主任、主査等の廃止に関する組合交渉の概要
○平成17年10月25日(火)
県から県職員労働組合、県現業公企職員労働組合に対して、次のとおり「主任、主査等(わたり)に係る問題整理と是正(制度構築)の方向性について」を提示し、主任、主査等(わたり)の廃止についての具体的な実施方法や考え方などを提案
○平成17年10月28日(金)15:00~17:50
○場所 第23会議室(第2庁舎7階)
○出席者 知事部局:柴田参事監兼職員課長、伊澤給与管理室長、広瀬課長補佐、
萬井副主幹
企業局:山田総務課課長補佐
病院局:渡邉副主幹
県職労:片山執行委員長、山中書記長、櫻井書記次長
現企労:谷本副執行委員長、上田書記長 他11名
<概要>
県:当初提案(平成17年1月19日)以降2回交渉を行ったが、このたび具体的な提案内容を改めて整理して10月25日に「主任、主査等(わたり)に係る問題整理と是正の方向性」として組合に提示したので、これを基に具体的に交渉を進めたい。
今回の見直しは、給与上の処遇を主眼として職務や責任の実態より上位の職や職務の級に一律に昇任、昇格しているいわゆる「わたり」の実態を見直すものである。この「わたり」制度は、(1)地方公務員法の職務給の原則に照らして不適正な給与制度であること、(2)一律に昇任・昇格するために職員の意欲や能力が給与に反映されないことにより公務能率の低下を招くこと、(3)不適正な制度運用の結果として給与費を増嵩させることにもつながることから、県民の納得が得られないものである。また、昨年の12月の県議会における決議を踏まえて早急に見直しを行うことが必要であると考えている。
なお、今回の見直しは全体的な給与水準の引き下げを第一の目的としたものではなく、不適正な給与制度の是正を行うことにより、組織、任用、評価の総合的な人事制度の整備に向けて不合理な部分があるものを点検、改善することにある。本年度の人事委員会勧告における給与構造の見直しなどによる賃金の下降局面の中で、今回の見直しによって職員のモチベーションが失われないよう配慮しながら、きちんと仕事を行った職員がきちんと評価され、処遇される制度になるよう改善を行いたいと考えている。総合的な人事制度の整備に対しては一朝一夕にはできないことから一定の猶予として経過措置も併せて提案している。経過措置の間に個別の職員の意向等も踏まえながら継続的に人事制度の改革を進めていく考えである。
具体的な改善・是正の方向については、既に10月13日に意見交換用の原案として組合に提示した基本的な考え方を基に、組合の専従役員と数回にわたり意見交換を行ってきている。その要点を改めて説明すれば次の3点である。
第1は、各職種毎の実態を基に、公務能率向上と職員の意欲喚起の観点から、必要な役職ポストの整理、設定を行うことである。このために採用職種別のポスト職の状況も一覧表に整理して組合にも提供したところであり、内外に情報を公開しながらポスト職の整理を行っていく考えである。ただし、技術職や専門職については、行政事務職とは異なりライン職制になじみにくい職務実態もあり、専門の知識、経験に基づく高度な実績等を評価、活用することの必要性や合理性が認められる場合には専門的スタッフ職ポストを設定することも考えていきたい。
第2は、人事、評価制度の改善であり、誰がその役職ポストに就くかの公平性・透明性の観点の改善である。今回の見直し対象職員、特に大きな変動が生じる主査については、お示しした資料においてもわかるように個別の対応が可能な人数であり、個別面談等による意向把握と研修など個別のキャリアアップ、資格取得の支援などを行っていきたいと考えている。公務能率評定制度についても、まだ十分ではない点については、評価基準の明確化、透明性の向上など一層の充実に向けて取り組み、さらには人事への職員の意向や希望の反映性の向上などにも継続的に取り組む考えである。
第3は、給与水準のあり方についても、地公法の諸原則に基づくことを基本としながら、今後は民間、国家公務員との比較を職種毎や役職毎に行うなどよりきめ細かく分析し、議論していくことが必要になると考えている。
以上のような取組と一体的に職員の声にも十分耳を傾けながら「わたり」の廃止を行っていく考えである。また、今回の制度是正は、先に述べたように早急な見直しを求められていることなどから、速やかに、かつ、円滑に制度移行を行う必要があり、このような観点を基にした段階的な移行措置も併せて提案しているところである。
まず、第1段階として最初の2年間、平成19年度末までを重点期間として、組織・職制の再整理、見直し対象職員のフォローアップや評定などの人事対応を実施し、これと並行して行政7級相当以上の見直し対象職員、具体的に言えば主査相当の職員を行政6級相当に引き下げる。なお、最初の1年間、平成18年度中は現給保障を行うこととする。
その後、第2段階として、平成20年度から22年度までの3年間で第1段階の整理を前提に、行政職6級相当以下の見直し対象職員の移行を完了したいと考えている。
組合:組合としても無制限の一律的昇任・昇格には問題があると考えている。まじめに努力している職員に対し、適正な評価がなされ、評価に見合った処遇が行われること、つまり、がんばってきてよかった、これからもがんばっていこうという意欲がもてるような賃金労働条件を提示して欲しい。また、国や他の都道府県と比べて遜色ないということも注意してもらいたいが、現在の提案では、これからの給与制度、人事管理制度がどうなっていくのか具体的なイメージが見えてこない。具体的なイメージが見えてこなければ組合員と議論を行うことができない。県としてあるべき給与水準をどう考えているのか示して欲しい。
県:トータルな水準としての民間や国の給与の状況との比較において、給与水準を下げなければならないとは思っていないが、これまでのように標準的・平均的な給与水準を設定し、それに向かって人事制度を構築していくという考えは持っていない。機会を平等に与え、適正に評価し、評価に見合った処遇を行う新たな人事制度を構築することによって生じる結果としての給与水準が、民間や国の給与の状況と比較して均衡の観点から何らかの考慮が必要となるような状況となれば検討を行うものだと考えている。
組合:5%カットを元に戻せば、現行の平均的給与水準が妥当だと考えている。県行政を支える重要な年齢層は35歳から40歳の職員だと思う。この年齢層の職員の給与が係長に昇任しなければ3級となり、ラスでみても10%程度下がる試算となるはずである。一番仕事を行っていこうとする年代の職員の給与が下がるような提案では、職員の士気も下がり、組合としても納得ができない。
県:地公法が定める給与決定原則に対する考え方を変えようとは考えていない。ただ、職種毎や職位毎のよりきめ細やかな検討が必要だと考えているということである。個人毎に異なるが、昇任の時期によっては現行の給与水準に変更が生じ、場合によっては逆転することもあり得る。業務の実態を検討し、必要であれば新たなポスト職の設置も考えられ、その結果としての給与水準が作られるものであり、現行の標準昇給曲線のような単線型で描かれる給与水準を現段階で示すことはできない。なお、例えば国家公務員には、1.種採用職員いわゆるキャリアと呼ばれる給与水準が異なる者も含まれており、それらの者を含めて比較するのは議論の余地があると考えている。
組合:ひとつの考え方として、例えば国家公務員2.種の大卒者の給与水準に合わせるというような職員が自分の将来を具体的にイメージできるようなわかりやすい提案はできないものか。
県:どこまで希望に応えれるかわからないが、検討してみる。
組合(現企労):組合としては、協約改訂交渉は未だ解決していないものと理解しており、今後も交渉を求めていくが、今回のわたり廃止の整理においては、現業職における職長ポスト問題にも関わる部分もある。これについてポストとなると部局独自に話を行う必要があるので、今回の交渉の中か、又は別途の交渉になるのかは検討するが、現企労の意見があれば出させてもらえるものと理解してよいか。
県、病院局、企業局:現業職の見直しには、給与水準の引き下げという要因があり、その点が「わたり」廃止とは異なるということを踏まえた上での話であれば、それでよい。
組合:職員のモチベーションの観点から給与水準を議論してきたが、業務を行っていく上で、給料が一律でいいという均等感ではなく、納得性のある給料差という公平感は必要不可欠であると考えている。そのためにも完璧とはいえないまでもかなりのレベルに達した公平性のある任用基準が必要だが、どのように整理しようとしているのか。
県:従来、任用基準については、整理の曖昧さ、透明性の不足、制度整備の不十分さが存在してきたことは提案のペーパーにも記載しているとおりであり、基本的な考え方を明らかにすることには異論はないが、今すぐに何が出せるかは別である。ただし、評価については現在でも自己評定を行い、面談、評定の開示を行うことによって従前に比べればかなりの納得性も得られてきていると考えている。人事任用についても、一定の幹部職員段階での異動案のオープン協議化など工夫を行っている。しかし、予算編成の査定段階からの公表とは異なり、人事任用はすべてを公開して行う手法には限界がある。現段階においては、評価の透明性を上げることにより任用の納得性を高めていくことが何よりの手法ではなかろうかと考えている。
組合:以前より努力していることは理解した。具体的な任用に至るまでの機会の平等を担保し、その平等がわかるよう示してもらいたい。任用についての話は組合としても考えてみたい。
組合:6級の係長級の職にある者を4、5級に格付けする根拠は何か。
県:行政職の6級とは本来、課長補佐級の級である。そのことは勤勉手当における役職加算からみても明らかである。6級に格付けするためには課長補佐級の任用を行うことが職務給の原則に照らしても本来の運用の姿である。課長補佐級の職を適正に設置し、きちんと課長補佐級に任用して6級に昇格する方式にしようとするのが今回の見直し提案の考え方である。
組合:事務系と技術系とでは事情が違うだろう。課長補佐の職とはどのようなものなのか。現場をまとめる係長級の職と管理職としての課長級との間の職として、技術系の職場にどれくらい課長補佐級の職が必要かというと、なかなか想定しにくい。
県:事務系のスタッフ職場においては、課長補佐相当の職責を持つ主幹がその職責に応じた業務を行っており、硬直的に考えず、同様の体制も含めて検討していけばよいと考えている。ただし、ポスト職の設置は業務上必要なものに限らなければならないことは当然のことであるし、昇任者については、当然異動によって入れ替わることもあるので、ライン職の課長補佐と同等程度の能力が必要となる。
組合:経過措置について、どういう整理、根拠を持って提案されたのか。職務の級や給料月額を下げることは、いわゆる降任・降格に該当するもので、一方的には実施できないのではないか。
県:主査や主任について、形式的に昇任行為があったことは否定はしないが、提案のペーパーにも記載しているとおり、それは給与上の処遇を主眼として職務や責任の実態より上位の職務の級に昇任させたものであると認識している。従って地方公務員法上の降任、降格には該当せず、制度変更に伴う是正として実施できるものだと認識している。特に主査の職は、主査兼係長、主査兼主任のように発令上からみてもわかるように、単独で発令されることはなく、本来は係長なり主任の職が本務である。つまり、明らかに給与上の処遇を主眼として職務や責任の実態より上位の職務の級に昇任させたものである。この点は組織、職制として今後整理が必要な主任発令者とは少し事情が異なる面もあり、見直し対象職員の中にも、最終的には係長級以上の職務、職責を果たし得ると思われる者が一定程度想定されることなども考慮すれば、3級相当への引き下げにあたっては、一定期間のフォローアップを行いながら段階的に行うことが妥当であると判断し、提案しているものである。
県:県は、主査の仕事の内容と給与は一致していないと考えている。一定の年齢になったら全員に一律に課長補佐級の職責が発生することはあり得ない。今回の経過措置は、職務や職責が給与上の処遇に適正に反映されていない「わたり」を廃止して、激変緩和の観点と併せて見直し後の新たな給与制度への移行措置を行うものであり、あくまで制度変更に伴う是正として実施するものである。
本日は相互に主な主張を行ったのであるから、今後、主張が相容れない部分について、どのような一致点が見いだせるのか精力的に議論を行って、合意点を見い出していきたい。