特集/国違っても地域の仲間~外国人との共生、まず理解から~

  県は、言葉や習慣の違いによって起こる地域住民や外国人住民の生活や労働の困り事を減らし、安心して皆が地域で暮らせるよう、関係機関と共に支援しています。多文化共生社会の実現のためには、異文化への理解も必要。互いに関心を持つところから始めましょう。

外国人の相談、まず財団へ

  県内には2018(平成30)年12月末現在、4600人超の外国人が居住し、その数は県人口の約1%。2005(平成17)年の最多4961人を境に減少に転じたものの、再びそれに迫る勢いです。国別内訳では、技能実習生としての在留資格(外国人が日本に滞在するための資格。「出入国管理及び難民認定法」により規定され、滞在目的・期間などが定められている。)取得者が著しく増加したベトナムが1143人で最多です。県は、公益財団法人鳥取県国際交流財団や関係機関と共に、県内に居住する外国人や地域の住民が安心して生活できるよう支援しています。
県内外国人住民数の推移グラフ

  財団は1990(平成2)年、多文化共生社会づくりと国際交流活動を推進する中核組織として設立されました。現在、鳥取市にある本所と倉吉および米子の事務所で、外国人の支援や県民の国際理解・ボランティア活動の支援を行うほか、日常生活の困り事相談を受けています。相談には、母国語で対応できる中国・台湾・米国・ベトナム出身の国際交流コーディネーターをはじめとして、翻訳機能がある機器も使用し、全職員が対応。16言語での相談に対応できます。
受付窓口のようす
鳥取市にある国際交流財団本所の受付窓口は気軽に訪ねられる穏やかな雰囲気(撮影協力はフェブリアニさん(インドネシア出身 鳥取市在住))

  寄せられる相談は、乳幼児健診、子どもの転校など子育てに関する手続きや、医療制度など。財団には行政や学校、各業界団体などの情報を集積しており、その中から内容に合った情報を提供し、必要に応じて専門機関への橋渡しをします。また、外国人の雇用を検討している事業主や「近所の外国人とコミュニケーションを取りたいが、どうしたらよいか」という地域住民からの相談なども寄せられます。
  財団では、多岐にわたる相談事を丁寧に聴き取り、適切な機関へ速やかに案内して在留外国人の不安を和らげつつ、日本語学習や通訳ボランティアの派遣などコミュニケーションを支援しています。また、日本人を対象に異文化への理解を深めてもらう事業を展開。互いの生活や文化を知ることは多文化共生の第 一 歩、迎え入れる心構えを私たちも学ぶことができます。

壁越える居場所を用意

公益財団法人鳥取県国際交流財団 事務局次長
岩本(いわもと) 由美子(ゆみこ)さん
岩本由美子さんの写真

  日本で暮らす外国人は、三つの壁を感じています。一つは「言葉」の壁。そして「制度」の壁。やがて言葉に慣れ、制度やルールが分かるようになっても、最後に「心」の壁が立ちはだかります。それは生活習慣や文化が違う、自分はよそ者という心の距離。しかし、信頼できる仲間を得たことで、この壁を克服した外国人のかたはたくさんいます。財団の「日本語クラス」は言葉を学ぶのはもちろん、居場所の機能も。
  参加者の一人が悩みを口にすると「私も通った道」「こうするといいよ」など、クラス生から国を問わず共感やアドバイスが。こんなやりとりは、仕事や結婚を機に遠方から転入した日本人同士でもありますよね。出身地の違いを越えての共感は、壁に突き当たっている当事者に安心を与えます。日本語クラスは4から7月、9から12月の毎週日曜に開催。私たちは、在留外国人が壁を越え、地域に溶け込めるよう、お手伝いをしています。

財団はこんな活動をしています

多文化への理解を深めたい人に
多文化共生出前講座
  「多文化共生」がテーマの研修会をお考えなら、お問い合わせを。目的に沿った講師を派遣します。申し込みは電話で受け付けています。

国際交流フェスティバル
  毎年9から11月、東中西部の各会場で開催。世界の料理や物販、歌や踊りのステージなどが楽しめます。入場無料。開催日・場所は改めて広報します。

子どものための異文化理解体験講座
  外国出身の国際交流コーディネーターや留学生などが小学校に出向き、多言語での歌やゲームを体験してもらうもの。異文化を身近に感じることで、子どもの探求心を引き出します。


日常生活の困り事がある人に
  相談内容に応じて適切な専門機関への橋渡しをします。通訳ボランティア(英語、中国語、ベトナム語に対応)の同行希望があれば調整も。外国人のほか、地域住民・事業所からの相談も受けています。
個別相談のようす
じっくり話ができる個別相談スペース


災害への備えには
  市町村窓口に非常時ハンドブックを置いてもらい、外国人の転入手続き時に渡してもらっています。
※多言語対応の鳥取県防災アプリ「あんしんトリピーなび」も併せてご活用を。アプリストアでダウンロードできます。


【問い合わせ先】 (公財)鳥取県国際交流財団
本所(鳥取市扇町)
電話 0857‐51‐1165 ファクシミリ 0857‐51‐1175
倉吉事務所(倉吉市東巌城町)
電話 0858‐23‐5931 ファクシミリ 0858‐23‐5932
米子事務所(米子市末広町)
電話 0859‐34‐5931 ファクシミリ 0859‐34‐5955
http://www.torisakyu.or.jp/

要望に応える教室開催

身近な題材で理解促す さかいみなと日本語クラス

  境港市では、在留外国人の6割に及ぶ約300人が技能実習生で、その多くが水産業に従事しています。数年前から「外国人が日本語を勉強できる場が市内にあれば」との声が企業から市へ寄せられていました。一部の地域では交流があるものの、多くの市民は外国人となじみがない状況に、境港市水産商工課の本角(もとずみ)有希子(ゆきこ)さんは「まずはお互いを知る必要があった」と交流会の目的を話します。
本角有希子さんの写真
境港市水産商工課の本角さん(写真提供は境港市)

  2018(平成30)年に始めた交流会は、婦人会をはじめ市民活動団体の協力を得て、ひな祭り・七夕などの行事や着付け・茶道など日本の文化に触れる場に。参加した外国人からは「着物を着たり、折り紙を優しく教えてもらったりして楽しかった」。市民も「思ったより日本語が通じて、みんな素直でかわいい」、企業からは「自社では企画できない体験をさせてもらってありがたい」と好評でした。こうして互いの存在を知り合って、翌2019年に日本語教室「さかいみなと日本語クラス」(文化庁「『生活者としての外国人』のための日本語教室空白地域解消推進事業」を活用。)を始めました。
  教室は3期に分け、1期当たり5回の実施。ごみ分別や交通安全などのルールや防災など身近なテーマで日本語を学んでもらいました。教材の漢字には振り仮名、イラストを入れてイメージしやすく。参加者によって理解度に差があるため、フォローし合えるグループ学習にし、日本人ボランティアがサポートします。昨年は各期七、八十人の申し込みがあり、人数は日によって異なるものの、十数人から60人超が学習。中には、「日本人の皆さんが優しいので毎回楽しみ」という参加者も。
講義のようす
教材も板書も漢字には全て振り仮名付きで分かりやすく

教材の写真
教材はコーディネーターの木下さんと佐々木さんが作成

年賀状書きのようす
筆ペンで年賀状書きに挑戦。大原さん(中央)とボランティア(右2人)が優しい笑顔で和ませる

かるたを使った学習のようす
「さかいみなと日本語クラス」では、外国人参加者がより楽しめるよう日本語学習にゲームを取り入れ。年末の学習では、かるたで学んだ

  「互いの理解が進めば、あいさつし合えるようになって、それが緊急時に声を掛け合う関係になる」と教室の意義を語る本?さん。昨年の実践を生かして、より伝わりやすく、参加者が達成感を感じられる教室運営を目指します。

日本語教室開催までの道のり

(1)まず交流会で互いの気持ちをほぐす
交流会のようす
日本文化を楽しむ様子を写真に撮って母国の家族や友だちに(写真提供は境港市)

(2)日本語教室の開催に向け、コーディネーター決定
  ※コーディネーターとは 日本語教育の知識やノウハウを持ち、地域の日本語教室でプログラムの編成・実施、地域の関係機関との連携・調整に携わる。
コーディネータ-3人の写真
(左から)大原浩明さん、木下朋子さん、佐々木邦広さん。「日本の文化を知って、生活も楽しんでほしい」

(3)日本語学習をサポートする日本語ボランティア募集
日本語ボランティアたちの写真
みんな初心者。会話の中で伝わらなかったら別の日本語に変えて話す、ゆっくり大きな声で話すなど奮闘中

国籍によらない雇用を整備

  「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が2019(平成31)年4月1日に施行され、新たな在留資格「特定技能」が創設されました。今後、さまざまな在留資格の外国人労働者のさらなる増加が見込まれることから、県は相談窓口の整備、外国人材受け入れに係るセミナーや企業が行う日本語学習会への支援を実施(下記「知って、使って 外国人雇用への支援策」参照)。外国人材の活用を検討する企業も増えつつあります。中には下記「支えに感謝、今後も奮起」に紹介する株式会社鳥取メカシステムのように、外国人材の雇用を進める企業も。国籍に関係なく、誰もが働きやすい環境づくりに県や国の支援策をご活用ください。

支えに感謝、今後も奮起

株式会社鳥取メカシステム
チン・バ・ズイさん (ベトナム出身 鳥取市在住)
チン・バ・ズイさんの写真

  ベトナムでは大学で電気電子工学、日本語学校で言葉や文化を学びました。日本には2013(平成25)年、技能実習生として埼玉県での在留以来2度目。技能実習を終えて帰国後、(株)鳥取メカシステムに日本人社員と同じ待遇で正社員に迎えられました。
  会社では、受注機械の製造や開発に携わるだけでなく、上司と共に通訳を兼ねてベトナムに渡り、現地での交渉やスタッフへの技術指導も。また昨秋から、終業後に毎日、技術用語や日本語の発音や文法、メールの送り方などを上司に教わっています。これは日本人のお客さまと製品の特長や使い方、改良点など技術的な話ができるようになるため。会社の自分への期待をうれしく感じています。
  会社には採用からずっと気に掛けてくれている塩根(しおね)透順(ゆきまさ)管理部長や、地域の祭りや交流会に誘ってくれる同僚、地域の皆さんも親切で優しい人ばかり。会社にあっせんしてもらったアパートではベトナム人同僚と自炊。地区の班長をして地域の清掃活動や町内会費の集金をし、近所の顔見知りも増えました。
  ここでの暮らしぶりや上司との大山登山の様子などをSNSやテレビ電話でベトナムにいる家族らに発信、向こうで安心してくれています。
  仕事も日本語ももっともっと勉強して、ずっと鳥取市で暮らしたいと思っています。
職場でのようす
設計図面を手に、同僚に作業工程を確認するズイさん

知って、使って 外国人雇用への支援策

雇用主の皆さまへ
相談窓口
  (公財)鳥取県国際交流財団(上記参照)、鳥取県行政書士会の外国人雇用サポートデスク、県庁雇用政策課などが相談を受け付けています。

外国人材受け入れに関するセミナー
  実態を伝えるとともに、ノウハウや心構えを促すセミナーを実施。

日本語学習会への支援
  企業が行う学習会の費用を助成。

【問い合わせ先】 県庁雇用政策課
電話 0857‐26‐7699 ファクシミリ 0857‐26‐8169
https://www.pref.tottori.lg.jp/279381.htm

外国人従業員に教えてあげて
労働相談
  外国語(英語・ベトナム語)による労働条件に関する相談を受け付けています。
【問い合わせ先】 外国人労働者相談コーナー(鳥取労働局)
電話 0857‐29‐1703
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/gaikokujin_roudou_soudan.pdf


外国人患者の受け入れ医療機関情報
  翻訳機器の設置や院内表示の多言語化など、安心して受診できる体制を整えている医療機関をウェブページに掲載しています。
【問い合わせ先】 県庁医療政策課
電話 0857‐26‐7173 ファクシミリ 0857‐21‐3048
https://www.pref.tottori.lg.jp/286618.htm

【問い合わせ先】
県庁交流推進課(多文化共生推進)
電話 0857‐26‐7123 ファクシミリ 0857‐26‐2164
県庁雇用政策課(外国人雇用支援)
電話 0857‐26‐7699 ファクシミリ 0857‐26‐8169


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