ア 人口減少社会に突入
イ 経済成長力が低下し、社会保障負担等が増大
ウ 人口偏在が拡大し、地域社会が脆弱化
○ 我が国においては、昭和45年に2.13であった合計特殊出生率が、晩婚化、未婚率の上昇等の要因により、人口の維持に必要な水準である2.07を下回り続け、平成17年には1.26と過去最低となっています。この長期的な少子化傾向を反映して、戦後一貫して増加してきた我が国の総人口は、2004年(平成16年)の約1億2,780万人をピークに減少に転じました。併せて、人口構造の高齢化も進んでいます。この人口減少・少子高齢化は、経済成長力の低下と社会保障負担等の増大も招き、社会全体としての大きな課題となっています。現在はもはや右肩上がりの経済ではなく、人口減少・少子高齢化時代の中で直面する課題の解決に社会全体で取り組まなければならなくなっています。
また、大規模企業の大都市圏への立地規制の緩和等に伴い、近年、地方から大 都市圏への人口流出が続いており、中山間地域の中には、日常生活を地域で維持 するための集落やコミュニティが衰退し、日常生活を地域で支えることにも支障 が生じ始めているところもあります。
○ 本県においては、平成19年の合計特殊出生率が全国の1.34を上回る1.47であるものの、長期的な出生数の減少及び県外からの転入者の減少に伴い、総人口は昭和60年の国勢調査の616千人をピークに減少を続けており、国立社会保障・人口問題研究所の推計より速いペースで60万人を下回っています。
このような人口減少・少子高齢化時代において、特に県土の大部分が中山間地 域である本県においては、定住人口の減少を食い止めるとともに、たとえ人口が 減少しても持続可能な地域社会を形成することが必要となっています。
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ア 高まる地球環境問題の重要度
イ 逼迫するエネルギー需要
ウ 世界的な人口の増加
○ 地球規模での人口増加、経済成長に伴う産業活動の拡大等により、エネルギー消費量が増大し、地球温暖化、生態系の変化等といった一国では解決できない地球規模での環境問題が生じています。これまでの大量消費・大量廃棄とは異なる価値観が国民の中に根付きつつあります。環境を守るためには、国民を始め、企業や団体、地方公共団体、国が協力しながら、それぞれの役割を果たしていくことが必要であり、お互いが情報共有しながら、自ら可能な環境配慮活動に積極的に取り組むことが必要です。
○ これまでの大量消費・大量廃棄とは異なる価値観は県民の中にも根付きつつありますが、全国と比較するとより一層の取組みが必要な状況です。
本県では、「鳥取県版環境管理システム(TEAS)」の創設や「鳥取県駐車時等エンジン停止の推進に関する条例」の制定といった県独自の施策を展開するほか、風力発電等の自然エネルギーの導入を促進するなど、「環境立県」を目指して、県民や企業の方々と共に環境問題に取り組んできています。しかし、2006年度の二酸化炭素の排出量が1990年比で約10%増加している状況にあるなど、更なる取組みが必要です。
また、地球温暖化防止や循環型社会づくりなど、環境先進県を目指した「環境先進県に向けた次世代プログラム」を策定し、県民との協働により環境活動を一層推進することとしています。
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ア 市場経済主義が世界を席巻
イ 今後更に成長が見込まれる東アジアの経済
ウ 世界に広がる経済格差
○ 近年、国際間の輸送・交通手段の高速化、広域化等に伴い、製品や資本、労働 力等の国際的移動が活発化し、経済のグローバル化が進んでいます。中でも、30 億人の大市場であるアジアでは、豊富な労働力、海外からの投資等を背景に経済 成長が著しく、GDPは米国・EU並みに拡大し、製造業の実質付加価値では、 欧米を凌駕し、世界の工場へと発展しています。東アジア地域の経済は、今後更 に成長が見込まれます。このような状況の中で、ヒト、モノ、カネ、ワザ、チエ などを「持てる国」と「持たざる国」との間で経済格差も生じてきています。
○ 本県は、地勢的に北東アジアに近く、西日本と北東アジアとの間における主要 な拠点・ゲートウェイ(玄関)となるポテンシャルを持っています。環日本海を 始めとする大交流新時代の拠点を目指す本県は、世界経済の新たな発展を先導す るアジアの動向に留意しながら、経済だけでなく、観光、文化、人づくりなど多 様な分野において、これらの地域との戦略的な連携を構築していきます。
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ア インターネット、携帯電話、地上デジタル放送
イ 情報格差の拡大
○ インターネット、携帯電話、地上デジタル放送を始めとする情報通信技術の急 速な進化は、携帯電話の端末の進化や家電製品のデジタル化・ネットワーク化、 医療・教育・行政等を始めとする多方面での利活用など、大きな影響を及ぼして います。また、情報通信技術の進化は特に経済分野でのグローバル化を著しく進 行させ、世界を飛び交う「情報」をいち早く入手し、発信する「スピード」が大変 重要となってきています。
その一方で、急速な情報通信技術の進化は、デジタルデバイドといわれる情報 の格差を生み出すなど、負の側面も抱えています。平成23年7月までに完全移行 が予定されている地上デジタル放送については、NHKさえ全国で25万世帯で受 信できなくなる見込みになっています。また、携帯電話についても、飛躍的な普 及が進む一方、人口が少ない地域等では民間事業者の参入が進まず、多くの不感 地区が残されたままとなっています。高度情報化社会において、これらの情報格 差の解消は急務です。
○ 本県では、とっとり情報ハイウェイやCATVなどのブロードバンドの整備が 進んでおり、ブロードバンドの世帯カバー率(利用可能な世帯の率)は98.5%、 実際のブロードバンドの世帯普及率も48.7%に達しています。
携帯電話は日常生活や緊急時の連絡手段として普及していますが、県内には携帯電話が使えない(使いにくい)地区が依然として残っています(45地区(11市町、88集落、1,064世帯))。この解消を図るため、県は、携帯電話のエリア拡大の要望を県民の方から受け付けるホームページの開設など、携帯電話事業者や市町村と連携して不感地区解消に取り組んでいるところです。
情報通信技術は、特に地理的な制約の多い本県においては、その制約・ハンデを克服することのできる大切なツールであり、大変重要な「地域の基幹インフラ」です。今後、情報通信技術を県下全域で利用できる環境整備を進めていくことが必要です。
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ア 厳しい地方財政運営、地域間格差の拡大
イ 道州制の議論
○ 社会の様々なシステムが十分に確立されていない時代には、国・中央がシステ ムを創設・形成し、地方がそのシステムの中で住民の生活の安定を図っていく、 という流れが一般的でした。しかし、社会が成熟し、ニーズが多様化している現 在においては、もはや、国・中央が新たなシステムを創設・形成したり、一括し て見直しをする時代ではなく、その不具合を現場・地方が見直していく時代にな ってきています。このような地方分権の流れは、時代の要請であり、必然的なも のです。
地方分権の進展等に伴い、地方を取り巻く環境が大きく変化してきています。三位一体改革により地方への税源移譲が進められましたが、地方に対する国の関与の廃止・縮小はそれほど進まず、また、平成16年度以降の地方交付税等が大幅に削減され、地方は厳しい財政運営を余儀なくされています。
また、大都市圏と地方圏との間には、地域経済の低迷とそれに伴う有効求人倍率の低迷、高速道路等の社会的インフラ整備の遅れ、県民所得の低下等、依然として大きな地域間格差があります。このような地域間格差を国策として是正することが、本格的・本来的な地方分権を進めるための前提条件です。しかし、これまでのところ、地方分権は、一定程度は進みつつありますが、本来の趣旨からは外れた、不十分なものが多い状況です。
○ 現在の地方税収は、法人事業税など偏在性の高い税目に依存したものとなって いることから、本県は、企業が集中する大都市圏との税収格差が拡大し、また、 地方交付税等の大幅削減の影響もあり、厳しい財政運営を余儀なくされています。 これに伴い、住民サービス等の地域間格差も拡大する傾向にあります。
○ 道州制については、平成20年3月に、政府の道州制ビジョン懇談会が「中間と りまとめ」を公表されるなど、道州制の導入を前提とした議論が進められている ところですが、国民的な関心は依然として高まっておらず、「道州制の導入に関 する判断は、国民的な議論の動向を踏まえて行われるべき」とする第28次地方制 度調査会の「道州制のあり方に関する答申」にあるような状況には至っていませ ん。従って、道州制については、10年以内の導入目標や区割り案の作成といった 議論ではなく、先ずは、中央政府を解体再編し、国を連邦制に作り変えるくらい の大きな変革を伴う議論をじっくりと行うべきであると考えています。
○ 本県は、道州制の議論を見守りつつ、行政ニーズの広域化への対応には、スピ ード感を持って取り組みます。行政ニーズの広域化に対応し、広域観光、産業振 興等での島根県、岡山県、広島県、兵庫県等との連携、救急医療や防災面など安 全安心県土づくりの観点から必要となる近県との連携のほか、産業面における近 畿圏域とのつながりなどを始めとして、広域的なネットワークの形成・広域的な ニーズへの対応など、システムとして広域連携等を進めていきます。
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ア 社会を担う新しいパートナーシップのシステムづくり
イ 家庭、職場、地域社会での男女共同参画
ウ ユニバーサルデザインの考え方
○ 人々の価値観は、これまでより多様化してきています。生活する上で生じる様な課題の解決は、これまでのように行政が中心になるだけでは解決することが できなくなってきています。また、市民社会の成熟に伴い、NPO、ボランティ ア等の活動が活発化しています。近年、NPOによる活動やボランティア活動、 企業の社会貢献活動など、様々な主体と行政とが役割分担しながら共に課題解決 を図っていく新しいパートナーシップのシステムづくりが求められています。
また、このような価値観の多様化や高齢化、女性の社会進出等により、働き方 等を含め、個人のライフスタイルも多様化してきています。それぞれが自らの生 活を楽しみ、いきいきと暮らしていくためには、家庭、職場、地域社会での男女 共同参画や、お互いの違いを認め合い、家庭も地域も人と人とのつながりが大切 にされ、希望に溢れ、誰もが暮らしやすい社会(ユニバーサル社会)の実現も必 要です。
○ 本県は、ボランティア活動(まちづくりのための活動や自然・環境を守るため の活動等)に住民が関わった割合が全国一であるなど、住民が主体となって、企 業やNPO、住民団体や地域活動を行う者・団体等と協働・連携して、自らの手 で地域づくり等を進めていく素地があり、今後、この素地を活かして、様々な主 体と行政との間で新しいパートナーシップをつくり、鳥取県型の協働連携モデル を全県で展開するなど、新しい「次世代型の地域づくり・ネットワークづくり」 を進めていく必要があります。
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ア 物質的な豊かさと精神的な豊かさ
イ ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)
○ 経済が進展し、社会の成熟化が進む中で、人々の意識は、これまでの経済的な 豊かさ・「物質的な豊かさ」を重視する考え方から、「心の豊かさ」(家族とのふ れあいを重視したり、自然と共生した暮らしや地域文化を大切にしていこうとい う意識)を重視する方向に変化してきています。効率性重視の現代生活を見直し、 地域の自然、食、歴史、伝統、文化等を大切にしながらゆったりていねいに暮ら す生活スタイルであるいわゆる「スローライフ」や、健康や癒し、環境等を志向 する生活スタイルであるいわゆる「ロハス」に象徴されるような、こころ豊かに 暮らす生活スタイルが重視されてきています。
また、ワーク・ライフ・バランスを実現し、老若男女誰もが、仕事、家庭生活、 個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開するこ とは、心豊かな生活を実現するために重要な要素です。若い世代が子どもを生み 育てやすい環境をつくるためにも、ワーク・ライフ・バランスの実現が大切です。
○ 本県には、豊かな歴史、自然・環境、食、文化等があり、また、大都市圏と比 べ、大勢の中に埋没することなく、地域において自分の存在や役割に手応え・充 実感を感じることができます。豊かな自然・環境に恵まれながら、情報、交通等 の利便性も確保された本県は、まさに「心の豊かさ」を体感できる絶好の場所で あり、いわゆる「スローライフ」や「ロハス」に象徴されるような、こころ豊か に暮らすことのできる場所であると言えます。県民皆が「心の豊かさ」を体感し、 県外からUJIターンされる方を呼び込むためには、更に、地域を磨き上げると ともに、ワーク・ライフ・バランスの実現を図ることも必要です。
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