今年度から調査研究事業の一つとして、新たに「伯耆におけるたたら製鉄の調査研究」を開始しました。近年、脚光を浴びるたたら製鉄や刀剣ですが、なかでも話題なのが、平安時代の名刀工、伯耆安綱。そこで、まず、伯耆町教委育委員会にご協力いただき、安綱の伝承地の一つである伯耆町大原周辺の踏査を行いました。実はこの伯耆町大原周辺は、鳥取県教育委員会が昭和50年代に行った生産遺跡の分布調査によって、古い時代の製鉄遺跡がいくつか確認されている地域なのです。
今回の踏査では、1カ所のみでしたが、鉄滓が地表面に数多く落ちているのを確認することができました。その周辺の斜面地には、古代から中世の製鉄炉を築くのに適した平坦面もみられ、立地からも中世以前に遡りそうな印象を受けました。
今後も踏査を継続し、日南町や倉吉市などに残るその他の安綱伝承地についても調べていく予定です。今後の調査成果にぜひ、ご期待ください!
伯耆町の朝日当遺跡周辺。周辺は小金糞(かなくそ)谷とも呼ばれ、写真手前の畑(平坦地)に鉄滓がたくさん落ちていました。製鉄炉は写真右奥の林内の斜面地に存在した可能性があります。
鉄滓散布状況。畑の一角に鉄滓がたくさん転がっていました。
採集した製鉄炉の炉壁片。スサ(わらなど)が混ぜ込まれた粘土が用いられていることが分かります。
伯耆町大原にある伯耆安綱の伝承碑。