活動日誌

  
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2024年3月21日

資料保存・修復研修会を開催しました。

 令和6年3月12日(火)、県立図書館大研修室にて、資料保存・修復研修会を行いました。講師は、南部町で修復工房「Hata Studio」を経営されている秦博志さんです。秦さんは、県内外の紙資料の修復を手がけており、県立博物館で開催された企画展「根本幽峨」の資料の修復も行いました。今回の参加者は県内の図書館・博物館等の職員18名でした。

講師の秦博志さん
「Hata Studio」代表 秦博志さん

 

 研修では、(1)裏打ち、(2)昭和期発行の刊行物の修復を行いました。

(1)裏打ち

 裏打ちは、正麩糊(小麦粉のでんぷん糊)を使って資料の裏に薄い和紙を貼りつけるものです。昨年度も実習しましたが、一度では習得が難しい技術ですので、今年度も優先的にプログラムに加えました。昨年度同様、まず秦講師に手本を見せていただき、それから各自が実習しました。

 

秦講師による裏打ち作業の様子
秦講師による裏打ち作業の様子

 

裏打ちした資料を板に貼りつけて乾燥させる
裏打ちした資料を板に貼りつけて乾燥させる

 

(2)昭和期発行の刊行物の修復

 昭和期発行の刊行物はホチキス等の金具で綴じてあるものが多く見られます。ホチキスは年月が経つとさびてしまい、その周辺の紙が破損します。今回は、表紙と見返しの糊付け部分を水を使って丁寧にはがし、ホチキスを取り除き、穴を開けて糸で綴じ、正麩糊を付けて表紙を元に戻す方法を実習しました。

 

刊行物の修復の実習風景
刊行物の修復の実習風景

 

 最後に参加した職員の感想を紹介します。

  • 古文書を糊で繋いだとき、上から刷毛で強く叩くことに驚きましたが、そういった体験から、紙と糊が何でできていて、どのように作用して張り付けることができるのかを考えるなど、紙、資料についての理解が少し深まったように感じました。
  • 今後、状態の悪い資料を目にしたときに、どんな処置が必要か、それを自分たちでするのか、専門家に外注するのか、などの判断ができるようになったことが大きな成果だと思います。
  • 「針金綴じの資料の手当て」については、日頃よく目にするものなので、他の職員に伝達研修をし、郷土資料の保存に活かしていきたいです。
  • 博物館、公文書館、図書館それぞれ扱う資料は異なるが、いろいろな技術や知識を習得することも大切だと思いました。
  •  

     研修の中で秦さんは、「正麩糊を使っての資料修復は昔から行われている。現在までよい状態で残されていることから、歴史に裏付けされた最善の方法である。」と説明されました。技術を伝えていくことで、資料を永久に残していくことが可能です。紙資料の利用や保存に携わる者として、少しでも技術を学び、伝えていくことができればよいのではないかと思います。

     御指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。

    公文書館 2024/03/21 in 公文書担当,講座などのイベント

    2023年11月15日

    職員対象の資料修復研修会を開催しました。

     11月7日、8日の両日、県立図書館と公文書館の職員対象の資料修復研修会を開催しました。講師は、南部町在住の修復士・秦博志さん(Hata Studio代表)です。

     

    講師・秦博志さん
    講師・秦博志さん(修復士・修復工房Hata Studio代表)

     

     両日とも6名ずつの参加で、同じ内容で講義と実務指導を行っていただきました。

    (1) 講義

    ア:資料修復の原則

     修復は必要最小限にとどめ、元の状態を壊さないこと。元に戻せる材料や方法を選ぶ必要があります。修復の際に、本紙(修復する資料)より薄い和紙を使用し、小麦粉のみで作られた正麩糊を使うのはそのためです。

     ただし極力手を加えないとは言っても、酸性紙などのように保存しているだけで自然に劣化していくものなどについては、劣化を遅らせる処理なども必要になります。

     

    イ:紙の特徴

     和紙を透かして見ると、縦横に線が入っているのが分かりますが、線が濃く入っているのが「糸目」で、線が薄く入っているのが「簀の目(すのめ)」です。紙を漉く際には前後に揺するため、繊維が「糸目」に沿って並びます。そのため、「糸目」方向には裂けやすく、折り曲げやすいのです。また、水分は繊維と繊維の間に入り込むため、「簀の目」方向に伸びやすい性質もあります。これらの紙の特徴を活かして修復、製本を行うとよいとの事でした。

     

    (2) 実習

    ア:裏打ち

     裏打ちには「送り」と「投げ」という技法がありますが、今回は「送り」による裏打ちを行いました。糊の濃さは刷毛から糸のように垂れる程度。想像以上に薄い糊を使用します。

     

    裏打ちの実習風景
    裏打ちの実習風景

     

    イ:食い裂きによる繕い

     食い裂きは、和紙を細くちぎって虫食いなどの部分を埋めていく技法です。先に和紙を細長くちぎったものを用意しておくと便利だということでした。食い裂きの毛羽を活かし、虫食いなどの部分を埋めていきます。糊の濃さは裏打ちより濃く、緩いジェル状です。糊付けした後は低温のアイロンをかけて乾燥させます。

     

    ウ:大きく欠損した資料の繕い

     欠損部分の上に和紙を重ね、少し大きめに鉛筆で形をとり、水筆でなぞってから鉛筆部分が見えなくなるようにちぎります。本紙に糊をつけて貼り付けます(別の場所で和紙に糊をつけてから貼り付ける場合もあります)。糊の濃さは食い裂きと同じ程度です。食い裂きと同様にアイロンをかけて乾燥させます。

     

    エ:切継ぎ

     糊の濃さはマヨネーズ程度。資料は糊をつける部分だけ出し、糊がつかなくて良い部分は別の紙で覆い刷毛で糊をつけて貼り合わせます。糊の水分が少ないため紙も伸びないので自然乾燥させます。

     

    参加した職員の感想を紹介します。

  • 「今後、今日の学びを生かせる機会を作りたい」
  • 「どんな古い資料が出てきても、時間と手間をかければ保存できる自信がついた」
  • 「あっという間の3時間だった」
  • 皆様、お疲れ様でした。

     今回は、研修に初めて参加する職員も多かったので、基本となる裏打ちと繕いを習いましたが、一度ではなかなか覚えきれない技術です。経験したことのある職員も前回の研修から時間が経っているため、再度受講できたことで思い出す機会になったようです。

     普段の業務には直接は関係のない技術でも、知識として持っておくことは、資料と関わる上で大切なことであると実感しました。

     

     御指導いただきました秦博志さんには、厚く御礼申し上げます。

    公文書館 2023/11/15 in 県史活用担当,公文書担当,講座などのイベント

    2023年9月28日

    「新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第3回)を開催しました。

     令和5年9月24日(日)、米子市立図書館 多目的ホールにおいて、新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第3回)を米子市立山陰歴史館と共同開催しました。講師は、当館県史活用担当の石田敏紀が務めました。
     講演では、1888(明治21)年の私鉄・山陽鉄道(現、JR山陽線)「神戸-岡山」間が開業した翌年に鳥取県内各地で鉄道敷設運動がはじまったこと、1894(同27)年に陰陽連絡線「姫路-智頭-鳥取-米子-境」間の建設が決定されたが、日清・日露戦争によって工事は延期、中断されたこと、1906(同39)年に路線が「福知山-鳥取-米子-今市(現、出雲市)」間に変更、路線名も「山陰線」に改称され、1912(同45)年に「京都-今市」間で開通したことなど、山陰線開業までの経緯を解説しました。
     また、米子開催であることをふまえ、陰陽連絡線「境-米子-鳥取-姫路」間の建設決定後、県西部(特に日野郡)の人々が「岡山-津山-根雨-米子」間を結ぶ私鉄・中国鉄道の建設に尽力したが失敗したこと、陰陽連絡線が山陰線「福知山-今市」間に変更された後、「津山-根雨-米子」間の敷設運動を再開したことなど、明治時代の県西部の人々の鉄道建設への取り組みを詳しく紹介しました。
     講演後、参加者から「日清・日露戦争による建設の延期・中断など、開通までの詳しい経緯がわかった」「鉄道による地域発展を期待したことで地域間対立が生じたことがわかった」などの感想をいただきました。

    鉄道講演会写真
    講演の様子

    公文書館 2023/09/28 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年7月12日

    「新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第2回)を開催しました。

     令和5年7月9日(日)、鳥取県立博物館講堂において、新鳥取県を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第2回)を開催しました。講師は当館県史活用担当の石田敏紀が務めました。
     講演では、鳥取県の鉄道敷設運動の始まりから明治45(1912)年に山陰線が開通するまでの経緯について、鳥取県東部の人びとの活動を中心に解説しました。特に、明治21年の山陽鉄道「兵庫-明石」間の開業を受け、翌22年に県東・中・西部でそれぞれ兵庫県、岡山県と結ぶ私鉄建設を求める運動が始まり、その後、官設鉄道の敷設請願運動に転換するが、鉄道で県内を東西に結ぼうという意識が低かったこと、明治27年の陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の敷設決定は県民の要望を考慮したものではなく、兵士の移送、知事のいる県庁所在地を重視して行われたことなどを当時の新聞記事や鉄道会議、帝国議会での議員や政府関係者の発言を用いて紹介しました。
     また、陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の決定後も、鳥取県東部と兵庫県北部の人びとが連携して山陰線の敷設を請願したこと、明治39年に建設路線が山陰線「福知山-鳥取-今市(現、出雲市)」間に変更されると県東・中・西部でそれぞれ中国鉄道の津山まで結ぶ路線建設の請願運動が始まるなど、明治時代の鳥取県の人びとが自らの地域への鉄道敷設のために積極的に活動している姿を紹介しました。
     来場者からは「県の東西を鉄道で結ぼうとする意識が低かった理由は何か」、「山陰新幹線建設についてどのように考えるか」などの質問が出され、講座終了後も「若桜線の八鹿までの延伸を当時の人びとは可能と考えていたか」、「法勝寺電車など、大正期の県西部の私鉄建設について」などの質問をいただきました。来場者は15名でしたが、鉄道史に関心を持つ方が多かったようです。
     なお、第3回講座は、令和5年9月24日(日)午後2時から、米子市立図書館で開催します(定員60名〈要申込〉、申込先:米子市立山陰歴史館、申込受付開始:8月24日〈木〉午前9時30分)。第3回は、鳥取県西部の人びとの活動を中心に解説します。

    東部開催写真
    講演の様子

    公文書館 2023/07/12 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年7月6日

    「新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第1回)を開催しました。

     令和5年6月25日(日)、倉吉交流プラザ第1研修室において、新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第1回)を倉吉博物館と共同開催しました。講師は当館県史活用担当の石田敏紀が務め、明治時代の鳥取県中部の人びとの鉄道敷設に向けての活動を中心に解説しました。
     講演では、鳥取県中部の鉄道敷設運動は1889(明治22)年の「倉吉-津山」間を結ぶ私鉄建設運動に始まること、翌年に株価が暴落すると私鉄建設を断念し、1891年に山陰地方で最も早く官営鉄道の敷設を政府に請願したこと、陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の建設が1906年に山陰線「福知山―今市(現、出雲市)」間に変更されると、直ちに陰陽連絡線「倉吉-津山」間(のちの倉吉線)の建設に向けて動き、1912年に「倉吉-上井」間を開業させたことなど、倉吉町を中心とする中部の人びとの鉄道敷設への積極的な取り組みを解説しました。
     また、こうした活動と矛盾する「住民が反対したから山陰線は倉吉町を通らなかった」という「伝説」が生まれた理由・背景については、負け惜しみだけではなく、1911年に倉吉線・倉吉駅(のちの打吹駅)の位置を巡る倉吉町内の人びとの対立〈倉吉停車場位置問題〉、1919(大正8)年以降の「由良-倉吉-上井(現、倉吉)」間を結ぶ路線を新設し、こちらを山陰本線としようとする倉吉町の人びとの主張と、上井、下北条での反対運動〈倉吉線本線化運動〉などの地域間の対立を、後の人が山陰線建設時の出来事と誤解したのではないかとの推論を紹介しました。
     開催後のアンケートでは、「当時の倉吉の人びとも鉄道の有効性をよく理解していたということを知ることが出来て良かった」「倉吉線の開業が伯備、因美線より早かったことが驚きでした」などの回答をいただき、参加された方々には郷土の歴史に関する関心を一層高めていただいたものと思います。
     なお、第2回講座を令和5年7月9日(日)午後2時から、鳥取県立博物館講堂で開催します(定員80名、申込不要、先着順)。次回は、鳥取県東部の人びとの活動を中心に解説します。

    講演会写真
    講演の様子

    公文書館 2023/07/06 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年4月13日

    令和4年度鳥取県災害アーカイブズシンポジウム(オンライン)を開催しました。

     令和5年3月25日(土)、令和4年度鳥取県災害アーカイブズシンポジウム「過去の災害情報をどのように活用するか―データベース・アーカイブの可能性―」をオンラインにて開催しました。  
     本シンポジウムでは、まず鳥取大学工学部教授の香川敬生氏から「山陰地方で発生した近現代の地震活動と長期評価」と題する基調講演を行っていただき、その後、関連報告として奈良文化財研究所主任研究員の村田泰輔氏から「考古資料による潜在する地震ハザードの見える化と歴史地震研究」、同研究所客員研究員の西山昭仁氏から「史料データを活用した地震研究―京都での歴史地震の事例―」を、それぞれご報告いただきました。  
     香川氏の基調講演では、強震動地震学の観点より、主に戦前から2016年の鳥取県中部の地震に至る、山陰地方での地震活動が分析されるとともに、それらを勘案した、この地域での今後の地震活動の見通しが示されました。  
     また、村田氏の関連報告では、現在、奈良文化財研究所において進められている、「歴史災害痕跡データベース」の構築に関する話を軸としつつ、複雑な被災の様相を明らかにしていくためには細かなデータ収集が必要であること、その際、発掘現場での調査から得られた情報、あるいは関係する調査報告書等の丹念な読み取り・評価といった地道な作業が求められること、そしてそれらの情報を総合したデータベースを活用することで、活断層についての評価の見直しなどにもつながり得ることなどが分かりやすく説明されました。
     さらに西山氏の関連報告では、京都に被害を及ぼした3つの地震の事例が取りあげられ、歴史学的な観点からする丹念な史料の評価・分析を通じて、通説とは異なる、新たな震央の情報が浮かび上がってくるなど、文系の学問分野も防災・減災に大きな貢献をし得ることが示されました。
     今回ご講演・ご報告いただいた先生はじめ、関係する有識者の方からのご意見を踏まえながら、いよいよ本格的に鳥取県災害アーカイブズの構築に取り組んでいきたいと考えています。

    災害アーカイブズシンポジウム写真
    災害アーカイブズシンポジウムの様子(プライバシー保護のため、一部画像を加工しました)

    公文書館 2023/04/13 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年3月17日

    資料保存・修復研修会を開催しました【市町村等との連携・協力】

     3月8日(水)、県内の図書館・美術館・博物館等の職員を対象に資料保存・修復研修会を行いました。講師は南部町在住の修復士・秦博志さん(修復工房Hata Studio経営)です。秦さんは、県内外の紙資料の修復を手がけられ、資料修復の講師などもされています。会場は県立図書館大会議室で、参加者は13名でした。

    公文書館長・講師の挨拶
    左から柳楽公文書館長、秦講師


     研修の様子をご紹介します。研修では、(1)裏打ち、(2)繕い、(3)糸切れした和本の綴じ直しを行いました。
    (1)裏打ち
     秦講師に手本を見せていただき、それから各自が実習しました。糊の濃さは刷毛を持ち上げた時に1本の線になって垂れる程度で、想像より薄くて驚く参加者が多くいました。また、裏打ちする和紙は、将来的に剥がすことを考えて、資料より薄いものを用いますが、薄ければ薄いほど技術的に難しいため、公文書館が使用している中厚(3匁)のものを使いました。

    裏打ちの実習風景
    裏打ちの実習風景


    (2)繕い
     裂けてしまった資料や、欠損部分のある資料の修復方法を習いました。裂けた部分は、典具帖紙という極薄和紙をあて、上から糊を塗ります。欠損部分は、バックライトボードの上に載せ、その上に修復用の和紙を重ねて水をつけた筆でなぞり、欠損部分と同じ形になるようにちぎります。形をそろえて補修するときれいに出来上がることが分かりました。欠損部分もできるだけ同じ厚さになるように補修するのが良いとのことでした。

    繕いの実習風景
    繕いの実習風景


     (3)糸切れした和本の綴じ直し(四つ目綴じ)
     当初は、和綴じ本の作成を教えていただく予定でしたが、より実践的に、参加者が持ち寄った糸切れした和本の綴じ直しを行うことになりました。糸の長さは資料の対角線の3.5倍程度。既に4つの穴が開いているので、最初の穴と進む方向を間違えなければ、一筆書きのように穴に沿って針を進めていけば完成します。参加者の習得も早く、すぐにでも業務に生かせるように思いました。

    和本の綴じ方を説明する講師
    和本の綴じ方を説明する秦講師


     最後に参加した方の声を紹介します。
  • 「紙資料の修復に適した糊や和紙の種類などを具体的に紹介いただき、大変参考になった」
  • 「裏打ち実習を体験し、資材だけでなく不織布やハケなど作業に使用する道具の効果も実感し、とても有意義な研修会だった」
  • 「裏打ちなどの資料の修復について、座学だけではなく、実習できたことがとてもよかった」
  • 「実際に修復を体験できたことは、本格的な修復でなくとも、応急処置などでも応用できるのではないかと思った」

  •  資料修復の方法について、インターネット上でも色々と見ることはできますが、実際に自分の手を動かして、指導を受けるのとは大違いです。日常業務に生かせる大変有意義な研修になったのではないかと思います。
     ご指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。

    公文書館 2023/03/17 in 会議など,公文書担当,講座などのイベント

    2023年3月9日

    新鳥取県史を学ぶ講座『考古学研究による新しい歴史像』(第1回)「森と生きた人々-鳥取県の遺跡から―」を開催しました。

     令和5年3月4日(土)、とりぎん文化会館の第一会議室において、新鳥取県を学ぶ講座『考古学研究による新しい歴史像』(第1回)を開催しました。講師は、鳥取大学地域学部准教授の中原 計先生で、「森と生きた人々-鳥取県の遺跡から-」というテーマでご講演いただきました。参加者は43名でした(本講座は、連続講座の第1回として、昨年9月19日に開催する予定でしたが、台風のため延期となり、この度、開催することとなりました)。  
      ご講演の中では、青谷上寺地遺跡など鳥取県内の遺跡から出土した木製品の用途、使用された樹種などについてお話いただきました。高坏、椀など複雑な形状の容器にはヤマグワが、大型の桶などの直線的な材を結合させたものはスギが多く用いられるなど、樹木の特性に合わせて製作する器種が選ばれたこと、破損した木製品はすぐに廃棄されるのではなく、修繕が行われるか、あるいは再加工されて別の用途に使われることが多かったこと(例:建築材を田下駄へ加工する)など、弥生時代の人々が木製品をどのように製作、使用していたかをわかりやすく解説していただきました。  
     また、木材利用は周りの植生に合わせて、それぞれの地で独自に育まれてきたものであり、人々が森に関わっていく中で各地の文化は生み出されたものであること、また杭などの土木用材は、集落近辺に生えていた木を利用したものと考えられることから、周辺の植生を知る手がかりになることなど、興味深いお話も多く、参加された県民の方々は、考古学や鳥取県の歴史に関する関心を一層深めていただいたものと思います。  
     令和5年度も新鳥取県史を学ぶ講座の開催を予定しています。テーマ・日程等は、後日、ホームページ等でご案内します。ご期待ください。

    講座の様子の写真
    中原計先生による講演の様子

    公文書館 2023/03/09 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年2月20日

    新鳥取県史を学ぶ講座(民俗)「倉吉の鋳物師」を開催しました

     令和5年2月12日(日)、倉吉交流プラザ第1研修室(本会場)と上小鴨コミュニティセンター(サテライト会場)において、「新鳥取県史を学ぶ講座(民俗)」をオンライン形式で開催しました。  
     今回は、神奈川大学日本常民文化研究所・客員研究員の石野律子先生に「国指定重要有形民俗文化財『倉吉の鋳物師(斎江家)用具及び製品』その調査を振り返る」をテーマに、昭和55年から同56年にかけて行われた「倉吉の鋳物師」調査の様子や、倉吉の調査によって全国に鋳物の調査が広まったこと、タタラの仕組みなどについて、わかりやすく解説していただきました。  
     参加者は両会場合わせて49名で、「原料となった鉄は、地元のものか」「倉吉千歯と鋳物師の関係」などの質問をいただきました。

    民俗講座写真
    講座の様子

    公文書館 2023/02/20 in 県史活用担当,講座などのイベント

    2023年2月7日

    「占領期の鳥取を学ぶ会 令和3年度活動報告会(第2部)」をオンラインにより開催しました。

     令和4年7月17日(日)、「占領期の鳥取を学ぶ会 令和3年度活動報告会(第2部)」をオンラインで実施しました。

     小山富見男さんは『戦後の食糧危機と鳥取県&GHQ』と題し、鳥取県立公文書館所蔵の歴史的公文書『供出関係綴(食糧)』(農政課)や統計資料を調査した成果を発表されました。米の供出、気象災害(冷害と風水害など)による戦後の全国的な不作、海外からの引揚者、ヤミ取引等、戦中戦後の食糧事情についての報告でした。また、同綴りの中で発見された文書(『Letter of Commendation』(昭和22年2月15日発 第46号))は、鳥取軍政隊から県知事に宛てた英文資料で、当時の鳥取県が全国的にみても優秀な供出状況であることを称えるものでしたが、この表彰文の中で鳥取県の事を“this fair prefecture”と表記し、「…供出100%の目的に向ひかくて人口集中地方の食糧不足を救う意味に於て、『この晴朗なる鳥取県』を全国供出第一位たらしめるべく努力すべし」と称賛激励していると紹介されました。

     公文書館の担当者(杉内)からは、当時の日本海新聞の記事から県内の米穀検査員の供出四方山話(よもやまばなし)として各地域の苦労話などを披露しあった座談会の記事を紹介しました。

     最後に特別報告として、『進駐軍接収住宅のトイレ』の題目で鳥取大学理事・副学長の細井由彦さんに報告していただきました。
     鳥取市西町の米軍情報部の事務所兼住宅として接収されていた木村家に当時設置されていた浄化槽(30人槽)跡で、この度、その敷地の改修をすることになったため、鳥取市歴史博物館の横山学芸員、石井学芸員、会員の西村さんとで昨夏、掘り起こし調査を実施しました。
     掘り起こしてあらわになった浄化槽の専門的な調査は鳥取大学の細井さんに行っていただき、今回の特別報告の運びとなりました。まだ浄化槽のほとんど普及していなかったと思われる時代に「第一腐敗槽」、「第二腐敗槽」、「予備ろ過槽」、「酸化槽」、「消毒槽」からなる本格的な浄化槽が作られていたこと、またそれぞれの槽の役割等を講義されました。当時、浄化槽を作る必要性に迫られて職人が技術を習得し、その後の鳥取の下水道の発展へとつながる一助になったとも考えられるかもしれないと受講者からも意見が出ました。

     一般報告では、行政資料、統計資料、そして当時の新聞記事など、いくつもの資料を重ね合わせることで、戦後間もない頃の鳥取県の姿があらわになりました。
     また、特別報告で、現存する貴重な当時の遺構を、今回のように失われる前に調査することで、現在に至るまでの歴史の軌跡をたどることが出来ました。古い町並みにはまだまだ未発掘の発見がある可能性を感じました。  

     「占領期の鳥取を学ぶ会」では月例会で「鳥取軍政部マンスリーレポート」の翻訳の活動を続けています。ご興味のある方は是非御参加下さい。

    問い合わせ先:鳥取県立公文書館県史活用担当
          (〒680-0017鳥取市尚徳町101番地 0857-22-4620)

    公文書館 2023/02/07 in 県史活用担当,講座などのイベント,調査

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