和4年10月20日

総務部長 

 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、本県では喫緊かつ最優先課題である物価高騰・円安対策を機動的に講じながら、第2期総合戦略「鳥取県令和新時代創生戦略」に基づき、ポストコロナを見据えた地方創生の実現に向けた環境づくりに取り組んでいるところである。

 本県の令和5年度当初予算の立案にあたっては、新型コロナや物価高騰・円安の影響を受けた県内経済・雇用・社会を回復させ、「とっとり再興」に向けた道筋をつけるため、感染症に強い地域づくりや物価高騰・円安への対応に最大限取り組むとともに、新たな経済成長の原動力となる県内経済のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速や脱炭素社会に向けたグリーン・トランスフォーメーション(GX)の推進、賃上げ環境の整備・学び直しへの支援、ワーケーションなどの関係人口の創出や移住対策、強靭な防災基盤の構築などの施策を展開する必要がある。

 その際、将来への負担をできる限り増やすことなく、持続可能な県政運営を行うため、行財政改革の推進やスクラップ・アンド・ビルドの徹底など、引き続き、事業の大胆な見直しと重点化を図ることにより、「財政誘導目標」を堅持する。

 なお、令和5年度当初予算については、いわゆる骨格予算編成とするものの、本県を取り巻く情勢の変化に機敏に対応し、必要不可欠な予算については積極的に計上することとする。

ついては、以下の事項に留意されたい。

  

1.予算編成に係る基本的な考え方


  

(1)県財政を取り巻く厳しい状況

 令和5年度地方財政収支見通しでは、地方税等の回復を反映して、実質的な地方交付税は減少する仮試算となっており、税収基盤が脆弱な本県では、地方交付税を合わせた一般財源の動向は極めて不透明である。このため、依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている中で、今後も本県では厳しい財政運営を強いられることを予想しなければならない状況であり、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要性が高まっている。

(2)物価高騰・円安への対応など切れ目のない経済・社会対策

 国は、10月末までに物価高騰や賃上げへの取組、円安を生かした「稼ぐ力」の強化、「新しい資本主義」の加速、国民の安全・安心の確保を柱とする総合経済対策を策定する予定である。本県としても、関連する国の補正予算の情報収集を進めるとともに、この財源を活用して前倒しで計上すべき事業については、年度内の補正予算編成について機動的に対処していくこととする。

(3)新型コロナ感染症対策とポストコロナ時代に向けた取組

 今後の新型コロナの感染状況や国の方針や予算動向等を注視しつつ、新たな感染拡大に備えた医療・検査体制の整備と感染防止対策の徹底に取り組むとともに、DXの加速、GXの推進、持続的な県内経済の構築に向けた賃金上昇と生産性向上への取組、地方への新たな人の流れの促進、インバウンドの再開を含む観光需要の本格回復を踏まえた対策、農林水産業、スポーツ・文化芸術の振興、子育て環境のさらなる改善、学力向上の推進など、現状の課題を解決するための取組だけではなく、危機的状況をチャンスに変えるような前向きな施策や未来への投資の視点をもって事業を組み立てること。

 また、近年、激甚化、頻発化している自然災害に対応するため、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を踏まえ、国の有利な財源を活用しつつ、災害に強い地域づくりを推進すること。

 さらに、喫緊の課題である公共施設等の老朽化対策については、公共施設等総合管理計画及び個別施設計画に基づき、財政負担の軽減化・平準化や公共施設等の最適な配置を実現するため、有利な財源を最大限活用して、長寿命化等に取り組むこと。

 なお、急速かつ強制的に社会の非接触化が進んだことにより、対面を前提としない、場所にとらわれない、密を避けるなどの不可逆的な変化が起きていることを踏まえ、イベントの会場設営、出張の必要性等を含めた事業実施方法の検討を行うこと。

(4)デジタル化の推進・Society5.0社会の実現やICT技術の活用による事務の効率化

 コロナ禍により遠隔・非接触などのデジタルツールが普及しているところであるが、デジタル化やICT技術の進展により、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、少子高齢化や地方の過疎化など地域の課題や困難を克服する、Society5.0社会の実現に向けて取組を進める必要がある。

 こうした中、電子申請の更なる活用や業務のペーパーレス化、AIやRPAといったICT技術を活用することにより、一層の業務の効率化を行い、働き方改革や県民サービスの向上に資する取組について積極的に検討するとともに、県内産業における先端技術の活用や行政手続きのデジタル化などに取り組むこと。

(5)SDGsの理念を踏まえた施策の推進

 少子高齢化時代において、地域が急速な人口減少や地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保するには、人々が安心して暮らせるような、持続可能なまちづくりと地域活性化が重要となってくる。

 本県においても、循環型社会の推進などの環境施策や、健康づくり、地域コミュニティ活性化による持続可能な地域づくりなど、地域課題の解決の促進に向けて、全ての分野において、積極的にSDGsのゴールを意識した事業の組立を行うこと。

(6)徹底した事業見直しと重点化による重要施策の積極的な推進

 県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、予算要求にあたっては、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く、効果的な事業の立案を行うこと。その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。

 また、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について、検証可能な成果指標を設定するとともに、費用対効果、必要性・緊急性等を考慮した上で、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択をこれまで以上に徹底すること。

 なお、事業目的の明確化及び成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な継続事業については、廃止を検討すること。

(7)多様な主体との協働・連携

 今後、複雑化・多様化する地域課題に対応していくため、行政機関だけではなく、それぞれが持っているネットワークの活用を含め、NPO、企業、大学などの多様な主体との協働・連携を進めること。

 この観点を踏まえ、県民サービスの向上やコスト削減の観点から効果が期待できる場合は、アウトソーシングや民間活力の活用、公民連携による事業実施について検討するとともに、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。

 また、NPO等の民間事業者からの県と協働して行う地域活性化や県の課題解決につながる事業提案、相談等に対応するため、「民間提案事業サポートデスク」に寄せられた提案・相談に対する「鳥取県協働連携会議」での検証結果を可能な限り反映した要求を行うとともに、協働連携の具体的な手法の検討に当たっては、令和4年4月に策定された「鳥取県協働連携ガイドライン」を参考にすること。

 なお、NPO等との協働・連携事業を立案する場合は、所要経費の積算において、実施する事業の内容に応じて人件費を的確に見込むこととするほか、事業実施に当たっての諸手続などで相手方に過度な負担を課すことのない仕組みを検討すること。

(8)鳥取県産業振興条例、障害者優先調達推進法、鳥取県手話言語条例及びあいサポート条例、障害者差別解消法及び障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法等を踏まえた対応

 県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。

 また、障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。

 さらに、「鳥取県手話言語条例」や「あいサポート条例」及び令和4年に制定された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置や点字版及び録音版の広報物の作成など必要な経費を見積もるなど、障がい者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮すること。

 加えて、令和3年に障害者差別解消法が改正され、障がいのある人から、社会的障壁を取り除くための配慮を求められた場合に、負担が重すぎない範囲で対応する、いわゆる合理的配慮が3年以内にすべての事業者に義務化されることとなったことから、県が事業者に委託して開催する研修やイベント等においても、今後合理的配慮が義務化されることを見越した取組が進められるよう、事業内容を検討すること。

 なお、予算要求に当たっては、ジェンダー平等実現の視点をもって事業内容を検討すること。

  

2.予算編成に当たっての留意事項


  

(1)政策戦略会議と「知事一発査定」

 予算査定に先駆けて「政策戦略会議」等を開催し、戦略的課題や部局横断的な課題に対して、幹部間の連携により方針を検討することとし、その過程においても、県民・団体等の意見交換を積極的に実施するとともに、部局を超えた議論を行うこと。

 政策戦略会議において検討する「政策戦略事業」については、年内は立案段階として十分な議論・検討、事業化に向けた論点整理を中心に行う期間に充て、予算要求を行うこと。なお、働き方改革の観点から、「知事一発査定」を実施し、査定は知事の一段階だけとする。

 また、1月を「政策戦略事業」を中心とした予算編成に充てるため、これを除く「一般事業」については先行して予算要求を行い、1月に計上案をホームページで公開するとともに、「一般事業」の査定においても、政策戦略事業同様、これも知事レビューにおいて一発査定とする。

 なお、例年、継続事業で政策的議論の必要性が低い事業についても政策戦略事業として要求されるケースがあることから、効率的に予算編成作業が行えるよう、政策戦略事業については真に政策的議論が必要なものに限定して要求すること。

(2)作業の効率化、省力化による働き方改革の実現

 県庁自ら働き方改革に率先して取り組む必要があることから、予算要求業務においても全庁を挙げてカイゼン、時間外勤務の縮減に取り組むこと。

 また、予算要求業務における省力化、負担軽減を図るため、予算要求資料について真に必要なものを厳選し、データベースによる情報共有や既存資料の活用を徹底すること。

 さらに、予算要求書と議案説明資料については、原則として同一の内容とし、議案説明資料のオートメーション作成機能(予算要求書からワンクリックで転記)の活用を図ること。

 加えて、財政課長聞取は原則行わないこととし、財政課が行う要求課からの聞取については、オンラインを活用するなど、効率化を図ることとする。要求課においても、例年どおりの前例踏襲による無駄な作業が生じることのないよう、資料作成の省力化や作業の効率化に努めること。

 なお、契約事務の省力化を図る観点から、現在、単年度で契約している保守管理委託契約等についても複数年契約への移行が適当と考えられる場合には、債務負担行為を活用すること。

(3)「県民とともに作る予算」

 本県の予算は「県民とともに作る予算」であり、「鳥取県民参画基本条例」の趣旨を踏まえ、事業の企画立案に当たっては、積極的に現場に出向き、現場を担う方々や県民の皆様からの声、各種団体からの意見や提言に素直に耳を傾けながら事業を検討すること。

 特に、地方創生を先導するための効果的な対策を具体的に打ち出すためには、現場の方々の意見や提言が極めて重要であることから、様々な声に対して県の立場で政策目的を明確化し、事業の効果性も十分念頭に置きながら検討すること。

 また、議会からの指摘や提言などを適切に要求に反映すること。

(4)市町村の役割への配慮

 元来、県と市町村はパートナーであるとともに、市町村は住民に一番身近な地方公共団体であり、住民生活に密着した行政を行っていることに鑑み、県の施策実施に市町村の協力をあおぐ際にはその自主性を尊重すること。

 特に、各市町村の地方創生が実現し、さらに県全体の地方創生へとつなげていくためには、県と市町村がこれまで以上に連携・協力して取り組んでいくこと。

 これらを踏まえ、市町村を通じて実施することが現実的、効果的と考えられる施策については、市町村における適切な判断に基づき予算措置等が円滑に行われるよう、令和5年度当初予算編成に当たり、十分に事前の相談・調整を行うとともに、市町村のあるべき役割に応じて、一定の負担を求めること。

 なお、既存施策であっても、事業の実施状況や現場、市町村からの意見等を踏まえて総点検を行い、市町村の関与や負担のあり方について検証を行うこと。

(5)国の制度・施策に関する情報収集の徹底

 国の予算編成は、「令和5年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」において、新型コロナ対策等を含めた重要政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求を行うこととしている一方、国もこれまで以上に厳しい財政状況の中での予算編成であり、事業によっては抜本的な見直しや優先順位の厳しい選択が行われることも想定される。

 これを踏まえ、様々なチャンネルを使って国の動向等についての情報収集・分析を徹底した上で、的確に予算に反映すること。

 また、国庫補助金などの有利な財源措置を積極的に活用するとともに、できる限り適切に見積もりを行った上で要求するとともに、活用可能な国の補助制度等が存在しない場合には、国に対して補助制度の創設を働きかけることなどを検討すること。

(6)財源確保に向けた取組の強化

 未利用財産の処分、環境の変化等により遊休化している県有資産の徹底的な洗い出しと利活用、広告料収入の確保、基金や特別会計の総点検、受益と負担の公平の観点から費用を徴収すべきものがないか等、新たな財源の確保について積極的に検討すること。

 国庫の財源措置のみならず、各種公益法人等からの事業内容に応じた助成も含めて、当該助成制度が本県の実情や具体的事業に適合したものかどうかを十分に検証した上で、積極的に活用すること。

 また、ふるさと納税による地域活性化をより一層進めるため、使い道を明確にして共感を得ることにより事業の原資を募る「クラウドファンディング型ふるさと納税」の活用について、既存事業も含め点検を行うこと。

 さらに、新たな事業を立案する場合には、社会貢献意欲のある企業から原資を募る「企業版ふるさと納税」の活用について、積極的に検討すること。

 なお、有利な助成財源があることのみをもって、必要性・緊急性の低い事業を行うことがないようにすること。

(7)予算要求額及び事業数の精査

 一層厳しさを増した本県の財政状況を踏まえ、予算要求段階から更に経費の精査を図ることとし、経費の積算に当たっては、過年度の決算額や令和4年度の執行状況を踏まえること。

 また、新規事業については関係者との調整を十分に行い、事業ニーズを的確に捉えることにより、過大な見積もりとならないよう留意しつつ、事業内容や目的等が類似した事業の廃止を検討すること。

 なお、特に補助金については、年度途中で安易に補正予算により増額することのないよう、執行方法をよく検討した上で積算、要求すること。

(8)予算編成過程の透明化

 予算要求段階から予算編成過程を公開するため、事業名を含め県民へのわかりやすさを第一に考えた上で要求書を作成することとし、いわゆる行政用語や専門用語、外来語やカタカナ語、略語など、県民にわかり難い表記がないように十分注意するとともに、必要に応じて注釈を加えること。

(9)部局間連携の徹底

 複数部局にわたる課題に対しては、日頃から、部局横断的に施策を展開する意識を持つことが重要である。予算編成においても、単一部局の枠にとらわれない横断的な視点を意識し、部局同士で連携を密にすることにより、新たな県政課題の解決に向けて取り組むこととし、相乗効果を狙った事業や部局の枠を超えた政策パッケージの立案を検討すること。その際、継続事業の整理・統合の視点を忘れないこと。
  

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