平成18年度賃金・労働条件要求書等に対する交渉の概要
○日時 平成18年11月8日(水) 14時10分~17時25分
○場所 執行部控室(議会2階)
○出席者 知事部局:伊澤職員課長、広瀬給与管理室長、萬井副主幹、三田主事
県職労:片山執行委員長、山中書記長、櫻井書記次長
現企労:谷本副執行委員長、上田書記長 他7名
<概要>
組合:事前に回答をいただいているが、まず、主要な部分の基本的な姿勢や考え方を聞きたい。
県:去る11月6日に執行部に対し、回答書を渡したときにも基本的な考え方を説明しているので、新規に要望されているもの、県として重点だと考えられるものについて、要点を簡潔に説明させていただく。
(要望書の1(1)~(3)、1(6)、2、3(1)、3(3)、4(3)、8(6)~(7)、9、12(3)1)、14(2)、14(3)7)について、回答書のとおり説明)
要望書のリンク(PDF,552KB)
回答書のリンク(PDF,913KB)
組合:例年、回答に併せて県からの追加提案事項があれば、提案されるが、今回はないということでいいのか。
県:現在のところ、具体的に提案するものはない。
【1(1)について(給与特例措置)】
組合:カット率については、財政状況を踏まえて検討を行うということであったが、具体的にどの程度を考えているのか。
組合(現企労):昨年、給与水準見直しが行われ、平成19年度からは段階的に給与が切り下げられる。現業職員についても、県の財政状況に協力していくということから、給与カットについては合意したところだが、生活環境を変えなければならない厳しい状況の中でのことであり、是非ともカットゼロとするよう組合員の強い要望があることを伝えておく。
県:来年度予算の編成を踏まえて検討を行うこととなるので、現在のところ具体的には申し上げられないが、県としても、現在の給与をカットしている状況が通常の状態であるとは考えていない。来年度予算の編成を踏まえて検討を行うこととなるので、具体的な数値は現段階でお示しできないが、財政状況を踏まえ、現業に限らず、緩和していく方向で最大限努力していきたい。
組合:カット率を圧縮する意識があることは評価させていただく。
昨年の交渉の時に県財政の将来計画を議論するためにも、財政状況をしっかり示すことを、当時の参事監が約束されたが、引き続きわかりやすい決算書の公表等関係部局に働きかけて欲しい。
【1(4)について(総合的人事制度の構築)】
組合(現企労):能力実績主義への移行については、現在の社会情勢等からもやむを得ないと考えているが、現業職は、新規採用がなく年齢層も上がっていき、限られた職種しかないという職場環境から、機会を平等に与え、適正に評価し、評価に見合った処遇を行う総合的な人事制度というものが本当に実現できるのか疑問である。
県:まずは、一定の程度の複数人のリーダー的職としての「職長」の整理が必要だと考えている。行政経営推進課から組合にも案を提示し、組合からも意見をいただき、検討が進んでいる状況だ。この整理の後に、現業職としてどのような業務をどのように担っていただくのか議論を深めることとしたい。
人材の有効活用の面からも職種転換、職種領域の拡大を総合的に議論し、可能な限り働きがいのある職場を提供していきたいと思っている。行政職への転職試験等を通じ、適材適所の人員配置を考慮するなど、働きがいのある職場の提供を検討していきたい。
組合(現企労):労使共通認識ができたと思うので、組合員が意欲を持って働けるよう、引き続き検討をお願いしたい。
【1(6)、2について(初任給改善、査定昇給)】
組合:若年層の賃金改善については、昨年度の交渉から、課題があるということは共通認識である。昨年の給与構造改革により、従来の特別昇給の廃止、地域給の導入に伴い、若年層の給与水準がさらに落ちることは明らかだ。人事委員会勧告に触れられなかったとしても、問題意識を持っているのなら、労使協調して、人事委員会に対し本年度中の改善を求めていく気持ちはあるのか。
県:初任給のあり方については、課題であると認識しているので、昨年から人事委員会に対し、問題意識を持って検討していただくよう要請してきたところである。人事委員会においても民間の状況を調査し、総合的に検討された結果、本年度の勧告には触れられなかった。そういった経過の中、本年度中の改善は難しいと判断するが、引き続き検討を行っていただくよう人事委員会に対して要請はしていく。
組合:初任給の改善が難しいのであるなら、査定昇給の運用しかないと考えるが、県としてどう考えているのか。先日、査定昇給案の提案を受けたが、もう少し大胆な案が必要である。
県:初任給の改善以外に若年層の給与水準を改善する方法としては、既にお示ししているが、査定昇給の運用がひとつの方法だろうと考えている。ただし、これにしても対外的に説明できることが必要であり、現行制度の範囲内で可能なものでなければならない。
組合:査定昇給の運用の検討は、初任給改善の検討とセットで考えるということか。
県:そう考えている。査定昇給の運用といっても人事委員会とは協議が必要であるし、査定昇給の運用というよりは、本来は、初任給改善があるべき姿だと考えているので、引き続き検討を行っていただくよう人事委員会に対して要請していく。
組合:人事委員会には、初任給基準は労働条件だということを強く伝えて欲しい。
【3(3)、4(3)について(組合専従休職者の復職時調整、駐車場代の通勤手当化)】
組合:本日、人事委員会から民間給与実態調査の付帯調査結果をもらった。この結果について、結果を見た感想はどうか。
県:県も本日もらったところであり、結果を分析する時間もないので判断はできないし、結果についての判断は一義的には人事委員会が行うものである。
組合専従休職者の復職時調整、駐車場代の通勤手当化の問題については、昨年度の交渉の中でもお話ししたとおり、県としても民間状況を把握する必要があると考え、人事委員会に要請をし、本年度、調査が行われたものである。
通勤手当については、人事委員会は駐車場の措置状況と距離に応じた手当支給状況を合わせた「通勤手当」全体で検討すべきだと考えていると聞いている。また、組合専従休職者の復職時調整についても、100%調整を行っているのは専従制度のある10社中7社であり、残りの3社は調整なしということは、平均すれば県の現行制度に近いものとの見方も成り立つと思う。
この結果を踏まえて、今回の勧告では触れられていないというのが、人事委員会の判断であると考えている。
組合:人事委員会からは、付帯調査であるから勧告になじまないという説明であった。
県:付帯調査だから勧告になじまないという考え方はないと思うので、改めて人事委員会には考え方を確認してみる。
組合:組合も、昨年度同様の調査を行ったが、任意団体が行ったという調査の限界もあるので、公的機関である人事委員会における調査結果が欲しかっただけ。この結果を分析し、今後、問題意識を持って労使で検討し、改善に向けて人事委員会に対しても要請していきたい。
平成18年職種別民間給与実態調査 付帯調査結果のリンク(PDF)
【4(6)について(特殊勤務手当)】
組合:具体的に検討所属があれば、随時調査し、検討していただけるのか。
県:本年に入っても、依頼のあった所属には随時確認、検討を行ってきているが、現在のところ具体的に改正に至るまで検討が進んでいるものはない。
組合:確定交渉とは別に、本年度も昨年と同様の交渉を考えているので、その時にはよろしくお願いしたい。
県:検討にも時間が必要なので、要望はできる限り早く出して欲しい。
【4(3)1)について(通勤手当)】
組合:ノーマイカーデー参加時に公共交通機関を利用した場合、通勤費用の負担が生じるが、何らかの措置は検討されていないのか。
県:現在、具体的な制度設計を検討中であるので、このたびの回答では方向性を回答させてもらったところである。新たなノーマイカー運動の展開に合わせることになるが、来年2月議会への条例提案を目途に具体的な提案を行うことになると思う。
【8(7)について(高齢者部分休業)】
組合:昨年の交渉でどのような問題があるのか実態を調査してみたいとあったが、その結果、導入は困難という回答なのか。何が問題で導入が困難なのか教えて欲しい。
県:部分休業取得者も定数上は1でカウントされる。他の都道府県も制度導入しても利用者が少ないのは、代替職員の確保の問題が大きいからだ。特に交替制勤務職場において、体力的なことを理由に日勤のみの部分休業勤務者がいる場合、その代替職員の確保だけでなく、周りで支える同僚への負担等勤務割り振りに支障が出ないような制度活用とする観点が重要である。該当職場で十分議論してもらうことも必要だと考えており、昨年、病院局に対しても検討を依頼し、一定の監督職員の範囲までであるが、検討していただいた。その結果、現時点における導入は困難との判断がなされたものであり、知事部局においても同様と考え、県として引き続きの検討課題としたものである。
組合:病院で先行して検討してきた経緯は理解できる。問題があるからと入口で止まっていても仕方ないので、問題解決のために一緒に研究をしていっていただきたい。
【9について(時間外勤務)】
組合:退庁時間と時間外勤務の乖離の大きい職員の把握が可能となるようシステム改修を行ったと説明があったが、乖離の大きい職員に対し、具体的にはどの様な方策を考えているのか。
県:一定の要件を加えた上で集計し、乖離の大きい職員については、理由など状況を把握した上で、本人とその管理職員も含め、指導していきたい。我々としては、ICカードや電子出勤簿などの環境は整えたところであり、個々の職員の意識によるところもあるので、この面から各分会などを通じて組合としても徹底を図るようお願いしたい。
組合:明らかになった実態を基に、どの様な対策を取っていくのか、次回の交渉でもう少し具体的に示していただきたい。
【10(3)について(メンタルチェック)】
組合:もう少し管理職に対する研修の充実が必要だと考えるがどうか。
県:初任管理職研修に組み込んだり、福利厚生室の2人の保健師が県内各職場を回ったり、メンタルヘルスに対しては充実してきた。研修等の充実以外にも、近いうちに、特に配慮や支援が必要な職員に対して場合によっては優先的に異動させるような内容も含んだ支援の方針も打ち出すことを考えている。
組合:組合としてもメンタル問題は考えていかないといけない時期になってきている。確定交渉ではなく、別に労使で検討できる場所を検討して欲しい。
【11について(独法化、指定管理者制度等)】
組合:市場化テストが民間委託のためのコスト比較のための道具になっている。制度の導入については管理運営事項であろうが、それに伴う身分変更については、どう考えるのか。
県:独法化については、身分変更の制度的枠組みは法定事項であり、交渉事項ではないが、具体的な身分移行等にかかる諸問題は協議事項になるものもあるだろう。一律に管理運営事項かどうかは微妙な面もあると考える。
【14について(臨時的任用職員、非常勤職員)】
組合:総合的な見直しの中で、実現可能なものから実施ということであるが、一般職員化の全体的な骨格整理を決めてから行わなければ、現場に大きな混乱をもたらすことになる。
県:地方公務員法には特別職と一般職が定められており、一般職の中でも常勤か非常勤かが定められている。この枠組みに現行の非常勤職員、臨時的任用職員の職務をあてはめていこうとしているところである。ただし、非常勤職員には多種多様な職種、勤務形態が現存しており、仕分に時間を要するために、可能なものから整理しようというものである。いずれにしても見直しの取扱方針はできるだけ早くお示ししたい。
組合:そもそも配慮が必要かどうかも含めて検討されるのだろうから、勤務条件の整理は急ぎすぎないよう慎重に行ってほしいが、個別の事項についてはなるべく早く検討してほしい。特に非常勤職員の休暇については、労基法をクリアしているから構わないという問題ではないと思っている。
また、非常勤職員、臨時的任用職員にICカードを提供し、出退勤の適正な把握は考えていないのか。
県:システム改修に費用がかかること、任期も非常勤職員が1年、臨時的任用職員は6か月と短期間であり、提供コストがかかることから現在のところ考えていない。
また、基本的に時間外勤務が予定されておらず、正職員がいる時間帯の勤務であるから、現状でも適切に把握できると考えている。
【1(2)について(人事委員会勧告の取扱い)】
組合:人事委員会勧告制度が地方公務員法に規定され、知事と県議会に対し勧告が行われることを否定する気はない。組合としては、当該勧告内容によって勤務条件等が影響を受けることから、事前に人事委員会から説明を受けたが、その説明に納得ができていない。納得のいかない勧告を基に賃金確定交渉を議論することはできないことをまずは伝えておく。
昨年、主任・主査制度の見直しの中で、国家公務員1種を除いたところの国公ラス100を基準に運用を検討していくということで労使合意した。国家公務員1種を除くことにより、他県よりも給与水準が下がることもやむなしと合意したものであり、今年度、一時金の月数を国以上に引下げれば、二重に給与水準を引下げることになる。給与カットすることも人事委員会が勧告する給与水準に沿っていないものであり、一時金の引下げについては人事委員会勧告どおりに実施するという県の姿勢に納得がいかない。
扶養手当については、現行制度にはこだわっていない。配偶者と子にどういう配分が妥当なのか検討が必要であると考えている。少子高齢化社会が進む中、配偶者に配分される部分を子や祖父母に配分されることも検討してもいいのではなかろうか。
住居手当については、持ち家の比率がどれくらいなのか、持ち家についてどう考えていくのか、労使で考えていきたい。
県:組合の主張は主張としてお聞きしておくが、勧告尊重の基本姿勢は変わらない。地方公務員の給与のあり方については、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」においてもこの人事委員会制度を前提に議論されているものであり、この第三者機関である人事委員会からの勧告が一時金引き下げの勧告であるから、当該部分については受け入れないという組合の主張は理解できない。
組合:県の考え方はわかるが、民間の給与水準を踏まえ県職員の給与水準を引下げた場合、国や他の都道府県との均衡をどのように実現していくつもりなのか。
県:今回の勧告は、人事委員会において、国や他の都道府県の動向も見ながら給与全体のうち特別給について、地域民間事業所従業員が県職員を相当下回っている実態を考慮して判断された結果だと認識している。
組合:労使で人事委員会勧告の中味について議論することはナンセンスなので行わないが、県に求めるのは、賃金カットにより人事委員会が勧告する給与水準に沿っていない現状で、人事委員会勧告に沿わない実施方法も検討できないかということだ。
県:給料表自体は人事委員会勧告どおりに改定を行っているものである。その上で特定政策目的であるとか財政的な理由による臨時的・特例的要素として一時的に給与カットしているのであり、勧告制度の対象とされた給与制度の改定そのものをそれと同列に議論することはできない。
勧告の中味の議論はできないが、将来的に人事委員会勧告制度のあり方を議論することはあり得るだろう。繰り返すようであるが、県としては、法で与えられた権能を持ってなされた勧告を原則的に尊重する姿勢は、これまでもそうであるが、これからも変わらない。
組合:勧告を受け、それをどのように反映するかは、知事が職員組合と協議して、議会に提案して決定されるものである。
再度お聞きするが、民間の給与水準を踏まえ県職員の給与水準を引き下げることにより、国公ラス100を基準とする運用との均衡を失うような勧告であっても、無条件に尊重するということを表明したものと受け止めていいのか。
県:国や他の都道府県、民間事業者の状況を総合的に勘案して勧告されたものであり、また、昨年の交渉においても、民間給与と均衡についても考慮されることを前提としながら、国交ラス100を目安に昇給水準に係る制度設計を行うことを合意したものであり、今回の勧告を尊重したとしても何ら矛盾はおこさないものと考えている。
なお、国公ラスの算定において、一時金は含まれていないことは念のために申し添えておく。
組合:一旦、時間を置き、お互い考えてみよう。
県:次回の交渉では、組合として人事委員会の勧告に従えないと主張する理由を示していただきたい。労使とも勧告尊重の基本姿勢でこれまで臨んできたし、何よりもその点は地方公務員法で定められている趣旨でもある中で、組合はなぜ今回は勧告に従えないと主張するのか、その考え方を十分に整理し、示してもらわなければ、県民も理解しないだろうし、説明もできない。