2025年2月
◇◆タイ経済 2024年下半期レポート◆◇
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
2024年10月の当報告書で2024年上半期のタイの経済状況が自動車の販売不振などによって低迷しているとお伝えしましたが、半年経った今でもその状況が続いています。今回は2024年下半期のタイ経済と今後の見通しについてレポートします。
【現地概況】
タイの景気を映し出す一つの指標として新車の販売台数がありますが、2023年中ごろから前年同月比マイナスに落ち込み、2024年も全ての月で前年割れとなっています。その主な要因としては家計債務の増加及び金利高によりローン審査が厳格化され、以前ほど簡単に自動車ローンが組めなくなったことが大きく影響していると言われています。価格が比較的安く、荷物の運搬に便利なほか、車高が高くて洪水時でも走れるなどの利点があるピックアップトラックは「タイの国民車」として中低所得層から人気があり、年間40万台ほどの売り上げがありましたが、ローン審査厳格化によって大きな影響を受けて2024年は15万台程度(タイ工業連盟による推計)にとどまる見通しとなっています。
タイ国内新車販売台数
|
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
2023年 |
65,579 |
71,551 |
79,943 |
59,530 |
65,088 |
64,440 |
2024年 |
54,814 |
52,843 |
56,099 |
46,738 |
49,871 |
47,622 |
|
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
2023年 |
58,419 |
60,234 |
62,086 |
58,963 |
61,621 |
68,326 |
2024年 |
46,394 |
45,190 |
39,048 |
37,692 |
42,309 |
54,016 |
(タイ工業連盟の発表を基に作成)
タイの自動車業界は長年日本のメーカーが9割を超す販売シェアを誇り市場を牽引してきましたが、近年ではタイ政府のEV振興策に後押しを受けた中国メーカーの販売攻勢を受け、2023年には日本メーカーの販売シェアが8割を下回ってしまいました。さらにスズキが2025年末までにタイ工場を閉鎖し、タイでの四輪車生産から撤退することを発表、スバルも2024年末にタイ工場を閉鎖、現地組立(CKD)事業を終了して輸入販売に切り替えることを発表、ホンダもタイに2カ所ある完成車工場を2025年内に集約して生産能力を現行比55.6%減の年12万台となるなど、日本メーカーの存在感の低下が続いています。
現地日系企業の動向
盤谷日本人商工会議所(JCC)が1月28日に発表した日系企業の景気動向調査によると、2024年下半期(見通し)の業況感指数(DI)はマイナス11と、2024年上半期(実績)のマイナス21から10ポイント上昇しましたものの、国内の耐久財消費の不振などの要因から引き続きマイナスとなりました。2025年上半期(見通し)は輸出の回復と国内の耐久財消費の回復への期待などから上向いてプラス6の見通されています。※DIは前期に比べて業況が「上向く(上向いた)」との回答比率から、「悪化する(悪化した)」との回答比率を引いた値。業況が改善した企業が多いとプラスになる。
業種別のDIは、「繊維」がマイナス43、「輸送用機械」がマイナス41、「化学」がマイナス34、「鉄鋼・非鉄」がマイナス28などで指数の落ち込みが目立ち、金属・非金属製造関係の厳しい状況となっていますが、一方で「食品」はプラス50と大変好調で2025年上半期の見通しもプラス50となっています。
日系企業が抱える経営上の問題点(複数回答)として、「他社との競争の激化」が66%と第1位になっており、その競争相手(複数回答)としては、「タイ国内の中国企業」と「中国企業からの輸入」が43%で第1位、次いで「タイ国内の日系企業(37%)」と、ここでも中国企業の影響力が大きく増している結果となっています。
日本からタイへの食品関連の輸出は引き続き好調で、農林水産省のまとめによると日本からタイへの農林水産物・食品輸出額は2023 年511 億円で世界8位でしたが、2024年は23.1%増の629億円と、世界7位に上昇しました。内訳は農産物307億円、林産物10億円、水産物312億円となっており、水産物の割合が49.5%と他の国・地域と比べて水産物の割合が高くなっています。
マーケティング調査会社クロス・マーケティングによると、在タイ日系製造企業の半数以上が、今後「ローカルマネジメント層を増やす」と回答している一方で、「日本人駐在員を減らす」が「日本人駐在員を増やす」を大幅に上回っており、今後は日本人マネジメントからローカルマネジメントへ移行が進むものと考えられます。
出典:クロスマーケティング 在タイ日系企業調査
外国企業進出傾向
大手日系企業の動向としては、米中貿易問題に端を発し、中国からタイへの生産移管を進めている傾向がみられます。
・沖電気…中国におけるプリンター生産を終了しタイ工場へ集約
・リコー…米国向け事務機生産をタイに移管
・ソニー…日米欧向けカメラの生産を中国からタイに移管
一方でタイでの成長が目覚ましい中国の電気自動車大手BYDや重慶長安汽車、関連のサプライヤーだけではなく、中国本土からの輸出障壁を回避するために中国の国営企業、上場企業のタイ進出も急増しており、長年日本がトップだったワークパーミット(就労許可証)の保有者数も、中国人(約3万9千人)が日本人(約2万4千人)を抜いてダントツのトップとなっています。
今後の見通し
タイの大手銀行系調査会社のカシコン・リサーチ・センターによると、2025年のタイの国内総生産(GDP)は2.4%と、2024年の2.5%とほぼ同じ成長率で推移すると予想されています。民間消費は政府による給付金事業やショッピング減税などの景気刺激策で短期的には上向くものの、家計債務問題は引き続き危機的状況にあるため、大きく伸びることはないと予想されています。
トランプ政権の影響としては、米国への輸入関税引き上げ前の駆け込み需要が見込めるものの、下半期にはタイ製品に対する関税引き上げが免れないとの見方が強く、総輸出額の17%を占める米国が最大の貿易相手国であるタイにとっては、その影響が心配されています。
鳥取県東南アジアビューロー Tottori-Southeast Asia Trade and Tourism Bureau
担当:辻 三朗 Saburo Tsuji
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