調査・研究(遺物の画像処理)

発掘調査現場で三次元計測する!

 当センターでは、発掘調査での三次元計測の利用について研究・実践を進めていて、前回は出土品の計測についてご紹介しました。 

 今回は発掘調査現場での三次元計測についてご紹介したいと思います。

 発掘調査の現場では、昔の人々が地面に残した生活の痕跡や、遺跡がどのような過程を経て埋まったのかを図面で記録します。図面は現地で対象物の大きさを測って縮尺に合わせて描くのですが、遺物が大量に出土したところや、木材などが組み合わされた遺構などを図化するには時間がかかります。また、平面図の場合は図面に描かれたものの高さを別途計測する必要があります。

 発掘現場での三次元計測は、最大4.5mまで延びるポールの先端にデジタルカメラを取り付けて、少しずつ移動しながら対象物全体を写真撮影して、コンピュータで解析します。

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発掘現場での写真撮影のようす

 できあがった三次元モデルを使えば、対象物を真上から見たオルソ画像(レンズのゆがみがない画像)を作ることができて、これを印刷して調査現場で追加の情報を書き込むことができます。また、三次元モデルには対象物の高さの情報も記録されているので、手描き図面のように高さを別途測る必要がなく効率的です。

 さらに、発掘現場に行くことができない人に現地のようすをいろいろな角度から見てもらうことができるのも、図面や写真と異なる、三次元モデルならではの利点といえます。

 今年度は、埋蔵文化財センターで実施した古代山陰道関係の発掘調査や市場城跡の発掘調査の他、湯梨浜町教育委員会が実施した羽衣石城跡(うえしじょうあと)の発掘調査や智頭町教育委員会が実施した試掘調査の調査支援などで三次元計測を活用しました。

 今後は、現地での3次元計測をいかに効率的に行うか、できあがった三次元モデルをどのように公開するかなどを検討していくことにしています。

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完成した発掘現場の三次元モデルの例

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上の三次元モデルを真上から見たオルソ画像

[令和5年1月掲載]


出土品を三次元計測してみた!

 当センターでは、発掘調査での三次元計測の利用について研究を進めています。

 その中で、今回は、出土品の三次元計測についてご紹介します。

 出土品の中には長さが2m以上ある大きなものがあります。大きな出土品は、これまで定規などで大きさを測って図面を手描きしていましたが、手間がかかっていました。そこで、出土品を三次元計測して、これを元にコンピュータ上で図面を描くことにしました。

 まず、対象となる出土品をいろいろな方向から撮影し、その画像をコンピュータで解析して立体的な三次元モデルを作成します。その後、できあがった三次元モデルを描きたい向きに回転させて、コンピュータ上で図化していきます。コンピュータ上での図化では大きさを測る必要がないので、手描きに比べて手間が少なく、作業の効率化をはかることができます。
 今回は保存処理済みの木製品を計測しましたが、処理する前の木製品は水漬けの状態で保管していて、乾燥すると変形してしまうので、常に乾かないように注意する必要があります。三次元計測ならば、計測のための写真撮影が手描きに比べて短時間で済み、出土品が傷む心配を減らすことができます。

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木製品の計測をするための写真を撮影しているようす

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計測した木製品の三次元モデル

 三次元データは、出土品のレプリカ作製にも利用することができ、高住平田遺跡(たかずみひらたいせき)で出土した平安時代の銅印(どういん)のデータを3D(=三次元)プリンタで出力してみました。出力したものは表面が段々になっていますので、段を削ったり樹脂で埋めたりして、本物に近い銅印のレプリカを作製します。

 今後は、できあがったものを使って古代体験の記念品を作ったり、鋳造体験の原型を作ったりすることも考えています。

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本物の銅印(左)と計測データを3Dプリンタで出力したもの(右)

[令和4年11月掲載]


文化財で使われる新しい計測技術

 令和4年7月29日から企画展示「文化財の三次元計測」を行っています。
今回の展示では、三次元計測技術が文化財の調査や活用にどのように使われているかを紹介していますが、その1つをご紹介します。
 鳥取市気高町の下坂本清合(しもさかもとせいごう)遺跡では、室町時代の備前焼の壺に大量の銅銭が納められた状態で見つかりました(埋蔵銭と呼ばれます)。
見つかった壺は、一部が割れていたことで、銅銭が納められたようすがよく分かる状態でした。そのままの状態で残すことも考えられましたが、入っている銅銭の枚数や銅銭の種類などを知るためにはすべて取り出す必要がありました。そこで、銅銭を取り出す前に3次元計測を行うことになりました。
 計測には、レーザーを照射して対象物の計測を行う器械が使われました。作業は回転台の上に壺を乗せて、少しずつ回してレーザーを当てる場所を変えながら計測を行い、コンピュータ上で計測したデータを合成することで壺の全体形を作り上げていきます。
 今回できあがった三次元データには色情報がありませんので(色情報も記録できる器械もあるそうです)、同時に撮影した写真をデータの表面に貼り付けることで、あたかも本物の壺がコンピュータの中に現れます。このデータは見る人が自由に回転させたり、拡大して細かい部分の様子を見たりできます。
 その後、三次元データを基に出土した状態のレプリカが作られ、壺の中に入っていた銅銭とともに展示できるようになっています。
 今回は、ロビーに本物の壺と銅銭を展示するとともに、展示室内にレプリカを展示していますので、見比べていただきたいと思います。

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本物の埋蔵銭

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三次元計測のようす

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埋蔵銭の三次元画像

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埋蔵銭のレプリカ

  

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センター紹介

 久松山地域は戦国時代以降鳥取城が築かれ、鳥取藩32万石の中心地でした。現在でもこの地域は県庁があり、行政の中心地となっています。

 しかし、戦国時代から遡ること約800年前の奈良時代、県庁から4キロほど離れたこの国府町に国史跡因幡国庁(現在の県庁にあたるもの)がありました。今ではひっそりとした田園地帯ですが、因幡三山(甑山(こしきやま)、今木山(いまきやま)、面影山(おもかげやま))に囲まれ、当時の面影を残す万葉の歴史と古代の出土品にあふれた万葉の里となっています。
 この歴史豊かな万葉の里の一角に埋蔵文化財センターはあります。


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