3月8日(水)、県内の図書館・美術館・博物館等の職員を対象に資料保存・修復研修会を行いました。講師は南部町在住の修復士・秦博志さん(修復工房Hata Studio経営)です。秦さんは、県内外の紙資料の修復を手がけられ、資料修復の講師などもされています。会場は県立図書館大会議室で、参加者は13名でした。
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左から柳楽公文書館長、秦講師
研修の様子をご紹介します。研修では、(1)裏打ち、(2)繕い、(3)糸切れした和本の綴じ直しを行いました。
(1)裏打ち
秦講師に手本を見せていただき、それから各自が実習しました。糊の濃さは刷毛を持ち上げた時に1本の線になって垂れる程度で、想像より薄くて驚く参加者が多くいました。また、裏打ちする和紙は、将来的に剥がすことを考えて、資料より薄いものを用いますが、薄ければ薄いほど技術的に難しいため、公文書館が使用している中厚(3匁)のものを使いました。
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裏打ちの実習風景
(2)繕い
裂けてしまった資料や、欠損部分のある資料の修復方法を習いました。裂けた部分は、典具帖紙という極薄和紙をあて、上から糊を塗ります。欠損部分は、バックライトボードの上に載せ、その上に修復用の和紙を重ねて水をつけた筆でなぞり、欠損部分と同じ形になるようにちぎります。形をそろえて補修するときれいに出来上がることが分かりました。欠損部分もできるだけ同じ厚さになるように補修するのが良いとのことでした。
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繕いの実習風景
(3)糸切れした和本の綴じ直し(四つ目綴じ)
当初は、和綴じ本の作成を教えていただく予定でしたが、より実践的に、参加者が持ち寄った糸切れした和本の綴じ直しを行うことになりました。糸の長さは資料の対角線の3.5倍程度。既に4つの穴が開いているので、最初の穴と進む方向を間違えなければ、一筆書きのように穴に沿って針を進めていけば完成します。参加者の習得も早く、すぐにでも業務に生かせるように思いました。
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和本の綴じ方を説明する秦講師
最後に参加した方の声を紹介します。
- 「紙資料の修復に適した糊や和紙の種類などを具体的に紹介いただき、大変参考になった」
- 「裏打ち実習を体験し、資材だけでなく不織布やハケなど作業に使用する道具の効果も実感し、とても有意義な研修会だった」
- 「裏打ちなどの資料の修復について、座学だけではなく、実習できたことがとてもよかった」
- 「実際に修復を体験できたことは、本格的な修復でなくとも、応急処置などでも応用できるのではないかと思った」
資料修復の方法について、インターネット上でも色々と見ることはできますが、実際に自分の手を動かして、指導を受けるのとは大違いです。日常業務に生かせる大変有意義な研修になったのではないかと思います。
ご指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。