鳥取県では平成19年度以降、持続可能な行政体制を目指し、「財政誘導目標」を堅持した財政運営を基本指針とした上で、業務の標準化・効率化による簡素で機能的な組織の構築、県有施設・資産有効活用戦略会議による部局横断での民間活力の導入などを積極的に進め、県民サービスの維持向上を図りながら、行財政改革に取り組んできた。
今後、人口減少と少子高齢化に起因する社会保障関係費等の増加が見込まれる中、ポストコロナにおける社会変革を踏まえ、デジタル社会への対応、民間活力の導入等の対応などにさらに大胆に取り組んでいくことが求められている。
こうした状況に的確に対応しながら、今後も、持続的かつ効果的な行財政改革を進めていくため、これまでの行財政改革の取組や成果を総括して県民の皆様と共有する。
(1)財政誘導目標を堅持した財政運営
行財政改革の基本指針となる「財政誘導目標」を設定し、4期すべてで達成した。
これにより、県民の暮らしを豊かにするための施策を最大限遂行しつつ、基金を維持しながら県債残高を大幅に削減し、各種財政指標が大きく改善するなど、将来世代につけを残さない行財政運営を断行した。
<第4期の財政誘導目標:全ての項目で達成>
数値目標(R1~R4)
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令和4年度の財政調整型基金残高 ≧ 標準財政規模の1割
R4年度末時点 273億円 215億円
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令和4年度の実質的な県債残高※ ≦ 県内総生産(名目)の2割
R4年度末時点 3,511億円 3,716億円
※臨時財政対策債及び交付税措置額の高い防災関連等の起債に係る交付税措置額を除いた県債の残高
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当初予算編成時点でのプライマリーバランスの黒字化(臨財債除く)
R5当初時点 96億円の黒字 (R2~R5当初予算を通じて達成)
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<各種財政指標の改善>
- 県債残高(臨財債除く):1,038億円削減(H18末:4,711億円→R4末:3,673億円)
- 経常収支比率:10.0ポイント改善(H18:92.8%→R3:82.8%(全国2位))
- 将来負担比率:26.2ポイント改善(H19:151.3%→R3:125.1%(全国11位))
(2)業務の標準化・効率化
ICTを活用し県民の視点に立った行政手続きの利便性向上に取り組むとともに、業務の効率化に向けた取組を推進し、新たな時間の創出やコスト削減を実現してきた。
県庁基幹システム刷新(H29~31)
運用開始から20年以上経過し、老朽・陳腐化していた県庁の基幹業務システム(財務会計、税務、給与)の再構築を行い、業務を効率化した。
定型業務の自動化
納税者情報の紐付け業務の自動化ロボットにより、945時間/年を創出 他
- AI-OCRによる紙文書の文字情報テキストデータ化作業の自動化(R4~)
県営発電所の過去の発電記録データ入力作業を自動化し、2,999時間/年を創出 他
- AIチャットボットを活用した県民サービス向上(R2~)
自動車税の問合せ対応及び競争入札参加資格者名簿登録に係る業者からの問合せ対応を自動化し、423時間/月を創出。
議事録作成に要する時間を従来の約5分の1に削減し、10,400時間/年を創出。
オンライン行政手続の活用拡大(H28~)
場所・時間を問わず遠隔非接触のオンライン行政手続きに対応する電子申請システムを導入し、県民の利便性を向上するとともに、許認可事務、集計作業、窓口対応に係る業務を効率化。
【申請件数等の推移】
区分
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平成29年度
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平成30年度
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令和元年度
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令和2年度
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令和3年度
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対象手続数
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42
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434
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486
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749
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839
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申請件数
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1,114
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3,700
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5,795
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27,875
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28,557
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オンライン会議システム(R2~)、ビジネスチャットの導入(R3~)
オンライン会議システムを導入し、円滑な県民等とのコミュニケーションを実現するとともに、職員の移動時間や出張コストを95%削減。1,000件/月以上の会議参加実績。
また、ビジネスチャットを導入し緊急時の情報共有を円滑化。
次世代庁内LAN(新インターネット環境等)の導入(R4~)
ネットワーク分離によるセキュリティレベルを維持した上で、インターネット利用時や外部とのメール送受信時の煩雑な作業を不要とし、350,000時間/年以上を創出。
県と市町村との連携による情報システムの共同化
平成27年5月に県と全市町村で「鳥取県自治体ICT共同化推進協議会」を設立し、団体の枠を超えた共同化の取組を推進。
- 電子申請システムの共同調達・共同運用(平成29年4月運用開始)
⇒最大約2億円のコスト削減
- 学校業務支援システムの共同調達・共同運用 ※全国初(平成30年4月運用開始)
⇒最大約12.5億円のコスト削減
⇒自治体の枠を超えた電子会議室を実現
- 全国に先駆けて平成29年に県と全市町村にCSIRTを設置し、強固な連携体制を構築
⇒「サイバーセキュリティに関する総務大臣奨励賞」を受賞(令和3年3月)
※CSIRT(Computer Security Incident Response Teamシーサート):情報セキュリティインシデント発生時の緊急即応チーム
隣県との連携による情報システムの共同化
<自治体情報セキュリティクラウド>
全国で唯一、情報ハイウェイを相互接続している鳥取県と岡山県の環境を活かしてセキュリティクラウドの共同運用を開始し、セキュリティ機能の強化と約10億9千万円のコスト削減を実現(運用を含む10年間の総額)
<個人番号統合宛名システム>
自治体が管理する個別システム(税、生活保護、障害者手帳などのシステム)の個人管理番号とマイナンバーを紐付けて「統合宛名番号」を発行し、一元的に管理するシステムとなる「統合宛名システム」について、鳥取県、岡山県及び広島県の3県が共同化。これにより、約8.6千万円のコスト削減を実現(運用を含む5年間の総額)
(3)組織体制改革・適正な給与制度の推進
カイゼン活動の推進やICTの活用等により業務の無理・ムダを省き、簡素で機能的な組織の構築を実現するとともに、重要かつ喫緊の政策課題については機動的かつ大胆に人的資源を投入することを前提にスクラップアンドビルドを徹底した適正な定数管理を維持してきた。
あわせて、年功型制度(わたり)の廃止を踏まえ、業務遂行に必要な職を整備し、職務・職責に応じた適正な給与制度の運用に取り組んできた。
(4)民間活力の導入・財源確保対策
効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めるとともに新たな事業機会の創出を実現するため、平成28年3月に「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」を策定し、PPP/PFI手法の優先的検討を行う等により、県内でのPPP/PFI手法の実績を積み重ねた。
また、ふるさと納税、ネーミングライツ及び県資産等を広告媒体とする広告事業の実施等により、新たな財源確保に努めた。
指定管理者制度の新規導入
鳥取二十世紀梨記念館、とっとり賀露かにっこ館、むきばんだ史跡公園、天神川流域下水道、大山自然歴史館、とっとりバイオフロンティア、二十一世紀の森、境港水産物地方卸売市場・境漁港、船上山少年自然の家、大山青年の家、青谷かみじち史跡公園
PPP/PFI手法活用決定
- 鳥取空港へのコンセッション方式導入決定(H29)。運営開始(H30.7~)
財政効果 1千7百万円程度(事業期間5年間)
- 県営発電施設(舂米、小鹿第一・第二、日野川第一)へのコンセッション方式導入決定(H29)。舂米発電所運営開始(R2.9~)
財政効果 89億円程度(事業期間20年間)
- 県立美術館整備・運営へのPFI手法活用決定(H30)。R6年度末開館予定
財政効果 10%以上(総事業費 約142.6億円(当初契約額) 事業期間15年間)
- 西部総合事務所新棟整備へのPFI手法活用決定(R元)。R5年10月供用開始予定
財政効果 1.7億円程度(事業期間 10年間)
- 米子新体育館へのPFI手法活用決定(R3)。R5.2実施方針公表
- 県営住宅上粟島団地更新事業へのPFI手法活用決定(R4)
新たな財源確保対策
- ふるさと納税(H20~R4(見込):約29.6億円)
- ネーミングライツ(H20~R4(見込)命名権の売却:約4.1億円)
(5)公共施設等の適正な管理
高度経済成長期を中心に多数整備され老朽化が進む公共建築物及び土木インフラについて、平成28年3月に「鳥取県公共施設等総合管理計画」を策定し、同計画に基づき公共施設等の全体を把握し、長期的な視点をもって長寿命化・更新・統廃合等を計画的に行うことで財政負担の軽減・平準化と公共施設の適正な配置等を進めた。
公共施設等の計画的な長寿命化・予防保全型の管理
「鳥取県県有施設中長期保全計画」(H29年2月)その他個別施設について長寿命化計画を策定。予防保全型の管理手法に切り替える等により従来の事後保全型の維持管理と比較し、将来にわたり改修・更新・維持管理費を抑制する見通しを立てた。
(経費削減効果)▲1,498億円(H27~R36年度)
<公共施設等>
- 累計(~R36):約566億円(6,897億円→6,331億円)
<土木インフラ>
- 累計(~R36):約932億円(5,910億円→4,978億円)
公共施設等の保有総量の最適化
- 公の施設の見直しによる廃止・民間譲渡等(母来寮、岩井長者寮、福原荘、みなと温泉館、保育専門学院、鹿野かちみ園・鹿野第二かちみ園、皆生尚寿園)
- 県立米子産業体育館・米子市立市民体育館等の統廃合による米子新体育館整備を決定(R3)
- 西部総合事務所の新棟を米子市庁舎と共同整備(R5.10供用開始予定)
- 県営住宅団地の廃止・市町村への移管(H19~R4(見込)廃止:66戸、移管:275戸)
- 未利用財産の売却・貸付(H19~R4(見込)売却:約50.5億円、貸付:約15.6億円)
(6)市町村との協働連携
効果的かつ効率的に地域の課題を解決するため、連携協約など地方自治法上の制度を活用しながら、県と市町村との事務の連携や共同化を進めた。
中核市と連携した事務の共同化(連携協約、権限移譲、事務委託の活用)
- 平成30年度鳥取市の中核市移行に伴い県から市へ保健所業務など約2,600項目の事務を移管し効率化 ⇒身近なところで住民にサービス提供をするため、県の事務を大胆に移譲
・東部4町の保健所業務の委託により窓口を一本化
・確保が困難な専門人材(医師・獣医師・薬剤師等)の重複配置を防止
・施設・資機材・人材確保のスケールメリット低下による行政コスト増大を防止
中山間地域における広域連携推進(県と日野郡3町との連携協約)
- 日野郡ふるさと連携協約の締結(平成27年7月)※県・市町村間の協約締結は全国初
・県道の除雪・維持工事を町へ委託。除雪機械運転手、オペレータの育成・支援を共同で実施。
・鳥獣被害対策、発達相談支援(母子保健)を共同実施。
・日野高校と日野郡3町が連携して高校魅力向上の取組を展開。
鳥取県自治体ICT共同化推進協議会による更なる共同業務の検討(全市町村との連携協約)
※(2)業務の標準化・効率化「県と市町村との連携による情報システムの共同化」に掲載
西部総合事務所新棟整備
県と米子市が連携し、施設の老朽化等に対応するため、西部総合事務所敷地(米子市糀町)内に共同で新棟整備を実施。新棟建設に伴い、県西部福祉保健局を西部総合事務所敷地内に移転させ、総合事務所機能の強化を図るとともに、県・市の土木・建築関係部局を新棟に移転し、県の税務部局を米子市役所内に移転させ、類似部局を同一棟内に配置することで、県民・市民へのサービス向上と業務の効率化を図る。(R5.10供用開始予定)
米子新体育館整備
県と米子市が連携し、スポーツ振興、施設の老朽化への対応及び公共施設の適正配置等を実施するため、米子市民体育館、鳥取県立米子産業体育館、米子市営武道館を統廃合し、米子市東山公園内に米子新体育館を整備する予定。(R5.2実施方針公表)
(7)公社・公営企業経営の健全化
県が出資する公社及び公営企業について、将来に向けて経営の健全化を図るため、経営健全化・改革に係る計画等の策定・見直しを実施し、事業収入の確保、経費削減及び事業執行の効率化等を図った。
住宅供給公社
平成30年度末に策定した「経営健全化方針」に基づき、分譲宅地の販売促進、人件費の合理化に加え、各市営住宅管理業務受託等の新規事業拡大を進めて、経営改善に取り組んでおり、方針どおり、順調に令和7年度末までに債務超過を解消する(資産額が負債額を上回る)見込み。
県造林公社
平成25年2月に策定した「鳥取県造林公社経営改革プラン」に基づき、公社事業終了(令和66年度)までの事業期間中の、長期収支黒字化に向けて事業を実施。令和4年度のプラン見直しでは、造林未済地発生抑止対策、主伐の早期実施、新規事業外収入確保(新たな森林管理システム推進センター機能の移転、市町村受託事業、J-クレジットの販売)等を行うことで、最終収支黒字額を12.1億円とする見直しを実施した。
県天神川流域下水道事業
令和2年度から公営企業会計を適用し、「ストックマネジメント計画」に基づき、施設設備の更新経費を平準化しライフサイクルコストを低減するとともに、「経営戦略」などの策定を通じ、中長期における経営の安定化を推進した。併せて、令和4年度から関連市町と協働で雨天時浸入水対策の取組を開始したほか、令和4年度に策定した広域化・共同化計画に基づき有収水量の増加を図ることとする等、今後の人口減少を見据えた経営の安定化に取り組んだ。
企業局
平成18年度に策定した「鳥取県企業局の今後のあり方」(経営改善5ヵ年計画:平成18~22年度)をはじめ、「鳥取県企業局経営改善計画」(第1期:平成23~25年度)、「鳥取県企業局経営プラン」(第2期:平成26~28年度)、「鳥取県企業局経営プラン」(第3期:平成29~令和8年度)を策定し、これらの計画に基づき経営改善に継続して取り組んでおり、組織体制・業務の見直し等による定数の合理化、全国初の水力発電所に係るコンセッション方式の導入、工業用水道施設の長寿命化等に取り組んだ。