○ 平成19年10月1日現在の人口推計で、鳥取県の人口は、60万人を下回った。近年の傾向として、自然減に加えて、転入者の減少による社会減が拡大している。
○ また、国立社会保障・人口問題研究所の推計(平成19年5月)によると、鳥取県の人口は、今後一層減少が進み、平成47年には50万人を下回るものとされている。同研究所の推計によると、人口減少と併せ、平成47年には、人口構成も、老年人口割合(65歳以上)が34.5%(平成17年国勢調査時点では24.1%)と高く、生産年齢人口割合(15~64歳)が低くなるものとされており、地域社会の活力の減退が懸念される。
○ 都市と地方との間には、依然として大きな地域間格差があり、拡大する傾向にある。
- 地域経済は低迷を続けている。また、本県事業者は、小規模事業者が多く、下請構造から脱し切れていないことから、期待される地域経済の活性化等の役割を果たすことが厳しい状況にある。
- 企業の新規立地については、もともと産業基盤が脆弱でインフラ整備も遅れており、財政力も十分でないことから、産業基盤が強い地域との格差が拡大する傾向にある。
- 有効求人倍率も低迷しており、若年層の早期退職や非正規雇用が増加し、雇用のミスマッチも発生しているなど、県内における雇用の確保が喫緊の課題である。
- 一人当たりの県民所得は、231万円(平成17年度)で、全国40位であり、大 都市圏との格差は拡大の傾向にある。
- 高速道路ネットワークの整備は著しく立ち遅れている。
- 最近の景気回復によって地方公共団体全体では税収が増加しているものの、法人事業税など偏在性の高い税目に依存した税収構造であることから、大都市圏との税収格差は拡大している状況にある。また、三位一体改革による一方的な地方交付税の減額が厳しい財政状況に拍車をかけている。
○ 過疎・中山間地域では、少子・高齢化や人口・世帯数の減少に伴い、地域産業や生産活動が衰退し、地域コミュニティを支える住民自治活動ができなくなるなど、日常生活を地域で支えることが困難となっている地域も見られる。
また、携帯電話不感地区等の情報格差、生活交通や医療の確保に対する不安等、過疎・中山間地域に居住される方や高齢の方などにとって、日常生活の利便性の確保に対する懸念や、安全・安心など、生活上での不安が生じている。
○ 県債残高は、財政改革の効果もあり、以前の一貫した増加基調から、近年はほぼ横ばいとなっているが、依然として予算規模の2倍近い残高を抱える。基金残高は減少を続け、平成19年度末には約400億円となっている。
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○ 鳥取県の厳しい現状を認識する一方で、豊かな自然、温泉、歴史、芸術・文化、食、建築物、まちなみ、伝統技能、地域産業等を始めとして、鳥取県内に居住していると日頃気付かないもの、当たり前と考えているものの中にも「良いところ」や「誇りを持てるところ」がある。それらを改めて再認識する。
○ 鳥取県の特性として、次のような点があげられる。
- 東部、中部、西部の各圏域それぞれに中核となる都市地域があり、その都市地域から比較的近接したところに中山間地域があるという、都市地域と中山間地域とがネットワークをつくりやすい県土構造であること。それに加え、中山間地域の生活を支える一般道路について、今後一層の整備等が必要な箇所はあるが、本県は他県に比べれば比較的整備、改良等が進んでいる方であり、このことが中山間地域から都市地域への通勤のしやすさ等にもつながっていること。
- 人と人、人と地域との結びつきが強く「顔が見える関係」であるという面が、他県に比べ残っていること。
- コンパクトなまとまりがあり、コミュニケーションやネットワーク形成が容易である。また、NPO、ボランティア活動が活発であること。
- 農家人口が県民の4分の1近くを占め、自然や地域社会と深い関わりの中で生活していること。
- 人口当たりの保育所数、子育て支援の拠点実施割合等が全国的には上位にあるほか、三世代同居率が高いなど、比較的子育てをしやすい環境にあること。
- 二十世紀梨、らっきょう等を始めとする多彩な農業、境港に代表される水産業や、集積度が高い電子部品・デバイス製造業、情報通信産業、食品加工業等のように、多彩で特色ある産業が立地しているほか、鳥取から生まれた氷温技術や、鳥取大学乾燥地研究センターや財団法人日本きのこセンターで行われている調査研究など、特色のある技術開発や調査研究が行われていること。 など
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○ 鳥取県は、地理的に北東アジアに近いという特性があり、西日本と北東アジアとの間における主要な拠点・ゲートウェイとなる。また、地理的に近畿圏域とも近く、高速交通体系の整備等を踏まえ、鳥取県から近畿圏域に豊かな食材を提供したり、逆に近畿圏域から豊かな自然環境に恵まれた鳥取県を訪問したり、さらには移住したりするなど、双方向の結びつきが強くなることが見込まれる。さらに、鳥取県の企業と近畿圏域の企業とが連携した国内外での事業活動が進展するなど、近畿圏域との連携により大きな効果・成果を生むポテンシャルを有する。
- この可能性を現実の果実に結びつけるため、高速道路の整備と鉄道の高速化や定期航路の拡充に向けた取組みのほか、効率的な物流システムの構築など、環境整備を進めるほか、豊富な食材、生活の価値を実感できるライフスタイルなどの鳥取県の特徴ある地域の魅力をより一層磨くとともに、その情報を国内外に効果的に発信する。
- また、中国地方知事会に加え、近畿ブロック知事会・関西広域機構に加入するなど、中国圏域の一員であることは当然のこととして、広域連携の観点から近畿圏域の一員としても活動し地域間連携を深めるほか、近隣県・関係県との地域間連携を進め、広域観光や食、防災、医療等を始めとする広域連携や新たな施策・課題に一緒に取り組む。
○ 鳥取県は、ボランティア活動(まちづくりのための活動や自然・環境を守るための活動等)に住民が関わった割合が全国一であるなど、住民が主体となって、企業やNPO、住民団体等と協働・連携して、自らの手で地域づくり等を進めていく素地がある。
- この素地を活かし、地域住民、NPO等が、その地域にあったスタイルで、公園、河川敷等の公共空間を利活用して地域づくりや賑わい創出を行うなどの活動を行い、行政は、地域住民、NPO等の活動が円滑に行われるよう、個別事案ごとに最も適した内容のサポートを行う、という鳥取県型の協働連携モデルを全県で展開していく。
- さらに、公園、河川敷等の公共空間の利活用の場合のみに限らず、NPO等による様々な地域づくり活動が円滑に行われるよう、そのニーズに応じて行政が個別事案ごとに最も適した内容のサポートを行うモデルを確立する。
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○ 「生活する・暮らす」という面から見たとき、鳥取県に優位性があると考えられる点を認識する。
例えば、
- 鳥取県の生活環境の良さ(空気・水のきれいさ、自宅周辺の道路の整備状況、環境衛生(ゴミ、下水道等)の良さ等)
- 鳥取県には、人と人、人と地域との結びつきが強く「顔が見える関係」であるという面が大都市圏に比べ残っていること。
- 鳥取県では、働く場所と住む場所とが近接している、時間に追われていないこと。 など
○ 今後の鳥取県の位置付け(全国の中における存在意義)、鳥取県らしさや、大都市圏との関係において、今後の鳥取県が何を提供し、どういう位置を占めるべきか、が大切である。
○ 鳥取県の特性を活かし、また、今後の鳥取県ならではの魅力を研ぎ澄ましていくことにより、大都市圏から鳥取県に人を呼び込む。
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○ 地方分権の進展に伴い、国と地方の役割分担の見直しや、地方への権限・税財源の移譲が行われている。また、地方においては、自らの責任と判断によって地域課題を解決することが求められている。
そのような地域運営の実現に当たっては、まず、各主体が自立し、責任をもって自分たちの活動分野に関することについて考え、決めていくことが必要である。
○ しかし、鳥取県は、人口も少なく、各主体がバラバラに孤立した活動を展開していては、それぞれの主体が持っている力を十分に発揮させ、地域づくりにつなげることができない。
そこで、ボランティア活動(まちづくりのための活動や自然・環境を守るための活動等)に住民が関わった割合が全国一であるという鳥取県の特性等を活かし、県民、NPO、住民団体、企業、大学等の様々な主体と県、市町村が、お互いにネットワークを張り、情報を共有して、協働・連携していく必要がある。
(ネットワークの例)
- 産学金官の柔軟な連携により、ビジネスの連携を構築する。
- 地域交通の確保等様々な地域の課題について、県民、企業等と県、市町村が 連携して、解決に取り組んでいく。
- 隣県・近畿圏との地域間連携や、北東アジア地域との国際連携を進め、様々な行政課題等に取り組んでいく。
○ 県民、NPO、住民団体等の各主体が主役となってネットワークを張り、情報を共有して協働・連携し、行政がこれらの活動と連携し、補完を行うことが、これからの社会システムとしての、県民等による地域運営の実現につながる。
○ なお、これらの活動の大前提として、一人ひとりの人権が大切にされ、それぞれの個性と能力が十分に発揮できることが大切であり、ユニバーサル社会、男女共同参画社会、ワーク・ライフ・バランス等の視点をもって地域づくりを進める。
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