防災・危機管理情報


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タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

~タイの電気自動車の現状

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。

 先日日本のニュースでもトヨタが2021年12月に発表したばかりのバッテリー電気自動車(BEV)戦略について見直しを検討していると報道されていました。トヨタは「内燃機関からEVへのシフトはしばらく時間がかかる」と予測し、BEVに絞るのではなく、様々なラインアップをそろえる全方位戦略を描いていましたが、BEVの普及が想像以上のスピードで、競合の新技術投入も早いことが要因のようです。

 

 実際のところ、BEVの普及スピードは想像以上なのでしょうか?タイでは最近、それを象徴する出来事がありました。日本でも来年2023年1月31日から一般向け販売が開始された中国のBYD自動車のタイでのBEV販売開始です。タイでの発売日初日である11月1日、販売店の前には行列ができ、1日の予約台数はタイ全国で2500台にのぼりました。バンコク都内の販売店では発売から1週間で既に予約台数は600台、納車は2023年2月~3月になるとのことでした。タイに一番早く投入された日本の電気自動車は日産リーフですが、これは2018年11月の販売開始から2か月で100台販売、昨年度2021年の年間販売台数61台という実績に比べると、この数年で電気自動車に対する熱量があがってきたことを実感いただけると思います。

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 2022年11月1日に発売開始されたBYD ATTO3

 

 また、予約段階で販売店に行列ができたのはこの20年間で3回、トヨタのソルーナ、ホンダのCIVICハッチバック販売開始時の2回と今回のBYD ATTO3です。過去の2回はガソリンエンジンの車でタイ国内生産、手の届く価格設定が魅力で人気になりました。今回のBYDは中国からの輸入で価格も電気自動車の中ではコストパフォーマンスを感じられる設定ですが、1,199,900バーツ(日本円で約480万円)と決して安価ではありません。何が魅力なのか、実際に販売店を訪れてみました。外装は冒頭の写真通りですが、内装は下記の運転席からの写真通り、安いプラスチック素材ではなく柔らかい素材がダッシュボードやひじ掛け、ドアなどに使用されています。また、専用タブレットで音楽や照明、ナビなどコントロールができます。タブレットは回転するので縦にすれば地図はかなり見やすくなります。また、ドアが開いていることに対するアラートや車の外に障害物など危険がないかについてもこのタブレットに表示し、運転者から死角にある情報も視認できるようになります。

 

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 バンコク郊外バンナー地区にある販売店。タイでは内装が完成していなくても営業開始は日常的。

 

 加えて今回注目を浴びているサービスは、初年度自動車保険無料、8年間もしくは走行距離16万kmまで点検及び部品代無料、本体およびバッテリーの保証、24時間の緊急サポート(外出先で自動車にトラブルがあった場合)、ホームチャージャー及び設置無料、ACポータブルチャージャーも付属など、初めて電気自動車を買おうとする人が不安を感じるであろうサポートがすべてパッケージで提供されていることです。

 

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 事前のプロモーション、販売当日のニュースなどの話題作りが非常にうまくいっている事例です。実際にはテストドライブや最初の500台をラッキーにも入手出来た方々がSNSに感想をUPしていますが、バッテリーの不良や塗装の問題などの投稿もあります。
 
品質や供給の安定する前に、トヨタをはじめとする日本勢の巻き返しを期待したいところです。

 

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 タイ政府は、2030年までに電気自動車を国内シェア30%まで普及させるという目標を掲げています。そのために電気自動車関連の産業誘致のための優遇施策を促進しており、中国メーカーの進出が加速しています。上記の表はタイで販売されているBEVの一覧ですが、車種は増えつつあり、MG(中国の上海汽車グループ)は現行の2車種に加えて3車種目を投入するという発表を、上記表にあるトヨタbZ4X発売日(2022年11月9日)にニュースとしてぶつけてきました。

 タイにおける電気自動車産業は中国メーカーが先行していますが、11月9日予約受付を開始したトヨタのbZ4Xに関して、有名なタイ人インフルエンサーのテストドライブ動画では後部座席の広さ以外はBYDのATTO3を上回るという評価を得ることができました。ここから火が点いて、日本のBEVが成長していくことを期待したいところです。

 

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