教育委員リレーコラム

  

工業デザイナー・秋岡好夫展覧会

鳥取県教育委員 坂本トヨ子 
先月初め、東京に行く機会を頂き、帰る途中見つけた、目黒区立美術館に立ち寄ってみました。
  1997年までの工業デザイナー、秋岡好夫の展覧会が開かれていたからです。
  彼のデザイン、「1年(~6年)の科学」の表紙絵は、当時、誰もが小学校の時に手にしましたし、「学習」の付録も楽しみで、子供心に、皆さんワクワクされた思い出があると思います。
 あぐら椅子、竹とんぼ、三菱鉛筆UNi、日本で初めて、給食の食器を木製品で提案したのも彼ということです。
 生涯、生活用品のあらゆる道具を、手造りで揃えて日常の暮らしを楽しまれた様子や、当時使用されていたノミなどの道具は、まるで絵のように引き出しの中に整理され、彼が、いかに大切に道具を愛したかなど、この展覧会で実際に見ることが出来、私はとても感動を覚えました。
 「一人一芸運動」、「身度尺」、「シンプルライフ」など、様々な提言もされ、失われゆく職人とその文化が後世に残るための教育を、根強くなさった方です。
 なかでも風土を生かした、「ほんもののモノづくり」、楽しみながら「指先で考える」を提唱され、使う人が幸せになるモノは、作る人も幸せになり、現代の、経済優先の、あふれるモノとの付き合い方を考える上で、立ち止まって日常を見直し、さらにモノを大切に、愛することが出来るようになることを教えておられます。
 このところ鳥取県でも、キャリア教育の中の、ものづくり教育支援事業が具体的に動き始め、教育委員会と商工労働部と事業所が、連携を一層強化する場面が増えております。
 親世代も子供たちも、少しのことでも幸せを感じ、感謝することや、仕事のやりがいを持てる、社会全体の「価値観」は、ともに早くから職業観を学習して育む必要もあると思いますので、これはとても素晴らしいことではないでしょうか。
 今年は、大変な一年でしたが、次代を担う若者たちの逆境に負けない「強い心」、「幸せ感」の為に出来ることは何かを、彼のモノづくりの姿勢からも教えられ、偶然立ち寄った展覧会が、私には年末に、貴重な出会いとなった気が致します。
 皆様、良いお年をお迎えください。     

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