第51回県史だより

目次

江戸時代の「神社御改帳」

 江戸時代を対象とする近世部会では、県内を因幡(東部)・東伯耆(中部)・西伯耆(西部)の3地域に分け、それぞれの地域に関する重要な古文書を収録する資料編各1巻を刊行することとし、現在、県内に残る主要な古文書の調査・解読に取り組んでいます。

 資料編に収録することを検討している史料のひとつに、「神社御改帳(じんじゃおあらためちょう)」という史料があります。鳥取藩では、藩内各村に所在する神社を把握するため、各郡ごとに「神社御改帳」を何度か作成させて、藩に提出させており、その一部が、県立博物館の所蔵する「鳥取藩政資料」に残されています。

河村郡神社御改帳の表紙の写真
河村郡神社御改帳の表紙

 「神社御改帳」の記載の一例として、寛政7(1795)年の「河村郡神社御改帳」の宮内村(現湯梨浜町)部分を紹介しましょう。


宮内村

鎮座所村より北ニ当、祭日四月朔日・九月九日

一 本社一宮大明神        神主

荒井佐渡

祢宜巫女

前田宮記

社三間ニ弐間栩葺、拝殿二間四方茅葺、社地随神門路より本社迄百九拾間半、東西七拾六間、社木桜・松、桜は枯申候、外、松林・竹藪、御免地有、随神門四間ニ弐間瓦葺、鳥居高壱丈四尺、横壱丈壱尺、釣鐘堂壱間四方茅葺、社領高四石九斗弐升、回廊長弐間、横八間瓦葺、神楽殿弐間四方瓦葺

右之社地、御除地相違無御座候。

庄屋利左衛門

年寄千次郎

河村郡神社御改帳の宮内村部分の写真
河村郡神社御改帳の宮内村部分

 ここに記された「一宮大明神」は、伯耆一宮として知られる現在の倭文(しとり)神社のことです。このように、「神社御改帳」には、神社の位置、祭日、祭られる神名、神職の名、社殿や付属の建物の規模や屋根の葺き方、社地の広さ、社領の有無等が詳しく記されます。宮内村には、たまたま「一宮大明神」の1社以外に神社はなかったようですが、他の村の記載には、氏神社の境内の末社をはじめ、小さな祠(ほこら)を含め、村内に祭られた全ての神名が記されています。神名には、「稲荷」「山の神」「道祖神」といった全国的によく祭られる神もありますが、中には、どのような神様かわからない、その村独特の神名も見受けられます。

 明治維新後、政府は神仏分離政策を行い、神社から仏教色を廃し、また明治末期には神社合祀(複数の神社の祭神を一つの神社に統合する政策)が進められ、多くの小祠が姿を消しました。私たちが現在見ている神社は、そのような変化を経た姿です。「神社御改帳」には、そのような変化以前の地域の神社の実態が記されています。この史料によって、各村ごとに江戸時代の神社の状況を知ることができると同時に、各地域に祭られていた神々を比較することにより、地域の民俗信仰の特色も伺えると思われます。近世部会では、「神社御改帳」をはじめ、江戸時代の各地域の特色が伺える史料を順次解読していきたいと考えています。

(坂本敬司)

最近の活動から:第1回新鳥取県史専門部会を開催

 平成22年度の第1回新鳥取県史編さん専門部会(民俗)平成22年7月9日、(考古)平成22年7月12日(近世)平成22年7月13日を開催しました。

 各部会とも、昨年度の事業報告に続き、編さん事業の基本方針の確認、活動予定、県史ブックレットのテーマなどについて、活発な協議が行われました。

平成22年度第1回専門部会(民俗)の写真
平成22年度第1回専門部会(民俗)での協議の様子
平成22年度第1回専門部会(考古)の写真
平成22年度第1回専門部会(考古)での協議の様子
平成22年度第1回専門部会(近世)の写真
平成22年度第1回専門部会(近世)での協議の様子
近世部会の鳥取県立図書館所蔵の和本調査の写真
近世部会の鳥取県立図書館所蔵の和本調査の様子

 また近世部会では協議終了後、刊行を計画している「地誌編(仮称)」への掲載候補資料の選定のため、近世の著作物を数多く所蔵する県立図書館の調査を行いました。

 調査では県立図書館が所蔵する郷土関係近世和本の概要を把握し、掲載候補資料の選定を行いました。

活動日誌:2010(平成22)年6月

3日
民具調査(鳥取県立二十世紀梨記念館、樫村)。
4日
遺物借用(鳥取市埋蔵文化財センター・鳥取市鹿野町、湯村)。
5日
県史編さん協力員(古文書解読)東部地区月例会(鳥取県立博物館、坂本)。
民俗調査(鳥取市気高町宝木、樫村)。
6日
県史編さん協力員(古文書解読)中・西部地区月例会(倉吉市・米子市、坂本)。
9日
鳥取学講義(鳥取環境大学、岡村)。
民具調査(鳥取県立二十世紀梨記念館、樫村)。
10日
シンポジウム打合せ(東京都:峰岸純夫氏宅、岡村)。
11日
史料調査(東京大学史料編纂所、岡村)。
13日
むきばんだ考古学講座講師(むきばんだ史跡公園、湯村)。
14日
民具調査(湯梨浜町泊歴史民俗資料館、樫村)。
16日
民具調査(鳥取県立二十世紀梨記念館、樫村)。
20日
民俗(口承文芸)調査(米子市、樫村)。
23日
史料調査(兵庫県豊岡市:円通寺、岡村)。
民具調査(鳥取県立二十世紀梨記念館、樫村)。
25日
民具台帳納品(湯梨浜町教育委員会、樫村)。
29日
史料調査(鳥取県立博物館、樫村)。
30日
民具調査(鳥取県立二十世紀梨記念館、樫村)。

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編集後記

 昨年は冷夏でしたが、今年は7月下旬から猛暑が続いております。

 今回の最近の活動からでは、すでに開催済みの専門部会について報告しました。7月29日には現代部会、7月30日には近代部会、9月には古代中世部会の開催を予定しています。これについても別途御報告したいと思います。

(樫村)

  

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