防災・危機管理情報



 中部担当の自然保護監視員が、日々のパトロールの中で発見したこと、感じたこと等を綴りながら、中部地区の魅力的な自然の数々をご紹介します。
 

2009年7月28日

峠のお地蔵さん その5

 三朝町から岡山県上斎原へは、国道179号人形トンネルを一気にくぐればあっという間ですが、少し前まではつづら折れの道を上って、ウラン関連施設やドライブインでにぎわう峠を越さなければなりませんでした。

 この峠をいつしか人形峠と呼んでいますが、本来の人形峠は、ここから県境を西へ約2.5Kmの地点にあるのを知っている人は少ないと思います。

 今回は、歩くことしか交通手段のなかった時代、伯耆美作国境の主要通路であった(旧)人形峠を紹介します。

 三朝町木地山と岡山県上斎原間、美伯国境の人形峠。灌木に覆われ始めていますが、以前、牛が放牧され、草刈場であった草原の名残をわずかに残しています。
 大きなお地蔵さんが西を向いて立っています。
 近づいてよく見ると、このお地蔵さんは子供を抱えています。 昔、子連れの女性が疲れて寝入り、目が覚めたら子供がいなくなっていた。あわてて探し回り、女性も行方不明となった。
 その供養のため、建立されたとあります。
たたら製鉄が盛んな頃、付近は砂鉄の採掘で山を崩していました。ボロボロとした真砂土で、今でも草も生えていません。 鳥取側は急斜面ですが、岡山県側はなだらかで、峠のすぐ近くまで花の乱れ咲く美しい湿原が広がっています。 鳥取側のふもと、木地山集落に残る立派なかやぶきの民家。茅場のない現在、屋根の材料確保や維持管理は大変なことです。

 湿原の美しい植物の数々。
カキラン、柿色の花から マトラノオ、沼に咲く虎の尾 ミズチドリ、水上を飛ぶ千鳥
コバギボウシ、小葉擬宝珠。つぼみが擬宝珠に似る チダケサシと蜘蛛に捕らえられたヒメシジミ 近くの林に実を付けていたオニグルミ

 「人形」の由来は、行方不明となった子供が人形とすり替わっていたとか、蜘蛛の化け物が出没し、人形でおびき寄せ退治したとか、色々な説を聞きましたが定かではありません。

 人形峠へは林道を利用して岡山県側から近づき、標識に従って湿原の中を進みます。
 峠のすぐ西、標高1004mの人形仙には三角点もあって、踏み跡程度の登山道を伝って登る人もそこそこあるようです。

 昔、周りはすべて草刈場であったという鳥取側の道は、今はすっかりと深い杉林に覆われています。造林して間もない頃は分かりにくくなっていた道も、木が大きくなって道形がはっきり出てきた、との地元の人の話です。一度通ってみたいものです。(自然保護監視員 浜辺正篤)

中部総合事務所環境建築局 2009/07/28 in 県立自然公園,国立公園,植物,中国自然歩道,野鳥



問合せ先

中部総合事務所 環境建築局 環境・循環推進課

(自然公園担当)
電話:0858-23-3276  Fax:0858-23-3266

(野生鳥獣・狩猟免許担当)

電話:0858-23-3153  Fax:0858-23-3266

  
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