わらの良い香りがするこも豆腐
こもにくるまれた素朴な豆腐料理。ゆであがったばかりだと、わらのいい香りが漂い、断面についたわらの筋とともに温かみが感じられる。100年以上伝わるという「こも豆腐」は、冠婚葬祭などで振る舞われる特別な郷土料理だ。
食事や衣類、家計など、さまざまな面から生活の豊かさについて考える生活改善グループのメンバー、野嶋寿枝さん(80)は「こも豆腐は子どもの頃から食べていた。昔は、田んぼのへりに大豆がいっぱい作られていて、集落の豆腐小屋もあった」、金居瑛子さん(72)は「豆腐がたくさんできるので、こういう加工をして食べていたのではないか」と話す。
ところが、昭和30年代にスーパーが登場すると、人々の生活、食事もだんだんと変化した。簡単にいろいろなものが手に入る時代になり、こも豆腐も次第に作られなくなったという。
こも豆腐を作るのに用いるわらも、最近は手に入りにくくなった。はで掛けをしたわらは、きれいに天日に干され、こも豆腐を作るのに重宝される。佐々木與美子さん(80)は「わらの香りがいい。子どもも、いいにおいと喜んでくれる」とにっこり。
こも豆腐は、砂糖やしょうゆなどを入れた調味料で味をふくませるようにして煮たり、輪切りにしてわさびしょうゆなどをつけて食べることもあるという。
豆腐の中に入れる具はニンジンとゴボウが定番だが、ほかにも卵やかんぴょう、ホウレンソウ、旬の野菜を入れて作ることもあるという。
「歴史のある味をどうやって伝えていくか。後継者がほしい」というのが、生活改善グループの3人共通の思いだ。