防災・危機管理情報


 審査員から、チーム部門の全体を通しての講評や、高校生への励ましの言葉をいただきました。

全体講評

 

  

大辻隆弘審査員

【総評】

 4チームの皆さん本当にお疲れ様でした。この大会も6回目になりまして、今日の4校はどこも先輩方が出場している学校で、先輩方から色々なアドバイスがあったり、学校の伝統みたいなものが出来てきていたりして、どの学校も準備万端だなと思いました。穂村さんも仰ってましたが、きちんと自分の歌の良さというものをプレゼンできているし、私たちも一生懸命、隙をねらった質問を考えますが、ことごとく跳ね返されてしまって、非常に熟練していると思いました。どの学校も本当に持ち味が出ていて良い対決だったと思います。

 『夜型』は、非常に青春性を感じる歌でした。青春の前に一本すっとレールが引かれていて、そのレールをずっと遠いところから眺めて、これからの前途に心を震わせているような、そういう歌が多いと思いました。

 それから、『がちゃぽぽ』はすごく素直で僕は好きでしたね。塾帰りの時にワイパーが雨をはじく様子は何か寂しい感じがするし、しんとする感じがする。でも家族の愛に包まれているという涙が出そうな感じでした。それから、好きな人が踏切の向こうに行って、踏切の音の向こうにその人を感じるなど。全部せつなくて素直な、胸がキュンとするような場面を詠っていて、その素直さがこの学校の一番いい持ち味だと思います。

 決勝に進出された2チームのうち、まず『鶏頭』ですが、なかなか荒んでいますよね。人間のマイナスの心情みたいなものをえぐり出すという感じ。日本の自然主義文学の小説では人間の嫌なところ、それをこれでもかとえぐり出していますが、自分の内面の混沌とかリビドーみたいなものを執拗に、これでもか、これでもかと文体も含めてえぐり出すような作品で、とても迫力がありました。のり弁を食べるときの情けなさとか、自転車を盗んだ奴が負けるだろうと呪詛をかけるとか、「すみません、すいません」と人前で卑屈になりながら尊大であるとか、そういう人間の醜いところを突き付けてくるようなところがありました。

 優勝された『御露』は、非常にオーソドックスだと思いました。歌自体が春雨サラダとか、パックジュースがへこむとか、蠅が教科書に降りるとか、穏やかに雪が湖面に落ちて消えるとか、具体的な場面と心情というものが、非常に憎たらしいほどオーソドックスに組み合わされていました。クラブの中で、ここは押さえなければいけない、ここはむしろ抑制して表現したほうが効果的だとか、そんな議論をたくさんしたんだろうなと感じました。何と言っても、発表を2人でやるのがちょっとずるいですよね。2人で、作者の意図と客観的に見た意見を30秒ずつ発表することよって、単なる作者の意図だけでなく、その作品が立体的に見えてきました。そうした批評の工夫が成功して、効果的に審査員の心にも響いたのではないかと思います。


穂村弘審査員

 さすがにたくさんのチームの中から選ばれた4チームとあって、ハイレベルで素晴らしい対戦でした。1試合目の「一人旅雨天決行」と「臆病もいっそ光になればいい」が秀歌同士の戦いで、いきなり判定に悩んでしまいました。

 『御露』の神田さんの「蠅は君主のように降り立つ」は、もう一首の「細胞一つ一つ死にゆく」の方も素晴らしかったですが、私の好みで言えば「蠅は君主」が今回のベストかな。本格派で素晴らしいと感じました。

 それから、『鶏頭』の「雨漏り」と「のり弁」の取り合わせも絶妙で、見事と思いました。『がちゃぽぽ』の北原さんの「カとンの間に君を見つける」もよかったです。

 「ウミウシの棲む街」は、ウミウシは海に棲んでいるから、街には棲んでいないんだけど、そのズレが非常に効果を上げていて、『御露』の櫻井さんのこの歌もよかったですね。それから『鶏頭』の「蛾」の歌。負けちゃったけどとってもいい歌ですよね。この感じで押し通してもらえると、すごく歌人として自立した形が見えてくるんじゃないかと思います。

 駆け足になりましたが、素晴らしかったと思います。

江戸雪審査員

 どの歌もレベルが高くて、参加者の方々は歴代の歌人の歌をよく読んでこられたのではないかと思います。言葉は悪いですが、よく勉強をしているなという印象です。「近代」とも大辻さんが仰いましたが、「口語」か「文語」かという文体の選択、そして内容における発想にも先行作品への意識があると全体に感じました。

 とても上手な歌を作られる中で、ちょっと辛口な事を言いますが、あまり驚かされなかったというのも事実です。この大会も6回目で、すごくレベルの高い争いなので、学校ごとのカラーを押し出してきてくれるのもとてもいいと思うのですが、個人として学校の仲間に染まらずに作っていくというのもひとつの方法だと思います。「逆張り」という言葉がありますよね。こうしたら審査員は喜ぶだろうという予想の逆を張って、審査員の私たちの心を揺さぶってほしい。すごく贅沢なお願いですけれども、ちょっとそんなことを思います。

 作品については、残念ながら決勝に進めなかったチームの作品も含め、知的なレベルが高くて、社会的な歌や死に関する歌も多くあったように思います。そういう思考の深さにも感動しました。

  

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