【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
アルツハイマー型認知症の病因(アミロイドβ)を減らす新薬として、2023年12月に登場したレカネマブが大きなニュースになりました。その後、2024年11月にドナネマブという新薬も発売されました。今回はドナネマブについて簡単にご紹介し、認知症予防の重要性について改めてお伝えします。
ドナネマブはレカネマブと同様に、認知症そのものの進行を抑える
アルツハイマー型認知症の新薬ドナネマブは、レカネマブと同じように、脳内のアミロイドβを取り除く作用を持っており、認知症そのものの進行を抑える薬です。
アミロイドβは認知症を発症する20年以上前から脳内に少しずつ蓄積します。その影響で脳の神経細胞がだんだん死んでいき、ある段階に達すると認知機能が正常範囲よりも低下して、認知症と診断されます。
ドナネマブはアミロイドβの塊(老人斑)を取り除けますが、死んでしまった神経細胞を蘇らせることはできません。認知症が進むと効果が得られないので、処方できるのは軽度認知障害(MCI)~軽度の認知症までです。
また、脳にアミロイドβが蓄積していることを精密検査(脳脊髄液検査やPET検査)で確認できた人にしか投与はできません。投与条件はレカネマブとほぼ同じです。
ドナネマブとレカネマブの違いは?
ドナネマブとレカネマブはほぼ同じ作用を持つ点滴薬ですが、患者さんの利便性の点で大きな違いがあります。レカネマブは2週間に1回投与する必要がありますが、ドナネマブは月に1回の投与でいいという点です。
また、治療期間はどちらも1年半が原則ですが、ドナネマブの場合は画像検査でアミロイドβが除去できたことを確認できれば治療を終了できます。
有効性(効果)と安全性(副作用)については、開発時の研究(治験)では大きな違いはなく、どちらが良い・悪いとは判断できません。これから実際に患者さんに使われていって、年単位での報告が蓄積されていく中で明らかになっていくでしょう。
1年間にかかる薬の値段は、レカネマブは約298万円、ドナネマブは約308万円です。非常に高い薬ですが、健康保険と高額療養費制度が使えますし、独自の助成制度を設けている自治体もありますので、自己負担は抑えられます。詳しくはお住まいの自治体窓口にお尋ねください。
さらなる新薬の登場を期待して、認知症予防に取り組もう!
これまで、認知症の進行を遅らせる薬の候補は数多く見つかりましたが、なかなかうまくいかず、多くは開発中止となりました。薬の開発には巨額の資金が必要です。認知症の新薬を開発する意欲が削がれる雰囲気になっていた時期もありました。
そんな中、何とかレカネマブが発売までこぎつけたことで、製薬会社が認知症の新薬開発へのやる気を取り戻してきています。現在、新たな薬の開発も進んでいます。
このような状況で、私たちがすべきことはやはり認知症を予防する生活習慣(運動・知的活動・コミュニケーション)を身につけることです。
体内にはもともとアミロイドβの蓄積を抑える仕組みが備わっています。なるべくアミロイドβの蓄積を遅らせて、認知機能もMCIや軽度の認知症のレベルに留めておくことで、より良い新薬を使える可能性を高めることができます。
認知症の新薬開発が期待できる時代だからこそ、認知症予防を行うメリットはさらに高まっているのです。
鳥取県の公式LINE「脳とからだの健康LINE」では、認知症やフレイルを予防するために知っておきたい情報を定期的に配信しています。こちらを参考にして、認知症予防に取り組んでください。