教育委員リレーコラム

  

「生きる力」を育むために (佐伯委員)

 教育委員 佐伯 啓子

 様々な体験活動を意図的、計画的に教育実践に取り入れて、「生きる力」の育成を目指している学校がたくさんあります。社会や家庭の環境の変化に伴い、比較的自然や地域の環境に恵まれている鳥取県でも、子どもたちが体を充分動かし様々な人やものに触れ合う体験をする機会は少なくなってきています。子どもが持っている本質的な良いところは変わらないと思っていますが、私が日々接している子どもたちを見ていると、人との関わり方に課題のある子が多くなっているように感じています。
 核家族化や少子化で、家庭内で関わり合いや譲り合い、自分の気持ちに折り合いをつける機会が少なくなる傾向にあります。そこで学校や地域で異年齢の人たちとの活動を体験することで、人との関係の築き方を学ぶことが大切になってきます。遊びや製作活動、野外活動などを通して、周りの人々と助け合う、教え合う、補い合うことを体験することで、人間関係の築き方を自然に体得していくことができると思います。人として生きていくためには、自分だけではできないことに気づいたときに、周りの人に助力を求めたり、共に行動して粘り強くやり遂げようと努力したりする力は大切になります。
 社会の中で生きていく力としては、上記のような人との関わり力だけではなく、自分で考える力、何とか工夫してやろうとする意欲、失敗を恐れないで、そこから学ぼうとする柔軟性も欠かせません。そういう自立心やしなやかな精神は、周りの大人から温かく見守られ、体や心をつかった様々な体験活動の中で培われていくのではないでしょうか。
 表面的な良い行いや良い結果にとらわれすぎないよう、どう考え、どのように行動しようとしたのか、子ども自身の心のありように関心を持ち、しっかりと受け止められる大人でありたいと思います。子どもたちと一緒に体験活動をする中で、私たち大人の生き方が問われます。忙しさや効率のよさを理由にして、子ども自身が試行錯誤し、失敗を重ねながらもやり抜こうとする機会を奪ってはいないでしょうか。安全で怪我をしないようにと、挑戦しようとする気持ちを抑えつけてはいないでしょうか。子ども自身が本来持っている好奇心ややる気を、自然や地域の人やものとの関わりの中で発揮させ、子どもの持っている力を伸ばし、「生きる力」になっていくようにと願っています。

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