☆今後の療育園のあり方について
1 療育について
(1)療育の定義
かつて、日本最初の肢体不自由児施設である整肢療護園の創設に尽力された故高木憲次東京大学名誉教授は、昭和17年に「肢体不自由児」の社会的自立をめざすチームアプローチを「療育」と名づけ、「現代の科学を総動員して不自由な肢体をできるだけ克服し、それによって幸いにも復活した肢体の能力そのものをできるだけ有効に活用させ、以って自活の途の立つように育成させること」と定義された。この時点では、高木氏は「療育」の対象を肢体不自由児に限定されていたと考えられる。
その後、北九州市立総合療育センターの初代所長高松鶴吉氏は、平成2年に「療育」の対象を障がいのある子どもすべてに拡大するとともに、「注意深く特別に設定された特殊な子育て、育つ力を育てる努力」として育児支援の重要性を強調された。
平成17年には、平成15・16年に実施された「厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究事業『障害児(者)の地域移行に関連させた身体障害・知的障害関係施設の機能の体系的なあり方に関する研究(主任研究者:岡田喜篤)の分担研究として実施された「障害児通園施設の機能統合に関する研究」において、「発達支援」という文言が、先人の「療育」の概念をさらに発展、拡大させて考え、障がいが確定した子ども達への支援に限定されている印象が強い「療育」からさらに対象を広げて障がいが確定していない子どもたちの育児支援を中心とした支援も含んだものとして提案された。
「療育」という概念は、限定的な肢体不自由障がいに対する治療教育的な対応という定義から発展し、対象障がいの拡大と育児支援まで包含される内容にまで至っている。
(2)障がい児支援の現状
現状のイメージ図(PDF,85KB)
2 今後の児童発達支援センターとしての機能
(1) 現在の鳥取療育園での事業
平成24年4月に児童福祉法が改正され、障がい児施設の一元化により、肢体不自由児通園施設は医療型児童発達支援、児童デイサービスは児童発達支援に名称を変更するとともに児童発達支援センターとして施設設置をしました。当園の役割としては、家庭・地域で子どもさん保護者様が生き生きと生活できるよう、子どもさんの特性の把握を深め支援方法を増やしていくことで、以下のとおりです。
事業内容
(担当課) |
対象者 |
支援内容 |
発達外来
(企画外来担当) |
言葉や運動の育ち、社会性・行動面・心の発達など、発達に関する相談 |
・脳神経小児科医・整形外科医による診察
・理学療法士、作業療法、言語療法などの個別訓練
・心理療法士等による発達評価 |
医療型児童発達支援「きらり」
(通園担当)
~親子で参加~ |
肢体不自由や運動発達に遅れのある就学前のお子様とその保護者様 |
保育活動を通して、身体的・医療的な確認をしながら育児や発達支援を行います。お子様のねらいにあわせて3つのクラス(ばなな組・りんご組・めろん組)に分かれていて、保護者様も活動に参加し、支援方法を職員と探ります。 |
児童発達支援 「エルマー」
(地域支援担当)
~親子で別々に参加~ |
自閉症を中心とした発達障がいのあるお子様(概ね年少児から就学前まで)とその保護者様 |
・お子様は小集団活動に参加。集団生活への適応を支援します。(1グループ90分、最大5名)
・保護者様は勉強会参加。保護者同士で、お子様の理解を深めたり支援について考えます。 |
(2)今後の課題
イ 相談支援の充実と保育所等訪問支援事業の検討
現在の診療機能に加え、相談支援機能の充実を検討しています。療育の対象となるのは、障がいのある子どもだけでなく、発達が気になる子ども(障がいの可能性のある子ども)も含めます。
障がいの可能性のある子どもは被虐待のハイリスクグループでもあることから、診断や評価の前に、保護者への心理的支援と子どもへの発達支援を同時に時間をかけて丁寧に行うことが必要とされます。
将来的には、これらの相談を「基本相談」として丁寧に子どもおよび保護者への支援として行い、サービス利用については「障害児支援利用計画」を策定し、障害児通所支援事業をはじめとしたサービスの利用をつなぎ、地域でより暮らしやすく生活できるための支援を行えるよう組織のあり方も含め検討していきたいと考えます。
また、現在県事業で実施している障がい児等地域療育支援事業では、在宅の障がい児や保護者の相談にのったり、必要に応じて保育所等に医師や保育士などのスタッフを派遣し相談指導を行っています。今後は事業所として保育所等訪問支援事業をどのように取り組んでいくのか検討していきます。そのためには、現在実施している地域療育支援事業との支援内容の違いなどを地域の保育所等と共有するとともに市町と連携しながらすすめていくことが必要になります。
ロ 重度障がい児への支援の充実と地域との役割分担
重度心身障がい児および医療的ケア(気管切開、経管栄養・胃瘻、呼吸、嚥下障がい)等が必要な児童は、近年重度化が進んでいます。急性期医療を担う医療機関から退院し、在宅生活における退院直後からの早期療育が県立施設として担うべき部分と考えています。急性期の病院との連携により、在宅移行へむけた通所などの発達支援を行います。
通園で取り組んでいる「生活モデル」の考え方(通園でやっていることがふだんの生活で活かされること)に沿って、より重度の方への支援を充実していくとともに、軽度肢体不自由児、知的障がい児への支援については、地域での児童発達支援事業や市町村で実施している発達相談などと連携しながら役割分担をおこなっていくことが必要とされます。
ハ 発達障がい事業への高いニーズにどのように対応するか
東部圏域で唯一発達障がいへの支援を専門とした事業所として地域に広く認知されています。現在は未就学児を対象としていますが、学童期の通所及び、保護者同士の集まりへの要望も強い現状があります。
地域では、保育所や幼稚園での理解の深まりなど地域での発達支援が充実してきていますので、連携を重視して事業を実施しています。
今後は高度な専門性、安全なサービス提供体制を維持するために、活動ボランティアの活用、民間との協働も念頭にふまえながら、県立施設としての役割を整理し、連携体制を構築していく事が必要とされます。