令和7年3月6日(木)、県立図書館大研修室にて、資料保存・修復研修会を行いました。講師は、南部町で修復工房「HATA Studio」を経営されている秦博志さんです。秦さんは、県内外の文化財や書画の修復に携わり、修復に関する指導・助言、被災資料の救済等幅広く活動されています。
今回の受講者は県内の図書館・博物館等の職員18名でした。

「HATA Studio」代表 秦博志さん
研修では、(1)講義、(2)裏打ち、(3)虫食いや破れのある資料の修復(繕い)を行いました。
(1)講義
資料修復の原則は、できるだけ元の形態で保存することです。資料の持つ複合的な劣化要因を踏まえつつ、資料修復を行う必要があるという話をしていただきました。

裏打ち指導の様子

裏打ち実習の様子
(2)虫食いや破れのある資料の修復(繕い)
資料には保存環境により虫食いや破れなどの劣化が見られることがあります。今回は虫食い部分を補修する「繕い」と、繕い用の「喰い裂き」(和紙の切り口に繊維の毛羽を出すようにしたもの)作りの実習をしました。

繕い、喰い裂き作りの実習風景

繕い、喰い裂き作りの実習風景
【受講者の声】
- これまでは、糊をそのまま使用していたが、水で薄めて使うということと、その薄さに驚きました。図書館では主に書籍を扱いますが、修復の際、最小限の濃さを意識して、利用と保存を考えながら今後に活かしていきたいです。
- 資料補修の技術が実践とともに学べて大変勉強になった研修会でした。
学んだことを業務に反映させていくには、質疑応答にもあった道具の準備や個々の資料の状況に応じた補修などを考えると、県立博物館のように継続的に所蔵資料の補修を進めていく体制の構築から考えていく必要があることを感じました。
また、資料補修について事業者に出した時にどの様なことがなされているのか、その一端を身をもって学べたことは有意義だったと思います。
【最後に】
秦さんには、「今修復することは、50年、100年後の人へ資料をつないでいくため、また安全に再修復できるようにするためであるが、それは資料の状態を共有し相談しながら、適した修復方法を見つけていくことが大切」だと話をしていただきました。
図書館、博物館、公文書館では扱う資料は異なりますが、資料の保存と利用に携わる者として、50年、100年後の人へつないでいくために必要な経験と知識を学ぶ機会を持ち続けていくことが大切であると思います。
ご指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。
12月21日(土)午後2時から4時まで、鳥取市歴史博物館において、12月例会を開催しました。
最初に、前回質問のあった「中国電力は中国配電とどこが合併してできたのか」について、各地の電力会社が中国電力となるまでの変遷について、澤田晶子調査委員から説明がありました。
今回の軍政部活動報告書の解読では、前回に引き続き昭和24年2月分を行い、「統制会」「闇市」「賠償機械」「学校視察」「学校改革」「教育委員会」の項目を解読しました。
解読内容に関して、会員からは、木炭は当時公定価格で取引されていたということだが、そんなにも重要だったのかということや、高校を統廃合した跡地のこと等の質問や体験談がありました。

(写真1)高校の統廃合についての解説の様子
今回の会では、横山展宏学芸員が神戸映画資料館から借用した漫画映画「森の泣蟲坊や」を鑑賞しました。この映画は、1928年作成の「モリノナキムシコゾウ」(軍政部活動報告書に出てきたものだが、アニメーション史のWeb サイトや書籍にも記載がない)ではないかと推測している映画です。
映画を見た会員からは、「思ったよりちゃんとしていて、動きがなめらかだった」「よくわからない」「フィルムが逆につながれているのではないか」「女性(狸が化けているのでは?)がグラスに変わっていくところがディズニー映画のよう」等の感想や意見がありました。

(写真2)漫画映画の関連事項の解説の様子
今後も、報告書を解読して内容の疑問点等も調査しながら、占領期の鳥取の実態を明らかにしていきたいと思います。
令和6年8月25日(日)、難波洋三島根大学客員教授、吉田広愛媛大学ミュージアム教授を講師にお招きし、とりぎん文化会館第1会議室において、新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の銅鐸・武器形青銅器の研究』を開催しました。参加者は41名でした。

(写真1)講座の様子
講演では、難波先生に「鳥取県の銅鐸についての新たな調査成果」というテーマで、出土情報の整理、資料の観察によって新たに判明した「伝大阪府出土銅鐸」(鳥取県立博物館蔵)とそれと同じ鋳型から作られた銅鐸との関係の他、「木山氏所蔵銅鐸」の位置づけ等について解説していただきました。

(写真2)難波洋三先生「鳥取県の銅鐸についての新たな調査成果」
また、吉田先生には「久蔵峰銅矛と某神社旧神宝銅剣」というテーマで、久蔵峰銅矛(琴浦町出土)と某神社旧神宝銅剣(出土情報不明)が、ともに類を見ない特徴的な武器形青銅器であることや、両者の形状の由来とその後への影響、銅剣にあらわされたサメとみられる線刻絵画などから、両者が鳥取に所在する意義について解説していただきました。

(写真3)吉田広先生「久蔵峰銅矛と某神社旧神宝銅剣」
興味深いお話が多く、参加者の方々は、青銅器や鳥取県の弥生時代に関する関心を一層深めていただいたものと思います。