自然保護監視員日記


 中部担当の自然保護監視員が、日々のパトロールの中で発見したこと、感じたこと等を綴りながら、中部地区の魅力的な自然の数々をご紹介します。
 

2015年12月24日

コウノトリ 今年も飛来

 二十四節気(にじゅうしせっき)の1つ冬至を過ぎ、早いもので今年も残り少なくなりました。今年の冬は例年よりも気候が穏やかで、中国地方の最高峰大山(だいせん)では記録が残っている中で最も遅い初冠雪となりました。

 稲刈りが終わった晩秋、北栄町の水田でひときわ大きな鳥を見つけました。双眼鏡で確認したところコウノトリでした。コウノトリには足環がついており、兵庫県立コウノトリの郷公園の保護増殖事業により誕生したもので、昨年確認したものと同じ個体でした。

コウノトリ
北栄町に今年も舞い降りたコウノトリ

 コウノトリは、夏は中国東北部やロシアのアムール・ウスリー地方で生息し、冬は中国南部で越冬する大型の鳥です。生態は、河川、水田、湖沼などに生息し、魚やカエルなどの小動物を採食する肉食で、アカマツなどの樹上に大きな皿形の巣を作り繁殖します。

コウノトリの生息地域
コウノトリの生息地域(☆印は日本の保護増殖地

 日本では、江戸時代までは各地に生息しており、鳥取県では米子市の目久美遺跡から骨が出土しているため、かつては生息していたといわれています。明治時代に入ると、狩猟による乱獲によって数が減り、昭和時代には農業の近代化や農薬の影響、湿地の開発などの生息環境の悪化が原因で、1971年(昭和46年)に日本では野生種が絶滅しました。その後、最後の野生個体が確認された兵庫県但馬地域を拠点に保護活動が行われ、人工飼育繁殖された個体が2005年(平成17年)から放鳥されました。2007年(平成19年)には、野外繁殖でヒナが誕生し、今回目撃したコウノトリは2011年(平成23年)に野外繁殖から巣立ちした個体です。
 2015年(平成27年)8月末現在、日本での野外個体数は83羽となり、これまで兵庫県豊岡盆地とその周辺に限られていた野外での繁殖が、今年は徳島県鳴門市で巣作りが確認されています。

 このように人間の活動の影響で絶滅してしまったコウノトリですが、少しずつ日本の空に蘇りつつあります。地球上の生き物が互いにつながりあって共に生きていくために人間はどのように行動すべきか、コウノトリを目撃して改めて考えさせられました。

 2年続けて北栄町に舞い降りたコウノトリは、この地を安心して餌を採れる場所として認識しているのかもしれません。鳥取の地でも近い将来コウノトリが繁殖し、人間と共存していく日もそう遠くないかもしれません。


中部総合事務所環境建築局 2015/12/24 in 野鳥



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(自然公園担当)
電話:0858-23-3276  Fax:0858-23-3266

(野生鳥獣・狩猟免許担当)

電話:0858-23-3153  Fax:0858-23-3266

  
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