5 新生児聴覚検査について

(10)母子健康手帳への記載

 1か月健診の際に保護者へ結果を説明した際には、母子健康手帳の乳児の項「検査の記録」に新生児聴覚検査の結果を記載してください。 

 

 保護者への支援について(2)

1か月健診時に「要再検」の検査結果を保護者に告げた時は 、母子の健康を確認し、できるだけ早期に初回面接を予約することが家族の不安軽減に有効です。母親や家族の不安は「要再検」を告げられた時以上に、精密検査から診断までの期間の方が高いという報告もあります。軽中等度の聴覚障がいや重複障がい例では診断までに時間を要する場合もあるので、診断までの不安定な状態への適切な対応が求められます。

(症例A,7か月)精密検査病院からの紹介例。母親談「聴覚障がいを信じられなく、否定する気持ちが強かった。紹介された病院にすぐに行ったのに、そこでは検査だけで、また次の病院に行けといわれ、同じことを繰り返すなら行きたくない気持ちだった。病気もするし、こんな小さな子をあちこちつれて行くのはかわいそうに思った。何度か電話をもらい、もう1回だけ行ってみようと思って来た。補聴器をつけたら、こんなに変わったので、今では来てよかったと思う。」

 

この例のように、家族はただ検査が繰り返される状態では不安や不信を募らせます。初回検査時から家族の気持ちを受け止め、十分なコミュニケーションをとること、結果や経過を納得できるように説明し、検査の継続を励まし続ける対応が必要です。

(症例B,3か月)母親談「もし聴覚障がいがあってもどうすればいいかは知っていたので、子どもが安定するまで病院には来なかった。3か月たち、首もすわったので来た。要再検と告げられたとき、過剰に気を遣われすぎて、変な気分だった。」

(症例C,1歳2か月)母親談「スクリーニング検査で聴覚障がいは分かっていたが、聴覚障がいの兄も1歳2か月で病院に行ったので、それまで待った。すぐに風邪を引いたりして病気がちだったので、そっちを優先した。」

これらの例のように、自分の仕事や経験を通じて事前に知識を得ている人などは、様々な配慮がかえって聴覚障がいに対する否定的な感情を伝える結果を招くこともあります。
 また支援者自身の中に、「聞こえない、聞こえにくい」ことに対して否定的な気持ちや偏見がないかどうか吟味することも大切です。不用意な言動が誤解を生むこともあるので、これらのことを留意しておくべきです。
 検査の過程は不安ですが、その間に「聴覚障がい」に対する心の準備を形成することができる期間でもあります。支援者は、検査や面接時に子どもと十分な関わりを持ち、明るく楽しい関係を家族に示すことが必要です。一心に相手に注目する乳児や心地よさそうに反応を返す子どもの様子をみることによって、母親や家族の緊張が緩和し、次の来院や検査への抵抗感が薄らぐことにつながります。

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