教育委員リレーコラム

  

心のコップ

             鳥取県教育委員会 委員 山田 修平 山田委員   


 子どもには心にコップがあるという。心のコップが反対になっているとき、なにを言っても伝わらない。伏せたコップに水を注ぐようなもので周りが汚れるだけで子どもは一向に吸収してくれない。「片づけなさい」、「勉強しなさい」といくら言っても、コップが反対の時は効果がない。たとえ一時片づけたとしても、また勉強したとしても長続きしない。大切なのは心のコップを上向きにすることである。そのためにはどうすればいいのか?認めることである。ほめることである。なにもこれは子どもに限らない。私たち大人もあの人の話は聞くが、この人の話は聞きたくない、違いはどこにあるのだろう。自分のことを認めてくれる人の話は聞き、なにを言っても否定する人の話は聞かないが常である。
 ほめる、認めるといってもこんな子がいるかもしれない。短所ばかりで長所がない。はたしてそうであろうか。一見短所と思えることに長所のことは多々ある。腕白は元気な証拠。なよなよして人前で話ができないは繊細なためであろう。こうしてみれば誰もが認められる点を多々もっている。 
 最も上手なほめ言葉は「流石(さすが)だな」というのだそうだ。上手なたしなめ方は「あなたらしくないね」。この2つの言葉は基底で相手を認めている。しかしどんな言葉も心を込めて使わないと空々しい。テクニックで「流石」や「あなたらしくない」を連発してもかえって反感を買う。大切なのは本当に相手を理解し評価したとき、相手の心のコップは上向きになる。
 人と人の心は、キャッチボールのようなものだ。いい球を投げなければ受け止められない。まず自分自身の心を上向きにして、受け止めやすい球を投げることから始めたい。

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