あいさつ
40周年記念のご挨拶
鳥取療育園長 前岡幸憲
平素から皆様には格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。当園はこのたび開設40周年を迎えることになりました。開設以来、療育機関として支援の実績を積み重ねることができましたのも、ひとえに皆様方のご支援の賜と心より感謝申し上げます。
鳥取療育園は、昭和50年に設立された県立県営の肢体不自由児通園施設です。当時、鳥取県立中央病院に隣接する形で、子どもの光輝く場所として「きらりアイランド」という愛称が使われました。当時鳥取県立中央病院院長であった初代牧野禮一郎園長を始め、北岡宇一園長、大谷恭一園長、鱸俊朗園長等々整形外科や小児科部長など名だたる療育の先達によって、園の運営が行われてまいりました。
10年前に私が園長職を拝命してから先、制度の変遷とともに施設も変わっていき、肢体不自由児通園は医療型児童発達支援センターとなり、あわせて附属診療所の開設により外来診療部門が地域に開かれ、発達障がい支援として児童発達支援事業も運営されることになるなど、多様な事業形態を持つことになりました。これらに加え、障がい児等地域療育支援事業として、地域の施設や家庭に出向き相談や支援を行ったり、地域療育セミナーや出前講座を開くなど、地域との連携を進める動きも加速しました。
障がい施策においては戦後から続いた障がい福祉の基盤であった措置制度から、ノーマライゼーションやICFの理念の浸透とともに、利用契約制度へ制度が変わっていき、平成24年度の児童福祉法改正に至ることになります。この結果、発達の気になる段階からの支援、当事者児童だけでなく家族も含めた支援、成人期までの一貫した支援、地域への訪問・派遣による支援、障がい児相談支援事業の創設、児童福祉法への一元化、障がい種別に分かれた障がい児施設の一元化など、実に多くの変革が行われました。
これに合わせるように通園施設の印象も変わってきたように思われます。ちょうど四半世紀前の当時鳥取県立中央病院の研修医だった私は、鳥取療育園を一つの障がい児通園施設と捉え、保育園との交流も盛んな一施設に位置づけていました。ところが、多様な育児ニーズにこたえるように対応を重ねていった結果、事業やスタッフも多様となり、利用者がうなぎ上りに増える一方で、地域からは逆にわかりにくい構造となったようにも見えます。児童福祉の一つの通園施設という立場から多様な事業体系をもつ公立の複合経営体となり、横並びに想定されていた園どうしの交流は少なくなり、むしろ地域の誰でも利用でき、地域の園や学校等の後方支援や協働関係を保つなど、広範囲かつ高い専門性を求められる相談・支援機関へ変貌していったと考えております。
制度や施設の有り様だけでなく、療育支援の中身も変容が起きています。療育機関の専門性は、発達(障がい)特性を探り、支援方法のレパートリーを柔軟かつ多様に持つこととし、家族支援(育児支援)や地域支援など協働的に支援する連携体制も構築するなど、その役割が広がってきています。今後、地域で生活する子どもたちの育ちを支援するための機能として、相談支援や保育所等訪問支援などの新しい事業も担っていくことが求められています。
現在の課題としては、一つに理念として掲げている「生活モデル」の理論の実践化にあります。通所でやっていることが、ふだんの生活で(家庭や保幼・学校等)活かされていることを考えることにあります。そのために、いつでもどこでもだれでもできること、子どものできることを広げること、やっていることが何に結びつくのか常に目的を明確にして保護者や関係者に伝えることなどを深慮していくことが大切です。
また、初診待ちが長く多くの利用をいただいている外来診療やリハビリの整理にあります。まず、気になる段階から相談のある発達障がいに対する医療や療育の役割を整理し、診察だけで対応しないように発達のアセスメント機能を持つこと、外来から地域へ受け渡していく体制を整備することや重層的な地域(医療、保健、福祉)の相談体制を検討すること、相談支援や保育所等訪問支援で地域連携の仕組みを作ることなど、取り組む課題が山積しています。
さらに、重度重複化している児童が増加し、この子どもたちに対する在宅移行支援と通所による療育の保障を検討することが必要になってきています。平成26年度には、常時呼吸器を装着しておられる児童の療育グループが立ち上がりました。一方、重心~肢体不自由児等に対する一貫して包括的な小児リハ体制を圏域としてどうしていくのか、今のところ確固たる体制のイメージができておらず、これにも着手していかなければなりません。
こうした課題に一つずつ取り組んでいく所存ではありますが、鳥取療育園は私たちだけで運営されているわけではありません。まずは、ここに子どもたちが来てくれて笑顔を振りまいてくれていること、悩みながら育児に真摯に取り組み私たち職員をも励ましてくださる保護者の方々がいらっしゃること、園や学校、児童発達支援事業所など関係機関、医療や保健関係、本庁関係課など、多くの皆様に支えられ励まされながら子どもたちの支援に取り組むことができています。今後変わっていくものはあっても、子どもの支援に関わることの意義や使命は変わらず堅持し、継続的に50周年またそれ以降へとつないでいけたらと思います。
最後になりましたが、鳥取の地で生まれ育っていく子どもたちがどのような発達の課題があっても、「生まれてよかった」「生きててうれしい」「これからも生きていこう」と思えること、保護者にとっても「生んでよかった」「育ててうれしい」「これからも育てていこう」と思えるような子育てを願い、そうした支援の一つに私たちはこれからも参画できることに感謝し、そして誇りをもって療育に携わって参ります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。子どもとそこにいるすべての皆様へ、感謝とともに。