「どんどろけ」とは方言で「雷」のこと。
バリバリバリ…。
油をしき、熱したフライパンに豆腐を入れると、威勢のよい音が調理室に響いた。
豆腐や地元産の野菜を入れた炊き込みご飯のことを鳥取県東部から中部地域にかけて「どんどろけ飯(めし)」という。
「どんどろけ」とは方言で「雷」のこと。
豆腐を炒める音が雷鳴のように聞こえることから名がついた。
昔は豆腐はごちそうであり、貴重なたんぱく源。
各村々には豆腐小屋があり、自家生産の大豆を使って、何人かで集まって豆腐を作っていたという。
野菜はそのとき採れるニンジン、ゴボウ、ネギなど旬のもの。
干しシイタケや油揚げを入れ、炊き込みご飯の味を引き立たせる。
地元産づくしの伝統料理だ。
懐かしそうに目を細めるのは、鳥取市気高町のグループ「味の昔ばなし」のメンバー4人の中の年長者、中嶋富美代さん(84)。
田植え後の「代(しろ)満(みて)」など農作業の区切りや、村の人たちが集まるときには必ず作っていたという。
大きな鉄鍋に何丁もの豆腐を入れて作るので、音はまさに雷そのもの。
現在は、村人たちが集まることも激減し、「どんどろけ飯」を作ることもなくなりつつある。
グループ「味の昔ばなし」では、この料理を伝えたいと、4人の関係する慶寿院(同市気高町高江)の行事で大勢の人が集まる時に「どんどろけ飯」を作るという。
家庭で作るときには、鶏肉やコンニャクなどを入れてもおいしい。
薄味であっさりとしていて、食が進む。
グループ代表の尾崎規恵さん(74)は、「あぶら濃くなくヘルシーご飯。
入れる野菜や調味料の具合もアレンジできるのもよいところ。
今は雷のことを“どんどろけ”と言うことも少なくなったが、豆腐の音を体感して、豆腐の入った炊き込みご飯を多くの人に食べてほしい」と勧めている。