第55回県史だより

目次

古墳の測量調査を実施中

 古墳は土を盛り上げたり、山を削ったりして造られたお墓です。上から見た形によっていくつかに分類されますが、前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)、前方後方墳(ぜんぽうこうほうふん)、円墳(えんぷん)、方墳(ほうふん)が一般的です。

古墳の形の図
古墳の形

 古墳が造られたのは3世紀後半から7世紀末までの、約400年間です。そのうち6世紀末までは、前方後円墳を頂点として、以下、前方後方墳、円墳、方墳という、古墳の形による序列が設けられたと考えられており、古墳により特徴づけられる時代だということで、古墳時代と呼ばれています。前方後円墳が造られなくなる7世紀以降は、時代区分としては飛鳥時代と呼び、この時代の古墳を終末期古墳と呼んで、古墳時代とは区別しています。

 また土を盛り上げて造ったお墓は、古墳時代に先立つ弥生時代にもありますが、古墳とは呼ばずに墳丘墓(ふんきゅうぼ)と呼んで区別しています。

 鳥取県は全国的に見て古墳の多い地域です。現在知られているだけで約13,500基を数えますが、未発見のものや、すでに壊れてしまったものもかなりあると思われ、実際に造られた数はもっと多かったことでしょう。古墳が密集して造られたところを古墳群と呼びますが、100基程度からなる古墳群も珍しくありません。

 鳥取県最大の古墳は湯梨浜町にある北山1号墳で、全長は110mです。このほか県内には70mを超える古墳が約10基あります。これらはいずれも前方後円墳で、県内各地を治めた首長墓と考えられます。

 古墳の研究は、墳丘や埋葬施設の形や造り方、副葬品の内容などを基に進められます。このようなことを明らかにする方法としては発掘調査や測量調査がありますが、県内の主要な古墳で、そうした調査が行われた古墳はほとんどなく、造られた時期や正確な大きさが不明なものがたくさんあります。

 鳥取県には妻木晩田(むきばんだ)遺跡や青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡、上淀廃寺(かみよどはいじ)といった、弥生時代や飛鳥時代の著名な遺跡が知られていますが、その間の時代を特徴づける古墳の調査を進めることが、鳥取県の古代の様相を明らかにするうえで不可欠となってきます。

 そのためには発掘調査を行うのが最良の方法なのですが、相当の理由なくむやみに古墳を掘り起こすことはできませんので、しっかりした測量図を作成し、古墳研究の基礎資料を積み重ねることが当面の課題です。

 こうしたことから、県史編さん室では平成19年度から県内の主要な古墳の測量調査を行っています。昨年度までに三崎殿山(みさきとのやま)古墳(南部町)、古郡家(ここおげ)1号墳(鳥取市)の測量を終え、今年度は六部山(ろくぶやま)3号墳と面影山(おもかげやま)73号墳、空山(そらやま)古墳群(いずれも鳥取市)の測量を行いました。

空山古墳群での3次元レーザー測量の様子の写真
空山古墳群での3次元レーザー測量の様子
面影山73号墳での3次元レーザー測量の様子の写真
面影山73号墳での3次元レーザー測量の様子

 測量の方法は航空写真測量、3次元レーザー測量、手測りで1点ずつ測る測量などさまざまですが、古墳の形を25cm間隔の等高線で表現したり、石を積み上げた埋葬施設の全面を細かく図化するなど、現在の研究水準に応えられるような調査を行っています。測量後はできあがった図面の詳細な検討を行い、調査成果を随時公表していきますのでご期待下さい。

(湯村 功)

最近の活動から:新鳥取県史シンポジウム「因幡・伯耆の戦国時代―『境目』地域を生きた人々―」を開催

 2010(平成22)年11月27日(土)、米子市文化ホールで新鳥取県史シンポジウム「因幡・伯耆の戦国時代―『境目』地域を生きた人々―」を開催し、約100名の方にご参加いただきました。

シンポジウム会場の様子の写真
シンポジウム会場の様子
基調講演をする峰岸純夫氏(東京都立大学名誉教授)の写真
基調講演をする峰岸純夫氏(東京都立大学名誉教授)
コーディネーターを勤めた錦織勤氏(鳥取大学教授・新鳥取県史編さん古代中世部会長)の写真
コーディネーターを勤めた錦織勤氏(鳥取大学教授・新鳥取県史編さん古代中世部会長)
報告をする秋山伸隆氏(県立広島大学教授・新鳥取県史編さん古代中世部会委員)の写真
報告をする秋山伸隆氏(県立広島大学教授・新鳥取県史編さん古代中世部会委員)
報告をする岡村吉彦専門員(県立公文書館県史編さん室)の写真
報告をする岡村吉彦専門員(県立公文書館県史編さん室)

 シンポジウムでは、まず峰岸純夫氏(東京都立大学名誉教授)が「戦国争乱のなかの『境目』」と題して基調講演を行った後、新鳥取県史編さん専門部会(古代中世)の委員である秋山伸隆氏(県立広島大学教授)、岡村吉彦専門員(県立公文書館県史編さん室)が、個別報告を行いました。

 「境目(さいめ)」「半納(はんのう)」などの戦国時代研究のキーワードを、初めて聞いた方も多かったようですが、新鮮なテーマと感じられたようです。最後には活発な質疑応答もありました。

 寒い中、多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。

活動日誌:2010(平成22)年10月

1日
民具調査(米子市立山陰歴史館・松江市美保関町森山、樫村)。
2日
県史編さん協力員(古文書解読)東部地区月例会(県立博物館、坂本)。
3日
県史編さん協力員(古文書解読)中・西部地区月例会(倉吉市・米子市、坂本)。
5日
古墳測量入札(県立公文書館会議室)。
6日
資料返却(三朝町穴鴨、坂本)。
民具調査(鳥取二十世紀梨記念館、樫村)。
7日
資料調査(~8日、鳥取市佐治町総合支所、西村・大川・足田)。
民具調査(島根大学汽水域研究センター中海分室、樫村)。
14日
都道府県史協議会(青森県庁、湯村)。
民具調査(鳥取二十世紀記念館、樫村)。
19日
民俗(両墓制)調査(大山町豊成、樫村)。
20日
古墳測量調査説明会(鳥取市久末・桜谷・東今在家、湯村)。
シンポジウム打合せ(米子市文化ホール、坂本・岡村)。
24日
資料調査(智頭町誌編さん室、大川・足田)。
26日
古墳測量調査(~27日、鳥取市久末空山古墳群、湯村)。
出前講座(日立金属鳥取工場、西村)。
27日
中世史料調査(~11月2日、和歌山県立博物館・和歌山県立図書館・熊野本宮大社・相国寺光源院・京都大学文学部・承天閣美術館・松尾大社・京都府立総合資料館、岡村)。
30日
日本民具学会第35回大会(~31日、川越市市民会館、樫村)。

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編集後記

 今回は考古部会が実施している古墳測量について報告です。重要な古墳の正確なデータを収集していますので、調査結果にご期待ください。また11月27日に新鳥取県史シンポジウムを開催し、大勢の方に来場いただきました。戦国時代における最先の研究に、来場した方々も熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

(樫村)

  

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