公文書館では破れや虫喰いなど修復を必要とする紙資料について、軽易なものは職員が修復作業を行っています。
そのスキルアップのため、10月26日、27日の両日、南部町在住の修復家・秦博志さん(Hata Studio経営)にお出でいただき、講義と実務指導をしていただきました。
講師・秦博志さん(修復家・修復工房Hata Studio経営)
はじめに、紙の「糸目」と「簀の目」(すのめ)について、それぞれの特徴や、特徴を生かした製本の仕方などのお話を詳しく教えていただきました。紙の厚さについても様々あり、修復をする際に、和紙を使い分けると仕上がりも美しいなどのお話や、欠落部分を先に補修してから裏打ちをするなど一手間かける方法なども伺いました。
さらに、紙のPHを測る方法や、脱酸の方法なども講義していただきました。
続いて、製本の方法のひとつとして、「くさり綴じ」を習いました。「くさり綴じ」は本来、綴じの初心者が習う方法ではないらしいのですが、既に裏打ちをした429丁のバラバラの簿冊はかなり厚みもあり、特別に教えていただける事になりました。7つに分けてそれぞれを仮綴じし、穴を開けてから全部合わせて4本の針で綴じていく方法です。厚みがあるので、ずれないように穴を開けるのが大変でした。
さらに、「三つ目綴じ」の方法を教えていただきました。「三つ目綴じ」は穴も3カ所なので比較的簡単です。解いたりまた綴じたりも容易にできるので、すぐにも使えそうな方法でした。
「くさり綴じ」の完成した資料
最後に参加した職員の感想を紹介します。
- すべて裏打ちをすると厚くなってしまうため、欠落部のみ補修するやり方など、細かい部分まで教えていただき大変勉強になった。今後の業務に少しでもいかせたらと思う。
- 見学時には出来そうだった作業も、実際に行ってみると、非常に繊細で細やかな作業がたくさんあり、簡単ではないことを痛感した。
- 綴じを教えていただくのは初めてで、とても勉強になった。また、元の状態に戻せる補修を心がけることが大切と言われ、自分の作業のやり方を見直したいと思った。
- 資料の状態によって適切な方法が異なるということ、修復するときはあとからでも元の状態に戻せるようにすることなど、保存・修復にあたっての大切な考え方、資料を適切に保存するための技術を教えていただき、学びの多い時間になった。
少人数での研修だったため、細かい部分まで詳しく教えていただけて、大変有意義な研修会となりました。
御指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。
令和4年10月1日(土)、倉吉博物館主催の講座が開催され、「昭和の合併と倉吉市誕生の歩み」と題して、当館の伊藤康専門員が講師を務めました。
10月1日は、ちょうど倉吉市制が始まった日にあたり、30名にご参加いただきました。
講座では、倉吉周辺町村の合併や編入に至る過程を、当館所蔵の公文書や図面を駆使して、分かりやすく解説しました。
参加者からは「昭和4年の倉吉町と上灘村の合併から詳しく丁寧に説明いただき、倉吉市の誕生の流れがよく分かった」「林野の所有権(財産区)を残しての合併が現在も残っているとの話を聞き、興味深かった」との感想をいただき、改めて倉吉市制の歴史を深く学ぶ機会となりました。
講座会場の様子
講座の様子(伊藤専門員)
令和3年7月18日(日)、県立博物館にて、第2回「高校生のための古文書ワークショップ」を開催しました。
これは、郷土の歴史を学びたい、大学等で歴史学を専攻してみたいという生徒や、学芸員など歴史に関わる職業に関心のある生徒を対象に、江戸時代以前の古文書の原本に触れて扱い方を学んだり、くずし字を読み解いて古文書の内容をまとめる体験を通して、ふるさとの歴史に対する理解を深めたり、今後の進路選択に役立ててもらおうというもので、今回は10名の高校生たちが参加してくれました。
はじめに、古文書を扱う際の留意点等について職員からの説明があり、そのあと実際に中世・近世の古文書に触れて、法量を採寸したり、形状や特徴を調査カードに記入して、調書を作成しました。
(写真1)古文書を丁寧に開いて熟覧し、調書を作成
次に4つのグループに分かれて、くずし字の解読に挑戦しました。わからない文字は辞典を引いたり、グループ内で相談したりして、熱心に解読に取り組んでいました。
(写真2)辞書を使ってくずし字の解読に挑戦
(写真3)難読文字は相談しながら解読
その後、展示用のキャプション(解説文)作成を行い、グループで話し合いながら解読した古文書の内容をまとめて、キャプションを作成しました。そして最後に、担当した古文書の内容についてグループごとに発表しました。
(写真4)話し合いながら内容を読み解き、キャプションを作成
(写真5)全体の前でグループごとに発表
古文書に触れたり、くずし字を読んだりするのは、全員が初めての体験でしたが、グループで和気あいあいと取り組み、キャプション作成でも質の高い内容をまとめ上げていました。参加した高校生からも「本物の史料に触れることができ、貴重で有意義な経験となった」「難しい1字が読めたときの喜びは大きかった」等の感想が寄せられました。
これからも、ふるさと鳥取への愛着や誇りの醸成、地域の歴史・文化を担う人材の育成という観点から、学校現場や教育委員会と連携を図りつつ、このような取り組みを進めていきたいと思います。