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令和7年度の中部療育園が向かうところ
今年度の当園の目標は、『当事者ご本人の生活する場所での地域連携支援』としました。
これまでは、当園では、個別のケースを通して子どもの育ちや発達障がいの理解を届けることに取り組んできました。そして、ご家庭や教育・福祉機関などの現場で子どもの成長や発達を実際に支える保護者様や先生方から沢山の示唆をいただき、私たちは診療や療育園内の活動だけではわからない課題や問題に気づくことができました。
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その取り組みをもとに、今年度は、当事者本人を真ん中に繋がる地域連携を目指して取り組んでいきたいと考えています。
そのための基本方針は、
1 まず、共有
2 そして、分担
3 そうして、連携
としました。
1 まず、共有とは;
関わりのあるそれぞれの人達が知っている当事者の情報や関連する情報を共有する。
そうすることで、それぞれの立場や視点で傾聴してきた当事者本人たちのニーズを共有することができ、目の前に立ちはだかる課題や問題の本質が明らかになってきます。
支援するための当事者アセスメントは非常に大切で、それぞれの捉え方がいろいろな方向を向いてしまっているままでは、真ん中にいる当事者は迷子になってしまいます。
2 そして、分担とは;
支援者はそれぞれの立場での経験や知識があります。当事者アセスメントに沿って支援者同士がお互いの経験や専門性を出し合い役割を分担し、課題や問題の支援・解決方法をプランすることで、当事者ご本人たちの声や能力が反映されるオリジナルな支援が始まると考えています。
3 そうして、連携とは;
実際の支援は、当事者、家族、支援者が繋がり、いろいろな角度から組み上げていくものになります。役割分担の狭間に落ちるものがないよう、お互いの取組や情報を共有しながら協働していくことで、連携は徐々に強化されていきます。
このように、当事者ご本人を真ん中に課題や問題を捉え、共有‐分担‐連携のサイクルを回しながら、短期目標をひとつずつ達成し、長期目標の到達を目指していける、支援の汎化が当園の次のミッションであると考えています。
この基本方針に対する今年度のキーワードは、『バリアフリー』としました。
段差の解消や多目的トイレの設置など施設・設備などのバリアフリーはよく知られています。また、五感のバリアフリーに配慮したメロデイ信号機や点状・線状ブロック、音声ガイド付き家電製品なども普及してきました。ことばのバリアフリーに配慮したユニバーサルデザインやLLブックなどへの意識も高まってきました。さらに、様々な心身の特性や考え方をもつ人々がお互いに理解を深めコミュニケーションをとっていく心のバリアフリーも提唱されるようになりました。これらのバリアフリーは、『考えたことがないことを知ろうする』ことから始まります。障がいや困難さ等により機能の障がいや活動の制限、参加の制約をうけている当事者ご本人たちの声を聞こうとすることや、声や言葉以外の方法で発せられるサインを見ようとすること・感じようとすることで、お互いの『バリア』への気づきがうまれ、バリアフリーが始まります。
支援者どうしが繋がり地域連携に取り組む時、『考え方のバリアフリー』を意識し、共有‐分担‐連携のサイクルの中でお互いの理解を深め、当事者本人のニーズを真ん中に支えあっていける連携体制が育まれると思います。今年度は、より多くの生活の場に出かけていく機会を設け、当事者ご本人や関わる皆さまと直接語り合いながら、中部療育園の療育経験や専門知識を子育てや保育・教育の現場に届けることができる一年にしたいと考えています。
令和7年度も当園の活動にご理解とご支援いただきますよう、よろしくお願いいたします。
令和7年4月 鳥取県立中部療育園 園長 杉浦 千登勢