教育委員リレーコラム

  

コラム(坂本委員)

坂本委員 鳥取県教育委員会委員 坂本トヨ子

 東日本大震災のあの日から5年、当時中学生だった生徒が大きく成長して高校の卒業式を迎えられた様子が、連日新聞やテレビ等で報じられ、様々な困難を乗り越えて生きる姿には、涙が流れるばかりです。

 今年も高校の卒業式に出席させて頂きました。
 様々な思いを胸に巣立つ卒業生の表情は、いつもキリリと引き締まり、将来の夢と希望を感じさせてくれます。校長先生の式辞も、すべてに気持ちが込められ、生徒への深い愛を感じさせるお言葉でした。その中で、「ふるさとを思う気持ちを大切に」というお言葉は、生徒や先生だけでなく、会場の保護者や地域の方々に深く刻まれました。

 気象現象も社会経済も、今後の予測が出来ない時代ですが、巣立っていく子供達に、たくましく生きる力をつけさせてあげたい、進学などで県外に出た人間が鳥取県の良さを再認識して帰って来る為に、地元の人間は何をするべきか、どの立場の方々もそれぞれに課題意識を持って臨んでいるのです。
 鉄腕アトムやドラえもんなど、漫画の世界で想像していたロボットが、今夢ではなくなり、人間に替わるAI(人工知能)の可能性は便利で科学的な暮らしへと広がりを見せてくれます。
 人間の持っている可能性は、困難に直面した時に思いがけない力を発揮します。そして、その力は生まれ育った土地や家族の中で、育まれたものが大きいのです。そのことに気付き、大切なものが足元にあると感じることが出来るときに「ふるさと」という場所を愛おしく思えるのではないでしょうか。
 世界で活躍する若者に大きな期待をする一方、地方に暮らす側の人々にとっての強みは何か、ここをしっかり見極める目を養う力に期待したいものです。自然界の樹木や草花が活き活きと育つ姿からは、明らかに人工では敵わない勢いを感じ、安心な農産物など自然の恵みや生身の技術に、地域の皆で「自然知能」を発揮したいものです。

 啓蟄、巣立ち、芽吹き、贈る言葉も様々に過ぎる3月から、間違いなく桜が咲く4月を迎える卒業生に、心よりエールを贈らせて頂きたいと思います。

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